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すべてが黄金に包まれた船。巨大なカタツムリを模したその船を見上げ、麦わらの一味は歓声をあげた。
「おぉー!」
「ルーク!これがほんとに船なのか!?」
「あぁ、世界最大のエンタテインメントシティであり、一攫千金が狙えるカジノの町。グラン・テゾーロだ」
この船の副船長…ルークは、静かにそう答えると、ロビンに差し出されたケーキにぱくっと食いついた。うん、流石サンジ。非常に好みの甘さだ。
「どう?」
「ん…美味い」
ぺろ、と唇についたクリームを嘗めとる仕草も色っぽい。水着に大きめのパーカーを羽織るだけの無防備な格好をしているルークは、大変に目の保養となる。何より、ナミとロビンが選んだ猫耳パーカーを文句ひとつ言わず大人しく着ているのが可愛らしい。
「って、ほとんど島じゃねぇか!!」
「よーし!野郎共ォ!目標!カジノォ!」
はしゃぐ面々をぐるりと見渡し、ルークはふむ、と独りごちた。…だぼだぼの猫耳パーカーを着ているために、真剣な雰囲気が台無しなのだが、本人は気づいていないようなので、この際それはまるっとその辺に捨てておく。
グラン・テゾーロ。船自体が独自のルールで成り立っている巨大な街であると同時に、非武装地帯として世界政府に公認された独立国家となっている、政府すら手が出せない「絶対聖域」。この街では海軍は海賊に手を出さないルールになっている。
そしてその頂点にいる男こそが、ギルド・テゾーロだ。世界の通貨の20%を掌握するとされる大富豪で、世界政府すらカネの力で容易く動かし、天竜人をも懐柔する絶大な権力を持つ。
海軍も手出しできない存在で、その権力で世界の勢力図を脅かそうとしている。同時に裏世界を仕切っており、闇のブローカーであるドフラミンゴとも通じていた。
「すまないが、俺は船室にいる。上陸の時間になったら呼んでくれ」
「?ルーク?」
テゾーロは苦手だ。5年前、このグラン・テゾーロが出来、ギルド・テゾーロの名前が聞かれるようになってからうちに来ないかとの勧誘がしつこい。
目をつけられてしまってからは、年々それも度を増しており、ビブルカードが送られたりすることは勿論。裏通りを歩けば部下を名乗る男たちに一緒に来てもらえないかと囲まれることもしばしばだ。
その時、甲板にキラキラと何かが落ちてくる。デッキにいたチョッパーとウソップは顔を上げた。ルフィもキョロキョロと辺りを見渡す。
「ん?何か光ってんぞ?」
これって…金粉?
本物よこれ!とナミは目を輝かせる。あんたたち!ありったけ詰め込んじゃって~♡と命じるナミに、船室の窓からその様子を見ていたルークはついと目を細めた。水も建物も全てが金色。確かテゾーロの能力は…黄金。
(詳しい能力は知らないが、黄金を操れるならこの金粉も罠か…)
だが確証はない。金粉を浴びたくないが、この楽しそうな雰囲気に水をさしてしまうのも嫌だ。その時、ドンッという鈍い音とともに、船がぐらりと揺れた。
「俺たちはカジノで負けて金がねぇんだ!!」
「キャー!!」
「撃ってきましたー!?」
「なんなの!?うわぁ!」
デッキに出ているナミとウソップがギャーギャー騒ぐ。流石に喧嘩を売られては、副船長が出ないわけにもいかず、ルークはげんなりと外を見る。
(風で金粉を払い続ければ…いや、面倒だな…)
ルークは諦めたようにため息をつくと、大人しく甲板へと姿を現した。爆風でフードが外れ、白銀の髪が風に靡く。雪のような白い肌に長い睫毛の影が憂いげに落ちる。
一部始終を見ていたテゾーロは、ルークの姿にふっと目を細めた。
「ほぅ…これはこれは。―――面白い」
テゾーロが指をパチンと鳴らすと、青白いスポットライトが2艘の海賊船を照らし出した。
「なんだ?なんだ?」
「…俺達を見せ物にするのか。――上等だ」
言うが早いか、ルークは腕を凪ぎ払った。黄金の海水で出来た金色の水竜が、襲いかかる海賊たちを次々と飲み込んで海中へと消えていく。
「ルーク」
ロビンの声がしたかと思えば、デッキから生えた巨大な腕が海賊たちを無造作に握り、叩き潰す。
「後ろが疎かよ」
「…お前がいるのだから良いだろう」
「ルーク~♡ロビンちゅわーん♡」
「ありがとう、サンジ」
「ん」
ルークは差し出された飲み物を素直に受け取った。心なしか辺りに花が咲いているように見える。可愛い。御年21だというのを忘れてしまうくらいには可愛い。ルーク!何飲んでんだ!?と叫ぶルフィに、終わったらはんぶんこだ、と子供のようなことを呟く。
「よォーし!わかった!!お~い!なが頭~!」
ルフィは相手の海賊船のメインマストへと腕を伸ばした。反動で飛び移ると、ぐるぐる回って勢いをつけながら、サニーに何すんだ!!と叫ぶ。
なが頭呼ばわりされたロングロング海賊団の船長は、妙にショックを受けた様子だが、すぐにハッと我にかえる。髪の毛と思われた長い頭頂部はガトリング銃へと変り、容赦なく発砲した。ルークはそれを尻目に残った海賊たちをじろりと睨む。
「うちの船を汚いその足で踏み荒らした覚悟は…出来てるんだろうな?」
「ヒィッ」
ルークは帰れ、と一言命じた。サニー号にいた相手の海賊はあっという間に宙に浮き、悲鳴をあげるまもなく凄まじい早さでボロボロの船へと飛んでいく。
「帰すぞ、なが頭」
「な、ま、またなが頭と…!!俺は泣く子も黙るロングロング海賊団船長!アレキサンダー・アレックス・ケントポール・ハリス・ヘンドリクス・アワード・ルドルフ・エキセントリック…」
「きっかーん!!!!」
ルフィは撃たれた銃弾を船長目掛けて跳ね返した。ついで船に叩きつけるようにぶっ飛ばす。船長を失った海賊たちは皆顔面蒼白で逃げ惑う。
黄金の海が突然水の柱を作り出した。やがて触手のような形状の黄金が姿を表したかと思えば、次々と海賊を掴まえて天高く持ち上げる。
(何をする気だ)
拘束された海賊たちの顔が恐怖に歪む。もがき、叫び、得たいの知れぬ恐怖に顔をひきつらせる。やがてピシピシと金属が固まるような小さな音がしたかと思うと、みるみるうちに海賊たちの体は黄金の彫像と化していった。
「世界最大のエンタテインメントシティ!!グラン・テゾーロへ――ようこそ」
舞台に立つ白地に金糸のシルクハットとコートを羽織る長身の男は、そう言ってにやりと笑った。彼こそがこのグラン・テゾーロを取り仕切るギルド・テゾーロ、その人である。
「すげぇ…」
「ニッシシ!面白そうな所だ!」
圧倒的な力とパフォーマンスに魅せられ、息をすることすら忘れて魅入ってしまう。金と欲望の渦巻く街、グラン・テゾーロ。ルフィは沸き上がる興奮を隠すこともせず、実に楽しそうに二カッと笑った。