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ばっと声のする方を見上げると、テゾーロがにこにこと笑いながら階段を降りてきていた。楽しんでもらえてますか?と笑うテゾーロに、ルークは思わず身を固くした。
「いやいや、はじめまして。私はこの船のオーナー、ギルド・テゾーロと申します」
「あ!お前か!カジノ王ってのは!俺は海賊王になる男だ!」
「何張り合ってんだよ!」
「ハハハ…未来の海賊王にお越しいただけるとは。実に光栄だ。――ルーク様も」
ルークはびくりと肩を戦かせた。ついと目を細め、まるで威嚇する猫のように殺気を体に纏わせる。あのフリージア・ルークとお会いできるなんてと無遠慮に近づこうとするテゾーロに、ルークは腰の短刀に手をかけた。
「これは失礼。ずっと貴方にお会いしたかったんですよ。そうだ!どうです、是非私とひと勝負しませんか?」
「勝負?」
「折角ですからこういうルールはどうです?あなたが買ったら特別に、掛け金の10倍をお返ししましょう。勿論負けても10倍払えとは言いませんよ。私も腐るほど金を持ってましてね。このくらいじゃないと興奮しないのですよ」
さぁ、どうします?
「いいぞ!俺は負けねぇ!」
にかっと笑うテゾーロに、ルフィもふふんと鼻を鳴らす。ナミはその姿を見て腹をくくった。ルークの様子が何処かおかしかったのも気になるが、今は流れが来てる。ルフィの運を信じる…!
「よし!決めた!全部半!!」
ルフィの選択に、全員がごくりと生唾を飲み込む。バカラはしゅるりと手袋を外した。
「流石はルフィ様、見事なマックスベットでございます」
「っ!!」
ルークははっと我に返ると、短刀を抜いて飛び出した。一瞬の出来事に誰も対応などできない。
「このバカラ、感動いたしました。…きゃあ!?」
「"うちの船長に指一本触れるな"」
瞬時に間合いに入ると、ルフィの肩に手を触れようとしたバカラの手と首に刃を向ける。隙を見て此方に手を伸ばしてくるバカラから跳躍して距離をとると、武器を構え直した。
「ルーク様、他のお客様のご迷惑になりますので、お静かに」
「――自分の船長に妙な真似されたら止める。副船長として当たり前の事だろう」
「今は勝負の時。…男と男のサシの勝負。ご理解ください」
「……チッ」
ルークは珍しく苛立ちも露に舌打ちをして、短刀を納める。バカラはテゾーロに寄り添うように近づくと、然り気無くルフィの肩にそっと手を触れた。
ダイスが壺を叩き割り、皆は息を飲む。結果はどうだ?勝ったのか?……それとも。
「おい、どうなった」
結果は2.6の丁。あれ?負けちまった…と呆然と呟くルフィに、ルークは貴様…!とバカラを睨み付けた。
「ハハハ!いや~ご苦労ご苦労。なかなか愉快なショーだったよ、バカラ」
「ショー!?どういうこと!」
「貴女、能力者ね」
「「え!?」」
ロビンの言葉にナミとウソップはぎょっとした。バカラはニヤリと笑みを深くした。まったく、ルークに見破られたときはどうしようかと思ったが…こんなにもうまくいくとは。
「えぇ、そう。私はラキラキの実の能力者。触れた人間の運気を吸い取ることが出来ますの」
「運気を?」
「じゃあルフィの…」
ルフィはゆっくりと立ち上がった。ん?俺今運ねぇのか?と不思議そうな顔をする。ルークがひどく心配そうな顔でこちらを見ている。でも、本当に今普通な気が――――
ぎゅるるるるるる~~~~
「ハ、ハ…腹が痛ぇ!」
「えっ!?」
「嘘だろ!?」
「ルフィが腹痛だと!?」
これには麦わらの一味全員が目を剥いた。ルークでさえ、驚いた表情で固まっている。呻きながらよろよろと数歩よろめいたルフィの足元には、何故かバナナの皮が。派手に吹っ飛ぶルフィを呆然と見つめながら、皆はあんぐりと口を開けた。
「な、なんて能力だ…ラキラキの実」
「こんなの、インチキじゃない!」
ナミの悲痛な叫びに、テゾーロたちはより笑みを深くした。
「スルルルル…!インチキ?」
「お前たちにひとつ教えてやろう」
「フフ…この街の絶対ルールを」
「ここでは、騙された人間は――敗者なのだよ」
さて、貸した3億と2000万ベリー。返してもらおうか。
あんたらなんかに払うわけないでしょ!!と啖呵を切るナミに、では働いて返してもらうしかないとテゾーロは歌うように告げる。ここで働いている人間たちは皆、カジノで負けて借金まみれの奴隷だ。断ると言うのなら、強制的に回収するしかないが。
「おもしれぇ」
「やれるもんならやってみやがれ」
ゾロとサンジは爛々と目を光らせる。ブルックも刀に手をかけており、何時でも戦闘に入れる体勢となっている。
「いた~いっ足くじいちゃった~」
「え!?大丈夫?バカラちゃ~~ん♡」
これ見よがしに足をくじいたふりをするバカラにまんまと引っ掛かったサンジは、あえなく運気を吸い取られてしまう。タバコの火が服に燃え移り、バナナの皮で滑って吹っ飛ぶサンジに、ルークはあきれたように息をついた。アホかお前。
(3億2000万、強制的に回収ということは、俺達の首で、ということだろう。この場合、一番狙われやすいのは…)
懸賞金3億2000万ベリーの、ロロノア・ゾロ
「俺がやる。喧嘩は親分を倒すのが一番早ぇ」
「ほう、面白いことを言う。私に勝つつもりか?――?この街で」
「っやめろ!!ゾロ!!狙いはお前だ!!」
ゾロはルークの制止の声など聞こえてはいない。凄まじいスピードで剣を抜くと、テゾーロに向かって斬りかかる。その時、ゾロは体に異変を感じた。足が黄金に包まれていく。相討ち覚悟で懐に飛び込めば、柱の装飾の龍が襲いかかってきた。
「!!」
「ゾロ!!」
「動くな」
ルークは静かに怒りをひらめかせた。一味の皆はその気迫に圧されて動けなくなる。黄金を浴びてしまったゾロは悔しげに奥歯を噛み締めた。
「流石、勘がいいな。益々欲しくなる。動けば全員黄金の彫像になっていた」
「奴の能力は、黄金だ」
「ほう!そこまで知っていてくれるとは!光栄だよ、ハハハハハ!!」
テゾーロは実に楽しそうに嗤った。彼はゴルゴルの実の能力者。一度触れた金ならば自在に操ることができる。――そう、この街に入るとき浴びた金粉。あれが体に染み込んでしまった時点で、もう自分達はテゾーロの能力下にあるのだ。
「さて、では貸した金を返してもらおうか」
懸賞金3億2000万の首でな
「っあんた、初めから…!」
「ハハハハハハ!!誰も私には逆らえない!――ルーク、こっちへ来い。可愛いクルーたちが彫像になるところなんて見たくないだろう?」
「っ…」
ルークは瞬時に思考を巡らせた。言霊の力でも、一時的に黄金を取り除くことはできよう。だがこの街ではテゾーロの能力が込められた金粉が充満している。逃げ切るのは難しいだろう。……海水さえあれば、この金を洗い流し、町中の金への能力支配を解くことができる。
(まずは、機会を待たなくては)
ルークは毅然とテゾーロの元へ歩み寄る。ルフィの行くな!!と叫ぶ声がする。それを黙って一瞥すると、ルークは大丈夫だ、とだけ呟いた。傍につくなりテゾーロは力任せにルークの細い顎を持ち上げる。
「あぁ、噂に違わぬ絶世の美貌だな。おまけに頭も切れて戦闘能力も頗る高い…最高の愛玩品だ」
「っ…貴様程度に、乗りこなせるとは思えないが?っんぐ、」
「ハハハ!とんだじゃじゃ馬だな。だがそれもいい。フフ…生意気が言えないように口を塞いでやろうか。黄金のギャグボールも似合いそうだな」
(悪趣味…)
両手首を片手で拘束され、口のなかに遠慮なく指を突っ込まれる。口ぶりからして、1回自分を陵辱する程度では気がすまないんだろう。愛玩人形として傍に置きたい、といったところか。
「俺がお前の人形になれば、ゾロを返してくれるのか」
「人形?ハハハハハハ!何をいっているんだ。私はそんな非道な真似はしない。お前は私の正妻として迎え入れよう。――だが、それはこの街で起こした騒ぎその他諸々の代金だ」
貸した金は、彼の首で支払ってもらうことに変わりはない。
「…………」
「そんな、ルーク!」
「動かないで。――言われた通りにして」
カリーナは抜き身の短剣をナミの首にあてがった。横目でそれを確認し、ルークは諦めたように目を伏せた。がぶっと指を噛み、驚いて手を引っ込めるテゾーロを睨み付けながら口許をぬぐう。
「金は用意する。――だから、少し待ってくれ」
「ほぅ?いいだろう。明日の夜12時まで待とう。間に合わなければ、こいつを客の前で公開処刑する。嗚呼、そうだ。こいつの血でバージンロードを彩ってもいいな。よし、処刑と同時に結婚式もあげることにしよう」
テゾーロはそういうとぱちんと指をならした。液状の黄金が飛んできたかと思うと、ルークの首に黄金のチョーカーがつけられる。エンゲージリング代わりの首輪だ、と笑うテゾーロ。12:00になれば、強制的に逃げられないよう拘束され、どこにいようと結婚式に引きずり出されるわけだ。
「わかった、約束だ」
「っおい!」
「あぁ、勿論だ。これは究極のギャンブルだからなぁ。明日の夜までに金を用意できるか、それとも一生を奴隷として終えるか。せいぜい楽しませてくれ」
期待しているよ
テゾーロの酷く楽しげな声音に、答えるものはなかった。