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一行は白を基調としたドレスとタキシードなどに着替えさせられた。満更でもなさそうな面々に、ルークも頬を緩める。…だが、いまいちわからないのは己の今の格好。
白いシャツは胸元まで開けるデザインでセクシーさが際立ち、オープンショルダーと、二の腕の半ばから伸びる広がった袖口が均整のとれた、しかし華奢な体躯にはよく似合っている。水色の薄布を腹に巻いて端を垂らしているが、体のラインを際立たせているにすぎない。
シャツは後ろ半分が裾のヒラヒラとしたロング丈で、前は一見普通のシャツのようだが、後ろは3層の大きめなフリル構造となっていて、くるぶしほどまである。真正面から見ればクールで洗練されたデザインだが、後ろから見ればドレスに見えないこともないシルエットだ。
(結婚式でもあげる花嫁か俺は)
「皆様一流の海賊に相応しいお姿でございます」
「本気か」
流石のルークも小さく突っ込みをいれた。心なしか顔がひきつっている気もする。
「これ、本当にツケでいいの!?」
「はい。勿論!有名なVIPのお客様ですから。ここはギャンブルの街。勝って返せばいいのですよ。勝・て・ば」
「うんうん、そうだよな」
「い…いやお前、何もわかってねぇーだろ。負けたらどーすんだよ!」
心配そうに眉尻を下げるウソップも何のその。それにしてもたっけーなー!なんて上を見上げるルフィには聞こえていない。目の前にそびえ立つのは、すべてが黄金で出来ている世界一の八ッ星ホテル、“THE REORO(ザ・レオーロ)”。
一行がホテルを見上げていると、パタパタパタとどこからか子供たちが駆けてきた。服装はボロボロで、このホテルには似つかわしいとは言いがたい、みすぼらしい格好。
「お花買ってください!」
「お、お願いします」
「VIPのお客様なんだろ!」
ルークは子供たちに視線を合わせるように膝をおった。子供にしては表情が必死だ。差し出された花と子供たちを見比べ、静かにいくらだ?と問いかける。
子供たちは、突然至近距離に現れた絶世の美人に真っ赤になって固まっていたが、5000ベリーだと答える。ウソップはあまりの高さに目を剥いた。なんだそのぼったくり値段!!バラ一本だぞ!?
「俺達はお金がないと自由になれねーんだよ!!なぁ!頼むって言ってんだろ!!」
「ん?どういうこった?」
「あらあら、あなたたち。私のお客様に何をしてるのかしら?」
バカラはゆっくりと子供たちに歩み寄った。子供たちはうわっと怯えたようにひきつった声を出して後ずさる。ここはあなたたちが来るところじゃないでしょ?さぁ、おかえりなさい、と命じる彼女の目は笑っていない。
「う…」
「お、おにいちゃん…」
「……すいません。おい、行くぞ!」
「――待て」
子供たちはびくっと肩を跳ねあげた。ルークは子供たちをじっと見据え、俺がその花を買おう、と微笑した。
「ルーク!?」
「俺の財布から出す。文句なら後で聞こう。…そうだな、うちのクルーは10人いるから、10本貰おうか」
ルークはおずおずと花を差し出す少女の頭を優しく撫でると、その隣でポカンとしている少年に視線を向ける。代金の5万ベリーを手渡すと、あっけにとられた様子で手元の金とルークを見比べる。
「きれいな花をありがとう」
流れるように立ち上がったルークは、満足そうに花に目を細めるとそう言ってクルーたちの元へと戻っていく。少年は、まさか買ってもらえるとは夢にも思っていなかったらしく、暫くぼけっと突っ立っていたが、バカラの視線に気づいて慌てて走り去っていった。
「優しいんですのね」
「いや…うちのクルーに花を贈りたい気分だっただけだ」
バカラを一瞥すると、ルークはクルーたちに花を押し付けた。どうも自分は彼女に苦手意識があるらしい。そんなことには特に気づいていないらしい面々は、ルークからもらえた!と各々胸に飾ったり髪に飾ったりと嬉しそうだが。
「さぁ、カジノへ参りましょう!」
明るく頬笑むバカラに、妙な違和感を覚えたらしいルフィは、一人首を捻っていた。
ホテルのパーティールーム。巨大なソファに腰掛け、シャンパングラスを傾けるテゾーロ。目の前ではバンドメンバーたちが楽しげに打ち上げをしている真っ最中だ。
「今夜も素晴らしい歌声だった。カリーナ」
「フフ…テゾーロ様には敵いませんわ」
カリーナと呼ばれた美女は、シャンパングラスを揺らした。琥珀色の液体がキラキラと輝きを放つ。世辞ともつかぬ賛辞に、テゾーロは満足そうに鼻を鳴らした。
「スルルルル…」
不気味な笑い声をあげながら、巨大な頭部を持つ白黒の制服を着た男――タナカさんが、床をすり抜けて現れた。テゾーロは驚くでもなくそれを一瞥する。
「テゾーロ様、麦わらの一味にバカラが接触いたしました。……フリージア・ルークも一緒です」
「ほう…そうか。ルークもいるとはな。ドフラミンゴを潰すとは、全く迷惑させられる。さて、どれほど楽しませてくれるか」
かの美しい青年は、己がずっと欲していた者。世界政府にも天竜人にも海賊にも求められる彼をこの手に抱ければ、文字通り敵などいなくなる。神をも超える存在となり、天竜人の鼻もあかせる。あぁ、どうやって陥落させてやろうか。
その時、誰かの笑い声がした。べろんべろんに酔っ払ったバンドメンバーの一人が、俺その名前知ってますよぉ、とふらふら近寄ってくる。海賊王になるとか馬鹿なこと言ってるらしいじゃねぇっすか~~と饒舌に語る男は、その場の空気が凍りついたことにも気づかない。
「お前酔いすぎ」
「そうそう」
「ヒャハハ」
周りが止めるのも構わず、男はケタケタと笑い続ける。テゾーロはそれを冷たく見下ろしながらグラスを傾けた。シャンパンはゆっくりと地面へこぼれていく。空になったグラスを床に捨て、テゾーロは悠然と男を見据えた。
「ひとつ、教えてくれないか?――なぜ、私より先に笑う?」
「はっ…え、いや…」
「この街で何が面白いのかを決めるのは、誰だ?」
後ずさる男に向かい、嫌な笑顔を浮かべて指輪を1つはずす。慌てて逃げる男にそれを放ると、金の指輪は空中で網のような形となり、男を捕縛した。無様に倒れ、赦しを請う男に、テゾーロは無慈悲に笑う。
「わかってくれたか。なら、もういい」
テゾーロが手を振り下ろすと、天井から液状の金が男の顔に降り注いだ。金は男の顔を包み込むとまるでマスクのようにぴったりと張り付いて固まり、男は息も出来ずに苦しさにのたうち回る。やがてピクリとも動かなくなった男を見て、テゾーロは手を叩いて笑い始めた。
「クックックッ…アハハハ!!見ろ!あの動き!It's a entertainments!!」
その残虐な行為も意に介さず、ケラケラと楽しそうに笑う様はまるで子供。パーティー会場にいた他のスタッフたちはあまりに酷い仲間の殺され方にあるものは口を覆い、またあるものは悲痛な面持ちで目を反らした。
「どうしましょう?麦わらの一味は」
「そうだな。ディールでハメようか」
「了解。スルルルル~~」
タナカさんはぴょんと軽くとんだかと思えば、また床をすり抜けてどこぞへと消えていく。それを笑顔で見送りながら、テゾーロはこれからのことに思いを馳せてより笑みを深くした。
「実に面白いショーになりそうだ」