バラティエ編(連載中)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……そろそろ勘弁してくれないか」
「何!?オメー 1年間の雑用を船長がまけろとか言ったんだぞ!!そのぶん責任もって楽しませろ!!」
「…………そうか」
ここは海上レストラン バラティエのオーナーの自室。ルークは疲れたように肩を落とした。
もう何曲と歌っている。治療費に船の修理代。それが嫌ならウェイターをやれ!!と言われたのだが、ウェイターをやったらやったで客が離してくれないため、サンジたちにやめろと言われてしまったのだ。
『お兄さん綺麗だね~♡////』
『…どうも』
『新入さん?凄い美人ね~♡///』
『…………手を、離してくれないか』
『良いじゃねーかちょっと位。つれねーところも可愛いーなァ?』
『…………………』
ナンパか。相手がウェイターなのにナンパするなんて、相当飢えているのか、この店がそういう店だったのか。…そんなわけないか。
『オメーがウェイターしはじめてからよく注文が来るな。オメー目当てか』
『ルーク!!オメーまたナンパされてんのか!!』
『もう引っ込んでろ!!ホールがまわらねぇ!!』
(……やろうと何だろうと、随分と好き勝手言ってくれる…)
あまりにもしつこい客の時は、サンジが蹴り飛ばして助けてくれたが。下で歌うのは晒し者にされているようで嫌だと断れば、ゲラゲラ笑いながら俺のためにここで歌え!!と言われてしまった。
(部屋は木材と釘を持ってこさせて能力で何とかしたが…人の気持ちまで操るのは好かないしな)
文句も言わずに言われた通り黙々と作業する様は、とてもじゃないが億超えの賞金首には見えない。
「…船は直した」
「おう!!!それがどうしたぃ!!!」
「……まけてくれ」
ゼフはゲラゲラと腹を抱えて笑う。あのルークが交渉か。口下手ゆえに下手くそなのがまた可愛らしい。いつもと変わらぬ無表情だが、若干柳眉が下がり困ったように視線を彷徨わせている。
「下で騒いでるテメェの船長が割った皿と食っちまった飯の分も稼げ馬鹿たれ」
「……………………それは理不尽では」
「あ゙ぁん?仲間っつーのは一心同体。テメェの船長がやったことでもテメェが尻拭いしねぇといけねぇのは当たり前だ。聞けばお前、副船長なんかになったらしいじゃねぇか」
だったら余計に諦めろ
「………………………」
「すねても無駄だ。俺はお前の爺どもみてぇに甘くねぇぞ!」
(((どの辺を見てすねてると判断したんだろう…)))
シェフたちの心がひとつになった。黙りこむだけで表情すら変わらない。……ように見えるのだが、実は慣れると彼が今いかにげんなりした表情を浮かべているかが、手に取るようにわかる。
「…せめて、休憩くらいはほしい」
「チッ…しょーがねぇなぁ」
大きな節くれだった手が、がしがしとルークの頭を撫でる。僅かに瞠目して固まるルークなど気にもとめずに、ゼフは下で騒いでるやつらは何なんだとずかずか階段を降りていった。
(………吃驚した)
長い睫毛がぱたりと瞬く。自分のことをこうして子供扱いする人間は限られている。最近は彼らに会うこともあまり無かったので、新鮮すぎて驚きが勝っている。
「…そういえば、ナミたちは…?」
うっかり忘れていた仲間たちを思い出し、はて、と小首をかしげてみる。如何せん普段一人で行動することが多く、今回はルフィのお守りと尻拭いもあったためにまるっと忘れていたが、彼らは今何をしているのだろうか。
「…まぁ、いいか」
ナミがいるし。ウソップやゾロもコック相手に喧嘩を仕掛けるような奴じゃないし。何かあったらそのときに止めよう。………今は疲れた。
ふわりと吹き込んだ風に微かに混じる血の臭いに、不穏な気配を感じながら、ルークは疲れたように深く息をついた。