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夜のとばりが辺りを包み込み、ネオンの光をより美しく際立たせる。相も変わらず活気づいた町のなかで、ルフィは吠えた。
「腹へったーっ!うぅ…」
「そんなことよりゾロを助けるほうが先だろ!」
「う~~!あったりめーだっ!じゃあまずメシだ!」
「いや何でだよ!!」
ルフィに律儀に突っ込みを入れるウソップ。でも腹ごしらえは大事だ、とチョッパーもハラを鳴らす。ルークはくす、と小さく笑うと夕食にしよう、と皆を促した。今はまず頭を冷やすことが先決だろう。
肉の臭いがする!と走っていく面々を追いかけようと歩き出したとき、帽子を目深に被り、サングラスをかけた女性がぶつかってきた。財布がすられたことに、瞬時に気づいてすり返す。
「(あれはさっきナミの首にナイフをあててた女だな…)……失礼」
「いえ、ごめんなさい」
ついでにとばかりに女の財布もすってみる。相手は気づいていない様子で後ろにいたナミにもぶつかっていった。
「あら、ごめんなさい」
「ちょっと待って」
パシッと女性の腕をつかむ。にやりと笑う女は、何処か懐かしそうに目を細めてナミを振り返った。
「あら、腕は落ちてないみたいね、泥棒猫」
「あんたこそ、腕が落ちたんじゃない?女狐。…あんた、うちの副船長に財布すられてるわよ」
「え!?」
「…すられたからお返しにすり返しただけだ」
ルークはぽいっと財布を放る。やっぱりあんただったのね、と笑うナミに、カリーナはウシシと歯を見せて笑った。サングラスをとったことで、漸くカリーナがテゾーロの下にいた女だと気がついたらしい面々は身を固くする。
「お前ら知り合いなのか?」
「ええ、そうよ。ナミとは腐れ縁の泥棒仲間って感じ。ねっ!」
「違うわよ。東の海で泥棒やってた頃、よくお宝の取合いしてただけよ」
「あんたがめつかったからね~~ウシシ…」
「あんたのほうがよっぽどガメツイでしょ!」
何よこの泥棒猫!この強欲女狐!とバチバチ火花を散らし始める二人に、ちら、とルフィたちの様子を見たルークはため息をついた。ぱんっと手を叩いて喧嘩を中断させる。まずは食事だ。船長が倒れる。
「それ、あとにしてくれ。ルフィが倒れる」
一行は「WILD COW」というステーキ屋に入った。あぐあぐと肉を頬張るルフィの隣で、ルークはカリーナの話に耳を傾ける。
「カジノでは悪かったわね。でもテゾーロの手下として潜り込んでるから仕方なかったの」
「…いい。気にするな」
「あんたまさかテゾーロ・マネーを狙ってるの?」
この街には、世界で流通しているベリーの20パーセントが眠ると言われている。それが通称テゾーロ・マネー。それを盗み出すのは泥棒にとって最高の栄誉だと言われている。名のある怪盗や泥棒が幾度となく挑んできたが、今まで成功したものはただの一人もいない。
「テゾーロに近づいて、漸くスペアを作れたわ」
「鍵?」
「タワーの天辺にある巨大金庫のカギよ」
「じゃあ、ほんとに…」
「えぇ、巨大金庫に眠る5000億ベリーを狙う!」
皆は驚きに目を瞠った。5000億!?小さな国なら買うことだってできる金額だ。テゾーロはその一部を天竜人に献金している。所謂天上金だ。
「金の力で天竜人を自由に動かしてるってことか」
「だから海軍も世界政府もテゾーロには目をつぶってるのね」
「しかも、テゾーロ・マネーは海賊たちにも流れている。裏世界を金で支配する黄金帝。それが奴の本当の姿よ。ねぇ?私と組まない?私と組めばあなたたちの仲間も金も取り戻せるわ」
##NAME1##は無言でワイングラスを傾けた。この娘、ナミとよく似ている。面倒なことをせず暴れて奪えばいい、と眉根を寄せるフランキーに、見たでしょ?とカリーナも言い返す。
「私たちの体にはテゾーロの力が込められた金が染み込んでいるのよ。その気になればいつでも固めることができる。特に、そこの副船長さん。なーんか妙に気に入られてるみたいだし、下手な真似したらいつでも拉致監禁されてベッドの上よ。だから、騙して奪い取る!この街のルールで勝つしかない」
「……仕方ないな」
「お、おいルーク。ほんとに信用していいのか?」
「今はこれしか方法がないだろう。ナミ、作戦はお前とカリーナに任せる。好きにやれ」
「!わかったわ!」
これでいいか?とルークは小首をかしげる。もぐもぐとリスのようにほほを膨らませて肉を頬張っていたルフィは、カリーナに視線を移した。
「ルークとゾロを救えんのか?」
「よーし、のった!」
「そうこなくっちゃ!ウシシシシ」
「ニヒヒヒヒ」
しかたねぇな、と皆も腹を決めたようで、頼りがいのある顔を見せる。狙いは5000億ベリー。誰も手にしたことのないテゾーロ・マネーを奪う。これは命がけのギャンブルだ。
「ただし!取り分はこっち7であんたが3で」
「はぁ!?冗談じゃないわよ!カギは私が用意したのよ!」
「こっちは仲間の数が多いでしょうが!」
「私がいなきゃなんにもできないくせに!」
「なんですって~!」
「………五月蠅い」
ルークはうんざりしたようにため息をつくと、ルフィの口の回りをぬぐう。まったく、いつまでたっても子供みたいだ。その時、ガシャンと皿の割れる音が響いた。
見れば、ホテルの前で花を売っていた兄妹がいる。怯える妹を必死に守りながら、申し訳ありませんと頭を下げる少年。テゾーロの手下を名告る男たちは、落ちたステーキを踏みつけながら借金2万ベリー追加だ!と声高に叫んだ。
「そ、そんな…」
「あいつら、さっきの…」
「借金を背負わされた家族のために働かされているのよ。一生、テゾーロの奴隷としてね」
ルークはおろおろとしているウソップの手を引いて止める。しばらく様子を見よう、と言う言葉に、ウソップも大人しくなる。手下の男たちは、少年を殴ろうと拳を高く振り上げた。しかし、店主と見られる大男に軽々と受け止められ、間に割ってはいられる。
「この子達が何か?」
「おい!元軍人!お前の店はまともに教育もできねぇのか?」
「どうか、お許しを」
店主は床に膝をつき、地に額を擦り付けるようにして詫びた。その頭を革靴で踏みつけ、そんなんだから家族を殺されるのだと蔑み嗤う。やがてそれにも飽きたのか、罵詈雑言を放つ男たちは何処かへと消えていった。
「おい、大事ないか?」
「は、はい。申し訳ありませんお客様、見苦しいところを…」
「貴方が謝ることじゃない。――あれはどう考えても向こうの態度が悪い」
ルークはチョッパーを呼びつけ、二人で怪我の度合いを確認する。幸い、かすり傷と打撲位か。ルフィは呆然とそれを見ている店員たちを見て眉根を寄せた。
「おい!何で戦わねぇんだ!」
「戦ったって、意味ないだろ」
「何で!?」
「お金がなけりゃ自由になれねぇんだ!」
少年はそう言って飛び出していく。まだ10にもならないような年若い少年。子供にこんなことを言わせてしまう、これが、この街の現実なのだ。