ONE PIECE FILM GOLD
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「お前たち…何をした!?」
「…お前がショーの最後に金粉の雨を降らせるのはわかっていた。教えてもらったんだ、カリーナにな」
「悪いわね。私が本当に組んでいたのは麦わらの一味…」
そう、テゾーロ達が今まで見ていたのは全て彼等の芝居だったのだ。黄金の牢獄におちたルフィとフランキーも、ここに来て裏切り、噴出口に落ちたルークも、全てが計算。ルーク達にとって、最初から金庫も金もどうでも良かったのだ。――この海水さえ手に入れば。
「嫁だなんだと散々言ってくれたがな、生憎と俺は今が幸せなんだ。それに俺達は…海賊だ」
ばさっと皆は着ていた衣装を脱ぎ捨てた。一瞬にして黒のスパイスーツに衣装チェンジする。ルークは好戦的な微笑みを浮かべてテゾーロを見据えた。
「欲しいものは力で奪う」
さぁ、うちの仲間を返してもらうぞ
「っ…」
成る程、確かにルークは相手の50手先を読む先見之明の持ち主らしい。いや、50どころか100手先まで読んでいるだろう。金さえあれば今まで思い通りにならないものなどなかった。だが、彼だけはこうも支配できないとは。
「テゾーロォォォォオ!!!!」
雄叫びをあげながら、ルフィを乗せたシャボンが噴水から飛び出す。海水から出た途端にぱつんと割れたシャボンに体勢を崩し、ルフィは床をぼよんぼよんと二、三跳ねて止まった。
「ルフィ、作戦成功だ」
「作戦…!?」
「あぁ、あとはあいつをぶっ飛ばすだけだ」
大の字で倒れているルフィの顔をのぞきこみ、ルークはそっと手を差し出した。テゾーロはわなわなと震えながら声を絞り出す。
「ルーク…あまり俺を怒らせない方がいいぞ」
「なんだ、怒っているのか。ここはグラン・テゾーロ…騙された方が悪いんだろう?――ふふ、世界一のカジノにふさわしいショーだと思うが」
これぞ!究極のentertainments!!!!
声を揃えた一味の面々と、ルークの心底楽しいと言わんばかりに浮かべられた微笑み。ふわりと花が咲くようなそれに、テゾーロは思わず瞠目した。こと仲間に関しては、あんな表情も見せるとは。――嗚呼、あれに愛される者達が疎ましい。
「お前は俺が!!ぶっ飛ばす!!」
「ぐっ…」
テゾーロは悔しげに歯噛みした。ゾロはバンダナを巻き直し、獲物を見つけた肉食獣の目付きになる。形勢があっという間に逆転した瞬間だ。
「どうだ!?今の気分は?希望が絶望に変わった瞬間のな…」
「―――…何が希望だ…何が絶望だ…」
脳裏によぎるのは、おぞましい記憶。幼い頃から歌うことが好きで煌びやかなショーに憧れていた。だが、ギャンブルにまみれた父親が病死したことでさらに生活は苦しくなり、荒んでしまった母親から罵声を浴びるようになる。
『そのくだらない歌をやめて!!!!』
『くだらない!!!!』
『うるさい!!テゾーロ!!』
『お金さえあれば…』
母からかけられるのはそんな言葉ばかり。やがて家を飛び出し、ヒューマンショップに売られている女性…ステラと出会った。自分の歌を褒めてくれたステラに惚れたテゾーロは、彼女を買い取り自由にすることを決意し、悪事から手を引き真面目に働くようになる。
毎日寝る間も惜しんでで働き続け、合間を見てステラの元へ足を運び、将来大きなステージで歌うという夢を語っていた。しかし、そんな慎ましやかな幸せが長く続くわけもなく、3年後、ステラは天竜人に買い取られ、抵抗したテゾーロも奴隷としてマリージョアに連れて行かれてしまう。
『私は、心から幸せだった』
『誰が、笑っていいと言ったのかぇ~?』
背中に大きく焼き付けられた奴隷の証。消すことのできない屈辱の印。15年前のフィッシャー・タイガーによる奴隷解放事件で、マリージョアから命からがら逃亡。背中の天竜人の紋章を巨大な星形の焼印で消し、ゴルゴルの身を手に入れる。
ドフラミンゴと手を組み、仲間を集め、体制を磐石なものとして、とうとう独立国家として世界政府すら味方につけた。
思えば、これほどまでに金に執着するようになったのはいつからだったか。あぁ、おぞましい。忌々しく思い出したくもないものたちが脳内にフラッシュバックする。
「…俺の前で…俺の前で…」
「テゾーロ様!?」
「俺の…前で」
俺の前で!!笑うなァァア!!!!
テゾーロは思いきり地面を殴り付けた。ピシピシっと電流が走ったかと思うと、ホテルが音をたてて崩れ始め、亀裂から液状の黄金が吹き出した。黄金は凄まじい勢いで観客席の観衆を飲み込んでいく。
「呪縛が解けたからなんだと言うのだ…解けたのならまた縛ればいい!!」
「まずい…っ、“飛べ”!」
ルークは一味の全員をふわりと飛ばした。悲鳴をあげる面々を気にもとめず、とりあえずホテルから遠くへ飛ばす。
「この街では全てが俺の意のまま!!何が面白いかは!俺が決める!!!!」
テゾーロと幹部たちは黄金の波に飲まれていった。嘘だろ…と呆然と呟いたのは誰だったか。箍が外れたテゾーロの行動は、もはや誰にも読むことはできない。
ルークたちはふわりと地面に降り立った。だが、ぐらりと地面が揺れ、黄金の巨人が姿を現した。
「さぁ…ショーの再開と行こうか!!」
怯え、立ち竦む人々に、テゾーロは楽しげに笑った。俺こそがこの世界の全て!!お前らはただ支配されるだけのゴミ!!これが、神の姿だ!!!!
「ハハハハハ!!!!」
「うるせぇな…!支配なんかされねぇって言ってんだろうがァ!!!!」
ルフィは凄まじい勢いで跳躍した。そのまま腕に武装色の覇気を纏わせて攻撃するも、上手くいかずに弾き飛ばされてしまう。
「ルフィ!…ゾロ、ここは頼む」
「おぅ!」
ルークはルフィの方へと跳躍した。ゾロはついで襲いかかってきたダイスの攻撃を剣で受け止め、弾き返す。だが、幹部たちは皆一様に黄金でできた鎧を身に纏っており、なかなかダメージが入らない。
「その鎧!?」
「するるるる~、ただの鎧じゃ無いですよ。テゾーロ様の能力によって作られたこのゴールドアーマーは」
「ゴールドアーマー!?」
「フフフ…つまり、格段にパワーUPしたってことよ!!」
「ハハハ…さぁお前たち、金が欲しいだろう。敵の首をとったやつには特別金をやろう。さぁしっかりショーを盛り上げろ!」
俺のコマとしてなァア!!!!
テゾーロの攻撃はもはや敵味方関係ない。逃げ惑いながらも果敢に立ち向かってくる部下たちに、ルークは無言で愛用の鉄扇を一閃させた。
「…邪魔だ」
途端に人形のように吹き飛ぶ体。圧倒的な戦力の違いに、テゾーロの部下たちは怯えたように足を竦ませた。
「ぐっ…いてぇ、何だこれ?力が…」
「ルフィ!」
「デヘヘヘ!!油断したなぁ~!それは海楼石製の特注トゲチェーンだ!ム・ギ・ワ・ラ~」
スパンダムの登場に、ルークはめんどくさそうに僅かに眉根を寄せた。こいつも来ていたのか。ということは、CP0…ルッチや他の海兵達も来ていると言うことで。
(軍艦の足止めにも向かわなくてはな…)
「エニエスロビーの恨み…今こそはらしてやるぜ~!」
「…………………。……………お前、誰だ!?」
「えーっ!?」
「……………はぁ」
力の抜ける会話に疲れたように息をつく。その時、ホテルで花を売っていた少女がテゾーロの部下たちに追われているのを見つけた。まったく、あっちもこっちも助けなくてはいけないとは、面倒なことになった。
「幼女趣味とは、いただけないな」
「何!?ぐぁっ!?」
ルークが風を呼ぶと、一瞬にして男たちは竜巻に巻き込まれた。その間に腰が抜けたらしい少女を片腕に抱き上げて、兄である少年のもとへ走り出す。
「…怪我はないか?」
「う、うんっ!あ、ありがとう、きれいなおにいちゃん…っ」
少女はホッとしたようすでコクコクと頷く。さて、少年と一緒に、この子達の保護者役をしていたんだろうレストランの店主のもとへ置いてこなければ。
「おにいちゃん、どこ…っ!?」
「…っ、あれか」
視線の先には、スパンダムの剣を懸命にいなしている少年の姿があった。成る程、ルフィを守っていてくれたのか。
「おれ…決めた!!もう、諦めない…!!戦うって、決めたんだ…!!おれ、やっぱり自由がいい!!!!」
「はぁ!?」
「シシッそうだな!」
「…お前の兄は立派だな」
「!うんっ」
ルークはついと辺りを見回して、レイズ・マックス率いる男たちのなかに店主の姿を見つけた。あそこに預けるしかないか。
「見ろ!!この数相手に勝てるわけねぇだろ!!いいか!この世は権力者が勝つようにできてんだよ!!ギャハハハハ!!!!」
「そいつはどうかな?」
雄叫びと共に黒服の男たちは何者かに殴り飛ばされた。…レイズ・マックスがつれてきた、自由を求めて戦うこの町の人々である。
「おい小僧!その賭け、おれも乗った!この勝負、絶対に勝てる!信じろ!俺は伝説のギャンブラー、レイズ・マックスだ!」
「あぁ!」
「さぁ!自由を勝ち取るぞ!!」
ルークは少年のもとへ飛ぶと、小脇に抱えるようにして一瞬でかっさらった。ぽかーんとしている兄妹を店主のもとに連れていき、引き渡す。
「…さっきはうちのを守ってくれてありがとう。立派な勇気だな」
「っ、お、おう!」
「大切な妹なんだろう?元凶は俺達が何とかする。お前は妹を守ってやれ」
「っあぁ!」
あとは頼む、と店主にひとつ頷くと、ルークはルフィの元へと舞い戻った。お前、邪魔だ!!!!とスパンダムの顔面を殴り飛ばしたルフィに、邪魔者は俺が排除しようと進言する。
「あァ!頼む!!」
「ん、了解」
ルフィはルークの返事に満足そうに頷くと、テゾーロへ向かって飛んでいった。それを見送って、ルークは、すっかり伸びているスパンダムの襟首を遠慮なくひっつかみ、海軍の軍艦のほうへと飛んでいくのだった。