バラティエ編(連載中)
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奥の船室にヨサクを寝かせ、一行はダイニングで一息ついていた。昼間のドタバタに、ナミは何やら書き付けながらふむと鼻を鳴らす。
「これは教訓ね」
「あぁ。長い船旅にはこんな落とし穴もあるってことか」
「船の上では、限られた食材で栄養配分を考えた食事をしなきゃいけないってことか…」
ゾロとウソップも神妙な顔つきで首肯く。紅茶の入ったカップを手で弄びながら、ルークは相変わらずの無表情で、だがどこかうんざりしたような声音で呟いた。
「そろそろ俺が料理するのも飽きたぞ」
「ルーク途中からフライパンとかに料理させてんじゃねーか!」
「……面倒臭い」
出来るのに必要がなければやらない子、ルーク。何作ろうかと献立を考えて、作れと調理器具に命じて作らせる。自分でも料理は出来るし得意なのだが、いかんせん面倒臭いという感情が勝ってしまう。
「必要な能力って訳ね…」
「海のコックさんだ!!海のコックさんを探しに行こう!!」
ルフィはパンを貪りながらな?な?とルークの顔を覗き込む。ルークは良いんじゃないか?と返しながら、ニシシと笑うルフィの頭を撫でた。
(………海のコック…)
そういえばとルークは思考を巡らせた。この近くには海上レストランなるものがあった筈だ。…まだあの金髪ぐるぐる眉毛の少年と、義足のシェフは居るんだろうか。
(最後に会ったのは…もう何年前だ?)
子供の頃に数度、ガープたちに連れられて訪れたことのあるかのレストランを思いだし、ルークは懐かしそうに目を細めた。彼処はグランドラインからもお客がくる。…よくミホークも来ると言っていたような気がするが、また彼処で懐かしい顔ぶれに会えるんだろうか。
鷹の目のミホークと戦う気満々なゾロを流し見て、その実力でぶつかりに行くのは何故なのかとルークは思案する。己の実力を知るためか?それとも本気で勝ちに行く気なのか?…無謀で勝負は見えているが、助けに行くことは剣士二人の心意気を汚すことになるから出来はしない。惜しいヤツを亡くした…なんてことにならなきゃいいが。
「進路は北北東!!」
さらっと腹のなかでひどいことをぐるぐる考えているが、ルークもルークなりに大事なクルーが心配なのである。ちなみに心のなかでいくら百面相していようと、その表情筋はぴくりとも動かないわけだが。
「目指すは海上レストラン、バラティエ!!」
船は意気揚々と進んでいく。…見えてきた。バラティエだ。穏やかな波にぷかぷか浮かんでいる船は、大きな魚の形をしている。円型の丸みを帯びたフォルムに、木で出来ているらしい暖かみのある建築。
でっけー魚~!!やら、素敵じゃな~い!!なんて歓声を上げるクルーたちを尻目に、ルークは変わらない姿にホッと息をついた。…懐かしい。
(だが、やはり危機感が足りないな)
自分達は海賊。それなのに船を店のド真ん前につけたら、見つけてくださいと言っているようなものだ。…まぁ、あまり口出ししないで気長に見守ることにするか。そんな事を考えていると、ふと隣から大きな軍艦が来ていることに気がついた。…海軍だ。
「見かけない海賊旗だな」
ルークは面倒くさいことになる前にとフードを被った。顔がバレないように然り気無く後ろを向く。あまり遠くにいてはクルーたちに何かあったときに対応できない。…口に出さないだけで、ルークは結構過保護だった。
「俺は海軍大尉、鉄拳のフルボティ!!おい、船長はどいつだ!!名乗ってみろ!!」
「……大尉…フルボティ…?…知らないな」
「っ誰だ今この俺に無礼な口を利いたヤツは…!?」
俺は海軍大尉だぞ!!と声を荒らげるフルボティをちらりと一瞥して、「……興味ないな」とすげなく返す。大尉以下なんて、正直ごまんと居すぎて覚えていない。
勿論、顔を会わせたことのあるヤツは全員覚えている。覚えていないと言うことは会ったことがないんだろう。大体、普通海軍に在籍するものなら声だけで皇だとわかるものだが。それがわからないのだから、でかい口は叩いていても小物にかわりないだろう。
ルークの言う顔を会わせたことのあるヤツ、というのが、かのグランドラインで大活躍をしているような面々であることは言うまでもなく、最弱の海「東の海(イーストブルー)」の海軍大尉とは比べ物にならないくらいの戦闘力を誇っているため、小物と評してしまうのはそもそもルークの基準がずれているだがそれに突っ込むものは居ない。
目障りだ、沈めろ。なんて指示を出しているのが風にのって聞こえ、ルークの柳眉が僅かにしかめられた。…誰を沈めるだって?
「…誰が乗っているのかくらい、きちんと把握してから喧嘩を売ることだ」
鋭い殺気。フードを外し、ルークは軽く腕を薙いだ。海水が龍の形に持ち上がり、軍艦を取り囲む。
「ひっ!?何だぁ!?」
「こ、皇様!!」
一般海兵が気づいたようで止めろ!!と砲撃部隊を止めにはいるも、甲板の声が聞こえるはずもない。撃ち出された砲弾に、海兵たちは悲鳴をあげた。なんて事を…!!
「任せろ!!」
「いや、ルフィが飛び出してくのは分かってたんだけどよ。なーんで海兵が悲鳴あげんだよ。オメーらじゃん、撃ったの」
「…自分達が撃った相手が俺だと気づいたんだろう」
ところで、とても嫌な予感がするんだが。
ウソップに、ルークはしれっと答える。…え?なんて皆が固まっていると、伸びている途中でバランスを崩したルフィにより、軌道が変えられた大砲の弾は、ものの見事にバラティエを直撃する。
「……ほら、な?」
「ほらなじゃ無いでしょーーーー!!!!」
ナミがギャンギャン吠える。謝りに行かないとな…と考えながら、久しぶりに友人に会うきっかけがこれかとルークは深くため息をついた。