ONE PIECE FILM GOLD
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ルークたちがたどり着いたのは天空劇場。観客たちが歓声をあげながらにやにやとこちらを見つめている。
「ルーク!!気に入ってくれたか?ロロノア・ゾロの処刑…そしてお前との結婚式にふさわしいステージだろう!」
見ろ!!という声に、ゾロにスポットライトがあてられる。黄金のオブジェと化したゾロに、皆は息を飲んだ。なんてことを…!!!!
「すばらしい眺めだろう。ここには大金庫も5000億ベリーもない。天上金はもう天竜人の船の中だ。お前たちは騙されたんだよ!」
私の忠実な僕…カリーナにな!
カリーナはかつりかつりと靴音を響かせてテゾーロへ歩み寄る。ここはグラン・テゾーロ。騙された方が敗けなのだ。
「そんな…!!ちくしょう!!」
がくりと膝をつくナミに、観客の歓声が大きくなる。そう、ルークたちはずっと監視されていたのだ。これはこのグラン・テゾーロでも人気のギャンブル。金庫にどこまで迫れるか…名の知れた海賊が来たときはいつもやっている。
「命懸けで金を目指すバカ達が最後に騙される!!これぞ!!最高のショー!!!!――ルーク」
愚かなところも可愛らしいな、とテゾーロはくつりと笑った。相手の出方を50手先まで読んでいると言われるほど聡明な彼が、こうもまんまと自分の手のひらの上で踊ってくれている。あぁ、可愛くて仕方がない。
「っ…」
ルークは悔しげに歯がみすると、高く跳躍した。風を操り、逃げるように宙を舞う。シュル、と首に巻かれていた黄金のチョーカーから無数の触手が伸びて肌を這う。
「逃げても無駄だ。お前にしては往生際が悪いぞ、ルーク」
可愛いクルーを見捨てるのか?
「っ、は…誰がいつ助けると言った?――この街は、騙された方が敗けなんだろう?」
チョーカーから伸びた触手によって後ろ手に拘束される。ルークはそのまま下から驚きの表情でこちらを見つめるクルーと高慢な笑みを浮かべたテゾーロを見渡して鼻を鳴らす。
「ほう…ラストは花嫁との鬼ごっこか。悪くない」
テゾーロは逃がすものかとばかりに黄金の触手を伸ばしてくる。それを器用にひょいひょい避ける。触手に掠められた衣服は所々破れてしまい、そこから雪のような肌が覗く。
(っ…しつこいな…―――!?)
一つの触手が鋭くルークの腕を掠めた。バランスを崩したルークは黄金の噴出口に落ちてしまう。
「ルーク!!!!」
「鬼ごっこは仕舞いだ。花嫁には似合いのドレスを着せてやろう。さて!可愛い花嫁と副船長にすら見捨てられた無様な君達がよーく盛り上げてくれたご褒美に、面白いショーを見せてやろう!!」
こちらもクライマックスだ!!とテゾーロが指を鳴らすと、ゾロの頭上に巨大なスクリーンが現れた。そこにはポンプ室に辿り着いたルフィが映し出されている。
フランキーはパイプのバルブを弄っていたが、しばらくして顔をあげた。後ろで待機していたルフィを振り返ってうなずいて見せる。
「OKだ!さぁルフィ!こいつをぶっ壊して海水を手にいれるぞ!」
「分かった!“ゴムゴムのォ~~~”!!!!」
“鐘~~”!!!!
みょーんと伸びた首がタンクに激突し、派手な音をたててそこから海水が溢れ出す。ザバァァと一気に大量の海水を浴びたルフィはへなへなとその場にへたり込む。だがそれと同時に腕に張り付いていた黄金にもヒビが入り、ばりんと音をたてて崩れていく。
「おぉ!?」
「体に染み込んだ金がとれていく!!」
「これで自由だ!!」
「やった…やったぞ!!」
《自由だ~~!!!!》
一部始終を見ていたテゾーロは、自由を喜ぶ男たちを嘲るように笑って指を鳴らした。途端にポンプ室につながる全ての出口が封鎖され、大量の水が流れこむ。
《は、はめられた!!!!》
一瞬にして男たちは大量の海水にのみこまれていく。空気を求めようにも、そんなものはもうどこにもなく、ただ苦しさにもがくことしかできない。
「ハハハハハ!!!!希望が絶望に変わる瞬間!!これこそが!!究極の!!entertainments!!」
金は力だ!!金が全てだ!!金の無い奴はなにも手に入らない!!
愛も…夢も…強さも…自由も…
「そして、希望もな…」
ルフィは苦しさにもがきながらも、最後の力を振り絞るようにしてガンガンと思い扉を殴り付ける。だが、やがてその力もなくなり、ゴポゴポと空気を吐き出しながら下に沈んでいく。それに気づいて手を伸ばすフランキーも意識が遠退くのを感じていた。
(くそっここまで来たってのに…!!!!)
沈み行く男たち。なすすべもなく意識を奪われていく姿に、テゾーロは実に愉快そうに笑った。観客も腹を抱えて笑っている。―――実に狂った空間。
その時、美しい水色の魚の尾ヒレのような物が画面を横切ったかとおもうと、ぶつっと映像が途切れた。怪訝な顔をしつつもテゾーロは気にしない様子で笑っている。
「許せねぇ…」
サンジはぐっと拳を握りしめた。このクソ野郎が!!!!と怒りのままに叫んで飛び出していく。
「さぁ、フィナーレと行こうか!!」
テゾーロは大きく両手を開いた。途端に地面から黄金の触手が無数に伸びてきて攻撃を仕掛けてくる。何本かを蹴り飛ばすが、避けきれなかった触手が勢いよく腹に突き刺さる。
「ぐっ…!がはっ!」
触手は麦わらの一味の皆を絡めとり、高く持ち上げた。徐々にピキピキと黄金が体を包んでいく。##NAME1##の目の前で殺してやるつもりだったが、それはまぁいい。花嫁の神聖な衣装が小賢しい海賊の血に染まるのはよろしくない。
なにも焦らなくてもいい。後で目の前にこいつらの首を並べてやればいいだけの話なのだから。
「ハハハハハ!!いい姿だな!!さぁ、特等席で見るがいい!!!!」
ロロノア・ゾロの首が飛ぶ様を!!!!
「さあ皆様!死に行くものたちに盛大な拍手を!」
「くっ…」
「“ゴールド・スプラッシュ”!!」
噴水から大量の黄金が吹き出した。花火が鳴り響き、テゾーロの狂ったような笑い声が辺りに響き渡る。
「さらばだ!麦わらの一味!これで、俺の勝ちだ!It's a entertainments!!!!」
巨大な斧がゾロの左右に現れ、勢いよくその首に向かって振りかぶられる。誰もがゾロの死を確信したその時、ガコンッと大きな音とともに町中の照明が落ちた。
「ん?ん?」
「これは!?」
「なんだ!?どういうことだ!!」
慌てふためくテゾーロの部下たちと、苛立ったように声を荒らげるテゾーロに、ナミはふふっと笑みをこぼした。あぁ、引っ掛かったのは一体どっちなんだか。
ゴゴゴゴ…と低い音がだんだんと迫ってくる。やがて噴水自体を吹き飛ばす勢いで噴き出してきたのは――海水。
大量の海水を浴びたタナカさんはへなへなと力なく倒れ伏す。
先ほどの映像に一瞬映った美しい尾ひれの正体は、セイレーンとしての本性…所謂人魚の姿をとったルークであった。噴水へと続くパイプからこのポンプ室に潜り込んだのだ。ルークは惨状に舌打ちすると、唇に指を二本当ててふぅっと息を吐き出す。
「ルフィ!!フランキー!!」
大きななシャボン玉のような物が各々男たちを飲み込む。フランキーと男たちは間一髪無事だったようで、突然の呼吸ができる空間にゲホゲホ咳き込みながらも落ち着きを取り戻している。
「ルフィ…!起きろ!」
ルークはルフィのシャボンに上半身を突っこみ、ぺちぺちと頬を軽く叩く。それでも気を失ったままのルフィに、深く息を吸い込むと唇を重ねた。呼気を吹き込んでやると、漸く呼吸が戻ったらしく海水を吐き出しながらゲホゲホ咳き込んで起き上がる。
「っルーク!!!!」
「はぁ…心配をかけるな、馬鹿…。フランキーも、間に合って良かった」
ルークはフランキーたちの方を確認し、無事な様子にホッと息をついた。ついで船長が世話になったな、と軽く礼をとる。男たちは想像していた何十倍も美しい人魚…セイレーンの姿に思わず生唾をのみこんだ。これが、かの有名な「皇」ことフリージア・ルークか。
「時間がない。早くここを出るぞ」
「おう!」
「わかった!」
「行くぞ」
言うが早いか、ルークは腕を一振りした。途端に水流が巻き起こり、男たちのシャボン玉はどんどん押し流されていく。ルークは素早くシャボンの間をすり抜け、出口を目指す。
ザパァッッ
勢いよく吹き出した水と共にルークも外へと躍り出る。それと同時に下半身を素早く人間の足へと戻し、くるりと宙返りして軽々着地する。
「…無事か?お前たち」
「まぁ、予定通りよ」
「そうか、ならいい」
ルークは安心した様子でふっと淡く微笑んだ。すっかりいつものルークの様子に、テゾーロは目を剥いた。まさか、先程裏切ったのもすべて演技だというのか。
「さて…」
ルークはゆっくりとテゾーロたちを見据えた。濡れた髪をかきあげ、静かな闘志を燃やす澄んだ瞳を爛々と光らせる。
「反撃開始だ」