黒の教団壊滅事件?
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(……………どこもかしこも煩い)
レイは屋上に来ていた。雨さえも操り、自分に一切かからないようにしながら、屋上の乾いた小さなスペースに丸くなる。それでも、回りから聞こえてくる暴風やら雨やらしたから聞こえる騒音のせいで眠れたもんじゃない。
本来嵐をおさめることも出来なくはないのだが、やはり操るのが天候ともなるとなかなかに強大な力を使うため、眠すぎてだるい今、使う気にもなれないらしい。兎に角眠い。すべての音を遮断しようにも、コムリンが破壊活動を続けるお陰で床は揺れるし音どころの騒ぎではなくないっている。
「……無理矢理にでもユウと一緒に任務にいけば良かった」
今となってはなんともできないが。
エクソシスト二人もいればなんとかなるだろうと思って出てきたが、それにしても騒ぎは終息しない。先からどっかどっか崩れる音と破壊された柱やら埃やらが舞っている。
(………シメるか)
レイの姿は虚空に立ち消えた。
騒ぎのなか、麻酔を打たれていたリナリーは、ぱちっと目を覚ました。意識が未だに靄がかかったように朦朧としていて覚醒はしない。
「アレン君の声が聞こえた……帰ってきてるの……?」
レイは、どこ…?
ぼんやりと呟きながらぐるりと辺りを見渡し、リナリーはダークブーツを発動させた。アレンがあの中に閉じ込められてるんだ!と誰かが叫んでいる。
リナリーはふわりと宙に舞うと鋼鉄のごときパワーでコムリンに降り立った。ガゴォッと物凄い音をたててへこむコムリンに、容赦なく追撃を仕掛けていく。ぶっ壊せ!ぶっ壊せ!なんてヤジまで飛んでくる始末だ。
すっかりお祭り騒ぎの現場に、呆れたような、しかし怒気も露な美しい声が静かに聞こえた。
「まだやっているのか」
「ギギ…エクソ、シスト…レイ・白桜…手術シマス」
「手術だと?」
実に"眠い"と言いたげな、眠そうかつ不機嫌そうな顔をしながらも、手すりから手すりへと軽く跳躍してはくるりと宙返りしてコムリン2を翻弄する。
「綺麗……」
「羽が生えてるみてぇだ…」
すたっと軽い音をたてて、レイはエレベーターの先についている砲台の根本に着地した。
「"動くな"」
不機嫌そうなドスのきいた声。うっかり聞いてしまったコムリン以外の団員全員が動けなくなる。かつりかつりとレイのブーツの音が大きく響く。
どうやらいつもは対象のみに声が届くように風を操ったり命じたりするレイだが、眠くてそんなこと頭からすっぽ抜けているらしい。これは、とんでもなく危険だ。
(この状態で"死ね"とか言われたら…っ)
レイの声は、絶対。それは物も人も関係ない、万物全て。
"生きとし生けるものを死に誘い、死せる者すら操る能力"
消されても、おかしくはない。
嫌な緊張が辺りに満ちる。レイはそんなことを気にすること無く、やけに静かな周りを見渡して「あぁ」なんて呟いた。…どうやら本当に忘れられていたらしい。
コムリン以外の見えない言葉の呪縛が解かれる。レイは静かに命じた。
「"音刃"」
レイが腕を横に一振りすると、たちまち無数の光るサーベルのようなものが現れる。レイはリナリーの側に歩み寄りながら無情に腕を振り下ろした。途端に一斉にコムリンめがけて飛んでいく刃。
…と、そこに飛び込む人影が。
「待つんだリナリー!レイ!」
ぴたっ
コムイたちの直前で、刃は止まった。レイは苛立ちにぎりっと歯噛みする。
「……チッ。興が醒めた」
つまらん。と一言残すと、レイは腕を横に一振りする。コムイとコムリンのすれすれに迫っていた無数のサーベルは霧散した。
「コーヒーを憎んでコムリンを憎まず、だよ」
「兄さん……」
「少し反省してきて」
ドゴッ
鈍い音をたててコムイもろともコムリンは落ちていった。なんだかなぁ…なんて誰ともなしに呟かれた声が、皆の心を代弁していた。
騒ぎのあと、レイはかろうじて無事だった自室の寝台の上に倒れこんだ。
「疲れた」
外からガヤガヤ騒ぎながら片付ける声がする。「何でアタシまで!」と憤慨するジェリーの声から、沢山の「おかえり、アレン!」なんて声まで、沢山の声が。
(元気だな)
微睡みながら、レイはぼんやりとそう思う。この賑やかさが無くなったとき、恐らく教団は終わりを迎えるんだろう。今は戦争。…一体いつまで続くのやら。
その時、外から一際大きな声が聞こえてきた。
「レイー!」
「!」
「「「「おかえりなさーい!!!」」」」
「……………騒がしい」
……が、嫌いではないな
ぽつりと呟いて、レイは小さく笑った。
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