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ルフィは高く跳躍した。一瞬にしてテゾーロの眼前まで飛ぶと、その黄金の巨人の横っ面に思いきり技を叩き込む。
「“猿王銃(コングガン)”!!!!」
凄まじい衝撃が空気をゆらした。ぐらりと巨体が傾いだかと思えば、轟音と共に町並みを破壊しながら倒れ混む。端から見ていた町の人々は、呆然としたようにすげぇと呟いて立ち尽くした。本当にやっちまった…あのテゾーロを…。
ルフィに続くようにして、ロビンとサンジはタナカさんを。ウソップ、ブルック、チョッパーはウソップの機転でバカラを。ゾロはダイスをそれぞれ撃破していく。
「あ…あァ、そんな…」
「幹部たちが…皆やられちまったァ!!!!」
「ヒィッッ」
「に、逃げろぉお!!」
「グラン・テゾーロはもう終わりだァ!!!!」
「金なんか要らねぇ!!!!」
部下たちは一目散に逃げ出した。幹部たちでさえ勝てなかったのだから、自分達がいくら束になってかかろうと勝ち目はない。だが、巨人から地面を這って伸びてきた黄金の触手が、逃げ惑う男たちの行く手を遮り、黄金の波の壁が吹き上がった。
「おい…俺の所有物が…どこへ逃げる!?」
黄金の波は全てを飲み込んでいく。そこには敵も味方も、はたまた一般人も関係ない。テゾーロは不気味な乾いた笑い声をあげながら、人々を黄金に沈めていく。
「ハハハハハ…見ろォ…この黄金の美しさを…俺は…全てを溺れさせ…飲み込む…!!」
テゾーロの体は無数の触手に持ち上げられるようにして、高く上っていく。体が沈む!?と慌てふためく人々を視界の端に捉えながら、テゾーロはくつりと笑った。
「俺は…人を幸せにする…」
人は俺ゆえに喜び、とらわれ、苦しみ、引き裂かれ、絶望する。ボウンボウンと空中で跳ねるルフィが何やら吠えているが、それも今の自分には笑いを誘う材料にしかならない。
「いいぞ!!怒れ麦わらァ!!」
お前が守ろうとした大事なものは全て、俺の力に飲み込まれる。それがこの世界だ!!!!
「全ては!!黄金に支配される!!」
「だったら支配してみろよ!!」
“金 神の裁き(ゴオン リーラ・ディディオ)”
巨大な触手が鎌首をもたげた。ルフィに向かって凄まじい勢いで飛んでいく。それを“ゴムゴムの獅子王バズーカ(レオレックスバズーカ)”で受け止めたルフィ。だが、巨大な触手とルフィ一人では明らかに大きさでは敵わず、テゾーロは勝利を確信して壊れたように笑った。
「ハハハハハ!!!!どうだ!!俺は神になったんだ!!!!」
“ゴールドスプラッシュ”!!!!
テゾーロを中心に、液状の黄金が大量に吹き出した。それは一種の柱のように高く吹き上がり、辺り一面を黄金色に染めていく。誰もが圧倒的な力の前に、呆然と見ていることしかできない。
「ぐ、っくく…何が神だ!!お前なんかただの怪物だ!!」
ただ、ルフィと麦わらの一味だけは…そして、彼らを信じるものだけは、未だ勝利を諦めてはいなかった。
「おれは!!海賊王になる男だ!!!!」
想像を絶する力が迸った。 その衝撃波は触手を伝い、テゾーロへとぶつかっていく。
『私は…心から幸せだった…』
ステラ…!?
ドォォォンッッ
テゾーロを持ち上げていた黄金に亀裂が入り、激しく音をたてて崩れ落ちた。黄金は細かく砕けて飛散し、夜の闇にキラキラと美しく光っている。
「…すごい…」
「麦わら坊主!!!!」
「やった!!テゾーロを倒したー!!」
ルークは力尽きたように地面に落ち行くルフィを受け止めた。おかえり、と相も変わらず静かに呟くルークの姿を、ルフィは確かめるようにきつく抱く。
「…ボロボロだな」
「あァ、でも俺は!!勝ったぞ!!」
「…ん」
ぎゅうぎゅう抱きついて肩口に顔を埋めてくるルフィの頭を、ルークは優しく撫でた。これで、すべて終わりだ。
一方、吹き飛ばされたテゾーロは、ルッチとサボが対峙する海軍の軍艦に落下した。大口を開けて大の字に気絶する彼を一瞥し、サボはえらく美しく散ったな、と嘯く。
「神でも降ってきたのかと思った」
「…あいつの通り名は、怪物だ…」
ルッチは目的を果たした為に、戦闘の必要無しと判断したのか、テゾーロの拘束を部下に伝えるとくるりと踵を返す。サボも、メンバーとの合流をしなくてはとさっさと船をあとにした。
街のあちこちから軽い爆発音が響いてくる。それと皮切りに、街のメインスクリーンに、「100」という文字がでかでかと写し出された。カチッカチッという音とともに、カウントダウンが進んでいく。何だあれは…と皆が訝しげに見つめていると、カリーナが悲鳴に似た声をあげた。
「皆!!急いで逃げて!!テゾーロは、船を沈める気よ!!!!」
ナミは早く船に!!!!と声をあげる。出港の準備をしなくては。この人数を逃がせるか?と焦りにも似た気持ちで辺りを見回していると、ルークがどこか疲れた様子でため息をついた。
「周りの奴等は俺が何とかしてやる。心配しないでお前たちもサニーに乗り込め」
言うが早いか、ルークは静かに「来い」と呟いた。するとサニー号や港に停められた多数の船、海軍船などが大空を走り、街の上空へと現れた。
呆気にとられて声もない面々や、突然浮き上がったことに驚きを隠せず慌てふためく人々なんて気にもせず、ルークは容赦なく人々を船へと飛ばす。
「…おしまい」
(((((((いや容赦ねーなおい)))))))
相変わらずの無表情だが、よし、と小さくガッツポーズしているのがこの緊迫した場面に似合わず可愛らしい。麦わらの一味を振り返り、お前たちも行くぞ、と声をかける。ナミはわかった!!と返事をしながらカリーナを振り返った。
「カリーナも!!!」
「…先に行ってて。私はこの船を遠ざける」
「えっ…!?」
「副船長さんの力でも、今逃げたところで皆爆発に巻き込まれる。私が船を遠ざければ、犠牲が少なくなるはず…」
「何言って―――」
カリーナはナミを力一杯抱き締めた。いい仲間だね。そう言ったカリーナは笑っていた。これは、共闘したかつてのライバルへの、心からの言葉。本当にいい仲間だ。…幸せそうで、なにより。
「最後にあんたたちとやれて楽しかった」
「カリーナ…!?」
カリーナはぽんっとナミの肩を押す。フランキーがナミを捕まえ、ルークを一瞥する。
「ウフッよろしく」
「…わかった!!」
「カリーナ!!!!」
頼む、と頷いたフランキーに、ルークはぱたりと瞬くとぱちんと指をならした。ふわりと浮かんでいくその背中に、カリーナは眩しそうに目を細める。
「…お前らしい別れかただな」
「あら、そうかしら?…私だって最後くらいは友達のために、ね」
「…フッそういうことにしといてやる」
ルークはたんっと宙を蹴った。ふわりと軽く浮かび上がった体は、そのままサニー号へと着地する。人が乗り終わった船から、どんどん海へと戻っていく。残り時間が刻々と迫る。逃げ切った皆が心配そうに、夜明けの光のなかに佇むその巨大な船を見つめていた。
5…4…3…2…1…
カチッとディスプレイが0を表示した。途端に聞こえてくる、ヒューンという間の抜けた音と、大空を彩る色とりどりの花火。
「!?」
「どういうことだ!?」
「何で花火が…!?」
望遠鏡で船のようすをうかがったウソップは、あ!と声をあげる。船の上、大きなドームの上にいた!カリーナだ!カリーナの持っている旗には、何やら文字が書かれていて…
「え?怪盗カリーナ…参上!?」
「あいつ…!!やりやがった!!」
船ごと盗んでいきやがったんだ!!!!
「全てが黄金が狙いだったわけね…私たちはまんまと使われた」
「何だ!俺達騙されたのか!ニシシシシ!」
ルフィは晴れやかに笑った。そうかそうか騙されたのか!でも、面白かったからいいや!あいつも面白いやつだったし!
へらっと笑っていると、ドーンという爆音と共に船がぐらりと揺れた。見れば周りの軍艦が次々と此方へ砲撃し、追いかけてくる。
「うおお!!海軍がいたんだった!!」
「よーし!野郎共ォ!逃げるぞ!!」
騒がしい面々に、漸く終わったのだと実感してナミはほっと息をつく。ルークもゾロも無事に帰ってきた。カリーナには最後してやられたけど、まぁそれもいい思い出ってことで、これでおしまい。
皆のところへ行こうとしたナミは、腰に一枚の紙が挟んであるのに気がついた。何これ?いつこんなものが…?
「!?…フッ…あの女狐…」
カリーナははばさっと長い髪をほどく。夜明けの大空と同じ、薄紫の髪が風に靡いている。今頃、ナミはメッセージを読んでいる頃だろうか。
「ウシシシ!」
“女の子は知恵で生き抜かないとね ウシシ♡”
楽しかったのは本当。一晩だけとはいえ、こんなに楽しいとは思いもしなかった。まるでジェットコースターのような時間。
最後、たぶんあの副船長さんには見破られていたんだろうが、彼は何も言わず、ナミも気づいてはいなかった。作戦も、私の一人勝ち!
(また会えたら、財布でもすってやろーっと!)
最高の友人たちの顔を思い浮かべ、カリーナは心から笑った。