異次元の狙撃手(連載中)
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今回の事件がハンターによるものだという何よりの証拠は、被害者にある、とFBIはにらんでいるらしい。なんでも、被害者の藤波宏明という男は、以前日本の中古不良物件をハンターに売り付け、破産させたらしい。
コナンは、そういえばあのときも…とベルツリータワーで藤波を見かけたときを思い出した。ついで、あ!と思い付いたように声をあげる。
「そういえば、なんで世良の姉ちゃんは藤波さんを尾行してたの?」
「確かに…」
「なぜ藤波さんを?」
「僕の同級生の親戚が、あの藤波って人と結婚する話があって、胡散臭く思ったのか身辺調査を依頼してきたのさ。僕の調査でも、あの藤波って人、人のいい外国人をカモにして日本の不良物件を売り付けてたみたい」
蓮は、ベルツリータワーで老夫婦に物件を売り付けていた藤波を思い出した。
(殺されちゃったのは可哀想だけど、なんていうか…お陰で結婚話は消えたしあの外国人夫婦も救われただろうから、言い方悪いけど良かったのかな…)
ちょっと性格悪すぎるかなぁと柳眉を下げる。天罰だ、と殺人を正当化することは無いが、なんとも同情しにくい被害者だ。蓮はそんなことよりも…と考えながら、あの、と控えめに声をあげた。
「先程の話だと、犯行はこれで終わるとは思えないんですけど…」
蓮の声に、警察一同はうんうん首肯く。交戦規定違反の一件が原因なら、さらに被害者となる人間が居そうなものだが。ジェームズはその言葉に深く頷いた。
他にハンターが命を狙う可能性があるのは、あと3人。一人はジャック・ウォルツ、45歳。ハンターの交戦規定違反を告発した元陸軍大尉。現在はサンディエゴで軍曹備品の製造会社を経営している。
二人目はビル・マーフィー、35歳。ウォルツの部下で、ハンターの交戦規定違反の承認となった、元陸軍三等軍曹。除隊後は、ウォルツの会社に入り、秘書をしている。
2日前からこの二人は日本に滞在している。場所はそれぞれ京都と日光と離れてはいるが、あと8日は滞在予定ということで、いつ狙われてもおかしくない。
三人目は、森山仁志、34歳。妹の自殺の原因となった婚約破棄の相手だ。森山はシアトル在住の商社マンだったが、四年前に退職していて現在消息はわかっていない。
(ジャック・ウォルツ、ビル・マーフィー、森山仁志…ね)
蓮は机の下で素早くメールを打つ。「お友達」への連絡だ。特に、行方のわかっていない森山について重点的に調べてくれるように。
電話帳の「降谷零」という名前にふと指が止まる。事件に巻き込まれたことを知らせるべきか?すぐ教えるようにと言われてはいる。だが、あの人も忙しい人なので、無駄に心配かけてしまうのはダメだろう。
『何かあったらすぐに言うこと!隠し事してもムダだよ』
でも、でも…
一人蚊帳の外に置かれたときの不安は、十分すぎるほどに分かっている。でも、それを差し引いても、やはり降谷は忙しい。
「ティモシー・ハンターを重要参考人として緊急手配だ!!」
目暮警部の声にはっと我にかえる。逡巡する指は、とうとう送信のボタンを押すことができなかった。
夕陽が空を美しく染める。一通りの聴取も終わり、蓮たち一行は警視庁の建物を後にしていた。小五郎はポケットに手を突っ込み、今回の事件を思ってため息をつく。元SEALSの狙撃兵か。とんでもねぇやつが現れたもんだ。
(だが、とりあえず奴等とは無関係とわかった…)
コナンはホッとしたように肩の力を抜いた。組織が絡んでいたならば、今頃相当面倒なことになっていただろう。夢中になりすぎていたとはいえ、今回の自分は派手にやり過ぎた。奴等相手にこんな目立つ行動は危険すぎる。
「あれ、毛利先生じゃないですか!」
聞き覚えのある声に振り返ると、安室がニコニコしながら手を振って近づいてきた。成実は面倒なのが来たと言わんばかりに眉根を寄せ、蓮は美しい瞳を瞠る。
「透さん、どうして…」
「僕も探偵ですから。事件の捜査をお手伝いしてきたんですよ。…で、皆さんはこんなところで何を?」
「出掛けてきた帰りで偶々ここを通っただけだ。なにか問題でも?散歩位何処に行ったって良いだろ」
成実は間髪いれずにそう返した。二人の放つ不穏な空気に小五郎たちも口をつぐむ。そもそも、事件の話を公にすることはできない。それも分かっていての成実なりの配慮だったんだろう。
………が。
「散歩、ですか。今日はベルツリータワーのオープン記念イベントが行われる日。そちらの方は兎も角、蓮くんや蘭さん、園子さんはおめかししているようですし、鈴木財閥主催のそのイベントに出席したと考えるのが道理。今日あそこでは不動産業を営む男性が狙撃され亡くなる事件が発生しました。ということは、事件を目撃し、捜査協力及び事情聴取に協力するために警視庁にいると考えるのが、僕なりの推理な訳ですが…どうですか?毛利さん」
この男も引き下がるわけがない。ここまで言っておきながらどうなんだ、と聞くあたり、『事件に巻き込まれたのに、俺には何も知らせない気でいたんだな』と相当怒っているらしい。勿論、##NAME1##に。
小五郎はあぁ、まぁそんなとこだ、と渋々ながら頷いた。事件の詳細は機密事項だから教えねーぞ!と声を荒らげる小五郎に、えぇ、勿論、と安室は微笑む。
然り気無く蓮の手を握り、 帰り道送るよなんて笑う安室に、蓮は何処か怯えたように目をそらす。周囲は一瞬で察した。恐らく蓮は安室の地雷を踏み抜きっぱなしなんだろう。
蓮は、怒られるのを分かっている子供のように、そろそろと手を引っ込めようと頑張っている。火に油を注ぐと分かっているから言えないのだろうが、じっとこちらを見つめて「助けて」と目が訴えている。
「蓮くんは奥ゆかしい子なんだから手は繋ぎたく無いってさ」
「うひゃあ!?」
腰に手をまわされて引き寄せられる。大の大人の男二人に、まるで人形のように扱われる理不尽さに、蓮はむっと膨れた。助けを求めるようにコナンに手を伸ばし、有無を言わさず抱き上げる。これなら手は出せまい。
(俺を盾に使うな――――!!!!)
まぁ、使われた方は気が気じゃないわけだが。
想い人に抱き締められて悪い気はしないが、抱き上げられるのは違うだろう。というか、盾にされたせいで男二人から凄まじい勢いで視線が突き刺さっている。
蓮は気にしない事にしたらしく、そのままくるりと小五郎たちと振り返る。
「それにしても、なんで6年経った今復讐を始めたんだろう?あのハンターって人…」
「確かに…」
「言われてみればそうね…」
蘭と園子は顔を見合わせる。確かに、復讐がしたいならもっと早くてもいいはずだ。小五郎は偶々に決まってんだろとげんなり息をつく。
「そんなことより、探偵ごっこはこれでおしまいにしろよ。もうちょっとで死ぬとこだったんだからな!」
「へへへへ…」
「小僧!!お前もうろちょろ動きまわんじゃねぇぞ!!!!」
「はーい!」
悪戯っ子のように笑う真澄とコナン。蓮はきゅっと腕に力を込めた。新一たちが無茶したとき、いつも自分は待っている側で。…一緒に連れていってほしいのに、それも許してもらえないんだから、少し位わがままを聞いてほしい。
「真澄ちゃん、コナンくん。怪我がなくて本当に良かったけど、もう少し、待ってる人の気持ちも考えて…」
(!蓮…)
蓮はコナンの肩にぐりぐりと頭を押し付けた。抱き締めてやりたいのにそれができない自分に歯噛みする。真澄はそんな二人を見て、ふっと微笑んだ。
「大丈夫。コナンくんは僕が必ず守るから!それに、今んところコナンくんの心臓に弾は当たらないよ。勿論、君の心臓にもね。僕のお嫁さん♡」
キューピッドの矢位は、刺さってくれてもいいと思うんだけどな~?なんて片目を閉じる真澄に、蓮は困ったように笑う。うーん、このお嫁さんって呼び方なんとかならないかなぁ…お姫様とか、お嫁さんとか、ハニーとか…僕、男なんだけど。
真澄はふっと微笑むと、蓮の白魚のような手をとって小さくキスを落とす。あっけにとられて固まる一行を尻目に、僕のバイク向こうだから!と真澄は手を振り駆けていった。
「……あの子、ほんと生まれてくる性別間違ってるわよね」
「なんか…王子さまだったね」
コナンを下ろしてやりながら、園子と蓮は思わず感心したように息をつく。なんていうか、一連の流れがスマートだった。彼女にとってはこれ位は普通なんだろう。なんていうか、外国人の友人たちを思い出した。
(そういえば真澄ちゃんアメリカから来てるもんなぁ…)
「……蓮くん」
「はい?っぅえ!?」
振り返ると、実に不機嫌そうな顔の安室がこちらを見ていた。何だろうと思うまもなく、腰を抱かれたかと思うと、ぐっと引き寄せられ、見せつけるように首筋に軽くキスをされる。
「はっ!?な…っ!!!///」
「蓮くん、お姫様扱いされるの好きだろ?」
「っ好きじゃないです!!僕は男ですよ!?///」
「ふぅん?お姫様扱いというか、こっちが王子様みたいな迫り方すると、反応が少し可愛く変化するから、そうなのかと思ったよ」
「王子様どころか獣だろうが!!」
成実の、思わず振り上げた拳は寸でのところで止められる。確かに、今のは王子様というより飢えた狼だ。蓮も流石に家族の前で恥ずかしかったらしく、離してくださいともがいている。
「透さんなんてもう知りません!!」
隙をついてするりと腕をすり抜けた蓮は、蘭の腕を引いて駆けていってしまう。それを追いかける小五郎たちと、一瞬ポカンとした顔で見送ったもののお前のせいだぞと喧嘩をしながら追いかける安室と成実。
(明らかにオメーらの構いすぎが原因だよ!!!!)
コナンはぎゃんぎゃん騒ぐ大人二人に、走りながら心のなかで盛大に突っ込んだ。