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カツリカツリと闇の向こうから靴音が高く響いてくる。ロングコートにふわふわした襟飾りを身に付けた長身の男は、とある「オブジェ」の前で立ち止まった。
「感謝するよ、ロロノア・ゾロ」
君の公開処刑のチケットと、私とルークの結婚式のチケットは、過去最高の売り上げを記録した。ゾロはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべるテゾーロに、フッと不敵に笑った。
「悪くはねぇな」
「ハハハハ!強がりは大歓迎だ。処刑が盛り上がる!」
あいつらに金は用意できない…!仲間をまだ信じているのか?
何を馬鹿げたことをとテゾーロは腹のなかでほくそ笑んだ。今にこの男は処刑され、かの美しい青年は私のものとなる。嗚呼、本当にこの世は手に入らないものなんてない。
「他に何を信じるってんだ」
ゾロの言葉に一瞬息を詰めたテゾーロは、それを誤魔化すようにフッと笑みをこぼす。
「実に楽しみだ。その希望が絶望に変わる瞬間がな」
高笑いをしながら暗闇に消えていくテゾーロを、ゾロは射殺すような目でじっと見つめていた。
一方、金庫を目指しているルークたちはというと。
「聞いたぞえ~~!!」
「カ、カマエル聖!!」
「いったいどういう事かえ~~!!ワシの金を狙って賊が入ったというのは本当かえ~~!!」
「何をやっているアマス!!」
「これだから下々民は!!」
(………………ノリノリだな)
天竜人に扮装して、堂々と金庫への道を突破しようとしていた。ウソップはカマエル聖に。ナミとカリーナ、そして何故かブルックまでもが夫人の姿に。チョッパーは馬代わりのパンダに、そしてロビンとサンジもボディーガードと兵士に化けていた。
踊り子に化けさせられたルークは、もうどうにでもなれとばかりに嘆息する。唯一の救いはこの衣装が男物であることくらいか。…まぁ、それであっても露出の多さはあまり変わらないのだが。
「す!すいません!」
「金庫の警備は強化しましたのでご安心を…!」
「だめぞえ~~!!」
「えっ!?」
「お前たちは信用できないぞえ~~!!今すぐ金庫から全員離れるぞえ~~!!」
(……役者揃いだな)
上手い上手いとルークは心のなかで拍手した。顔は相変わらず無表情だが。カマエル聖の謎に顔をブルブル振る癖も、高慢すぎて意味もなく腹立たしさが募るその雰囲気も、しっかりと表現できている。
えー!そんな!?と目を剥く警備の者たちに、口答えするとは賊の仲間かとナミとカリーナも追い討ちをかけていく。すっかりたじたじな警備員たちに、天竜人に逆らう気か、とサンジやロビンも止めをさす。
どうぞと道を開けられ、金庫へと続く廊下へ入るとすぐに扉を閉め、邪魔な被り物を脱ぎ捨てて皆は走り出した。ウソップは前を走るルークの傍へ駆け寄ると、どうだ俺様の演技力は!と褒めて褒めてと言わんばかりに目を輝かせた。
「どうだ!?似てたか!?」
「あぁ。…思わず蹴り飛ばしたくなる位に意味もなくムカつくところまでそっくりだった」
「いや怖ェーーよ!!!!」
相変わらずの無表情でパキィと指をならすルークに、ウソップは思わずつっこんだ。ルークが天竜人嫌いなのは知っているが、普段クールで感情の起伏が穏やかな彼がここまで嫌悪するとは。それはそれとして、とそんなことは思考の彼方へ投げ捨て、ウソップは表情を引き締める。
「こんなことしちまって…!!バレたら大事だぞ!?」
「そうだな。……だが、ゾロを助けるためには仕方がない」
安心しろ。――お前たちは、俺が必ず守る。
ルークはふわりと微笑を浮かべた。心から信頼しきった相手にしか見せない表情に、一味の皆は笑って頷き、カリーナはぽかんと口を開けて見惚れる。
「今、わ、笑った!?」
「…俺だって笑うときくらいある」
「あー、うちの副船長表情なかなか変わんないから。でも意外と分かりやすいのよ?」
(どこが!!??)
確かに、無口無表情で感情が分かりにくいと思っていたのだが、一味の皆は平然とルークの感情を察していたし、長くつきあえば自然とわかるようになってくるのか。
それとも、信頼し心を開いた相手にのみ、感情を露にするのだろうか。
(なにそれ、ずるい…!)
自分は海賊専門の泥棒だ。しかも麦わらの一味にいるのはかつてのライバルであったナミ。彼女が持っていて、私が持っていないなんて、そんなの…そんなのずるい。それがこの青年の感情であったとしても――必ず盗み出してやる。
(女狐の実力、見せてあげるんだから!覚悟しなさいよ!)
狙ったからには何を出し抜いてでも手に入れて見せる。そんなカリーナの決意は露知らず。ルークはこれからの動きを確認し、ルフィとフランキーを思って息をついていた。
ルフィとフランキーたちは、黄金の牢獄に監禁されていた他の男たちと共にダクトの中を突き進んでいた。ゴールデンバットを殴り飛ばし、どんどん先へと進んでいく。
「うぉ!?なんだ!?」
ヒュンヒュンと音のする方を見ると、巨大な換気ファンが回り続けていた。マックスは、ここを降りた先がポンプ室だと言って眉根を寄せる。あの換気ファンは海楼石で出来ており、覇気も武器も能力も効かない。
「諦めろ…」
「いやだ!!俺が止める!!!!」
「よせ!!バカ野郎が!!」
ルフィは換気ファンに飛び込んだ。無情にも弾かれ、壁に突っこみ、それでも果敢に飛び込み続ける。見かねたフランキーが鎖でその体をからめとって引き戻しても、ルフィは決して諦めない。
仲間を、そして自由を。
「俺は!!」
「分かってる。このファンは俺が止める!!!!」
「!?」
「負け犬に成り下がった俺だが、もう一度だけ賭けたくなった。お前によ…!」
マックスはそう言ってファンを見据えた。これはギャンブルと一緒だ。ファンはカードだと思えばいい。レイズ・マックスの名に懸けて、必ず見切ってやる。
マックスはファンに飛び込んだ。その小さな体は羽にぶち当たり、吹き飛ばされる。やはりダメかと誰もが諦めかけたその時、マックスは、諦めねぇ!!!!と何度も繰り返していたルフィを思い出した。
ここで諦めたら男が廃る!
マックスは、がっと羽に爪を立てた。羽と壁の間に足を踏ん張り、必死にファンを止めようと頑張る。それを見ていた周りの男たちも、マックスに倣ってファンに飛び込み始めた。
「お前ら!!!!」
「ウォォォオ!!!!」
「俺たちの借金のせいで上で家族が必死に働いてる!!!!」
「もう虐げられるのはいやだ!!!!」
「俺たちは…!自由になりてぇんだァ!!!!」
「…すげぇ」
フランキーは呆然と呟いた。ルフィも言葉をなくしている。これほどまでに、本気になった人間の力は凄まじいものなのか。ぎぎ、と鈍い音をたてて止まるファン。……本当に止めてしまった。
「麦わらボウズ!!!!テゾーロを…倒してくれ!!!!」
「あぁ!!分かった!!」
止まったファンをすり抜け、男たちはさらに奥へと進んでいく。降りた先は小さな部屋となっており、水の通るパイプなどが無数に張り巡らされている。ポンプ室だ。
「やったぞ!」
「やった…!!」
ルフィたちがポンプ室に辿り着いたのと同じ頃、##NAME1##たちも巨大な金庫の扉にたどり着いていた。黄金でできた重厚感のある扉には星のマークが描かれ、剥き出しの複雑な仕掛けが一種のデザインのように見える。
「後はこの鍵で開ければ、私たちの勝ちよ」
カリーナが鍵をあける。ゴゴゴ…と音をたててゆっくりと扉が開いていく。ぱぁっと光が差し込み、暗い廊下に光が満ちる。
その時、一つの大きな花火が夜空を彩った。
「It's a showtime!!!!」
テゾーロの声を皮切りに、無数の花火が次々と打ち上げられる。呆然と立ち尽くす一行に、テゾーロはにやりと嫌な笑みを浮かべた。