ONE PIECE FILM GOLD
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おぉー!」
「すっげー!」
「流石に港もド派手だなぁ」
船を停めさせられた港は黄金に包まれた、絢爛豪華な場所であった。すでに何隻も大型の船か停泊しているが、それでもまだまだ空きのある、港だけでもけっこうな大きさだ。
「こら、遠くに行くなよ」
「ルーク!!すげーぞ!!金ぴかだ!!」
「わかったわかった」
恥ずかしいからやめてくれ…と呟くルークは片手で顔を覆って息をつく。感情をこうして行動で表すようになったことに、心を開いてくれたことを感じてクルーたちは目元を和らげた。
最初は感情を露になどしなかったのに、心を許した相手にだけは僅かに表情の変化をみせる。それがなんだか誇らしい。
ぎゃいぎゃいと騒ぐ一行に、カツリカツリとヒールを鳴らして近付く者がいた。
「ワ~ォ!Amazing!」
豊かな赤髪を揺らし、サングラスをかけた褐色の美女は、豊満な肢体を惜しげもなく晒すようなセクシーなドレスで現れた。もしや麦わらの一味ご一行様では?と唇の端を持ち上げる彼女に、ルークは興味無さそうに一瞥するとふいっとそっぽを向く。
(胡散臭い。面倒ごとに巻き込まれるのだけは御免なんだが)
はじめまして、とサングラスを外して頬笑む美女の色気も、散々クルーに迷惑をかけられ続けるこの苦労人には通用しない。そもそもそんな美女よりもルークの方が何十倍も美しい上に、麦わらの一味にも美女はいるゆえ、目がなれてしまっているんだろうが。
「私、VIP専属コンシェルジュ、バカラと申します」
「お前、俺たちのこと知ってんのか?」
「勿論でございます!政府や海軍の幹部、有名海賊の皆様方はすべてこのVIPリストに載っておりますので。ほぅら…」
つき出されたファイルの頁には、ご丁寧にも顔写真と名前、懸賞金と各々のデータが事細かに書き添えられていた。俺達も有名になったもんだ、なんて嬉しそうなウソップに、ルークは細い顎に指を当てて暫し考え込んだ。
(浮かれるのもいいが、能力その他がばれているとなれば、有事の際は戦いにくいな…)
だが、それはそれとして仲間が楽しそうならもういいか、と一人うなずく。…声にも顔にもなかなか出さないが、このルーク、心を許した仲間にはすこぶる甘いのである。
どうぞこちらへ、とバカラが手を振ると、一台のオープンカーが一行の前に停車した。白と金にカラーリングされた車体の両脇では、無数の亀が整然と一列にならんでハンドルのようなものを回している。
「これはカメ車と申しまして、ここでの主な移動手段となっております」
「すげぇ!カメが動力なのか?」
「はい。希少なマッスルガメを8匹搭載しております」
リーダー格らしきカメが扉を開けてくれる。言われるがままに乗った面々は、皆目を輝かせた。真っ赤な床はふわふわのクッション。ソファも広く、巨体なクルーもいる麦わらの一味が乗っても不自由を感じさせないほど広い。おまけに飲み物までついている。
ルフィはボンネットの上に飛び乗った。ルークは危ないぞ、ととりあえず声をかける。まぁ、絶対に聞かないと分かっているから、言ってみるだけだが。
「ニシシ!へーきだ!ルークもくるか?」
「俺はここがいい」
ぱんぱんと胡座をかいた自身の太股を叩くルフィに、呆れたように返すとぽふんぽふんとソファの弾力を楽しむ。相変わらず表情が分かりにくいが、目はキラキラと輝いていて可愛らしい。
「よーし!いくぞー!」
「はい!ではグラン・テゾーロの街へレッツゴー!」
エンジンをかけると、カメたちは凄まじい勢いでハンドルを漕ぎ始めた。
「なかなかいい乗り心地だぜ」
「はい。このタートルロイスはカメ車の中でも特に上品なジェントルタートルを搭載しております」
「じぇんとるたーとる…?」
ルークは頭のなかでぺらぺらとかつて見た書物を繰った。そういえばそんなのがいた気もする。…新世界の生物は、未だ謎も多く書物も少ない。面白い種族もいるものだ。
フランキーはそんなルークの頭をポフポフと撫でる。博識多才なこの副船長は、知識は豊富だが意外と世間知らずで天然だ。真面目でクールな印象を受けるが、長く付き合っていると感情の起伏もわかるようになるわけで。
「なんだ、ルークも見たことねぇのか」
「あぁ。…本で読んだ程度の知識しかない。なかなか興味深いな」
一生懸命漕ぐ姿が可愛らしく思えて、ルークはカメたちにふっと頬笑む。ぼっと赤くなったカメたちはより一層漕ぐ速度を早める。亀さえ落とすのかテメーは…とあきれた様子のフランキーに小首をかしげ、飲み物に手を伸ばす。ルークの無自覚っぷりにはひやひやさせられる。
爆発的な加速に驚きつつも、バカラはにこやかにアクセルを踏み続けた。
「さぁまずはダウンタウンエリアです」
一行をのせた車は中心街を走り抜けていく。絢爛豪華な店が立ち並び、着飾った人々が楽しそうに笑いながら歩いている。ダンサーたちは見事なダンスを披露し、まさに「眠らない町」といった様子だ。
「はぁ~、なんだか夢の国にいるみたいだな」
「ノーノー。ここはまだリーズナブルなエリアですよ」
この船の全長はおよそ10kmある。ホテルやショッピングモール、カジノは勿論、プール、水族館、劇場にゴルフ場まで完備されているこの巨大な船は、まさにひとつの国。世界政府にも認められた独立国家なのである。
船首には巨大なギカントタートルが搭載されており、海流や風向きに関係なく世界中どの海へも行くことができる。
「さぁ、これから高級エリアに入りますよ」
門をくぐった面々は、各々感嘆の声をあげた。見渡す限りの建物が金でできており、町の中心には大きな黄金の塔がそびえ立っている。
「町中に金が溢れてるわね」
「はい。このグラン・テゾーロのキング、テゾーロ様は黄金をこよなく愛しており、世界中から金を集め、この船にこのような夢の町を築きあげたのです」
「すげぇ金持ちってことか?」
「はい。テゾーロ様は世界が認める最強のカジノ王。一流のエンターテイナーとしてステージにも立ち、さらに一国の国王でもあります。So fantastic!」
「なぁ、あれ一個盗んだだけでスゲー金になるんじゃないか?」
「私もさっきから泥棒の血が疼いてた…」
「No good!それはいけません」
ギクッと肩を跳ねあげる二人。あちらをご覧ください、との声に視線をあげると、街路樹の上に映像電伝虫が備え付けられていることに気づいた。町中の至るところに設置してあるらしく、盗みや破壊行為をしたものは街のルールに則り、地下の牢獄に落ちる手筈となっているらしい。
「なぁ早くカジノ行こうぜ!カジノォ!」
「はい、勿論。でもその前に…」
バカラはニヤリと口の端を持ち上げた。