異次元の狙撃手(連載中)
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成実の車で、コナンを保護したという海沿いの倉庫まで向かう。ちなみに、道中何があったのかは、皆さんのご想像にお任せすることとしよう。
「コナンくん!」
蓮はコナンに駆け寄った。と、コナンにたどり着く前にばっと現れた影に抱きつかれる。
「ハァイ!僕のお姫様!!」
「わぁ!?真澄ちゃん!?」
なんでここに?と困惑気味の蓮に、運命だな!こんなところで君に会えるなんて!と真澄はにこにこ笑う。それを実に面白くなさそうに見ていたコナンは、二人をべりっと引き剥がし、##NAME1##をかばうように抱き締めた。
「世良の姉ちゃんは、途中で合流してここまでのせてくれたんだ」
「そうだったのか…もう、また傷だらけになってる。待ってるこっちの身にもなってよ?」
「へへっ…わりーな、蓮」
コナンは小声で呟いた。これはコナンとしてではなく、新一としての言葉。蓮は仕方ないなぁとばかりに笑うと、そっと手を繋いだ。
「あっジョディ先生~!」
FBIのジェームズ、ジョディ、キャメルに手を振る。と、ものすごい勢いで駆け寄ってきたジョディに痛いくらい抱き締められた。なんだ、今日は皆抱きつくのがブームなのか。そうなのか。
「会いたかったわ~~♡my angel♡♡」
「あ、あはは…お久しぶりです」
成実はまたかと目を眇める。いや、ジョディのそれは完全に下心なく純粋に愛でている故の行動だから良いのだが、そもそもの話、蓮は少しパーソナルスペースにホイホイ人を入れすぎではないだろうか。無防備というか、強く押されるのが苦手というか。
優しい性格ゆえに、来るもの拒まずなところがあるのだろう。後は育った環境的にスキンシップに慣れてしまった事が原因か。心配なのは本当だが、はっきり言えば妬いている。
「やぁ、最近会わない間にまた綺麗になったんじゃないかい?」
「えっと…僕男なんですけど、それって誉めてます?」
「勿論、誉めてるんだよ」
「そう、なんですか…」
ジェームズという初老の紳士に髪を撫でられ、蓮は困ったように小首を傾げた。孫が可愛くて仕方がないと言わんばかりに、よしよしと頭を撫でるジェームズと、天使だなんだと抱きつくジョディ。
キャメルは主人に誉められる犬のように、にこにこしながらその光景を微笑ましそうに眺めている。天下のFBIと聞いていたがそれもこうなってしまうとは、もうなんというか…
(蓮くん誰よりも強いんじゃないか…?)
世界中の情報屋と繋がりを持ち、警察関係者をも虜にし、FBIやCIA、果てはルパン三世や危ない職業についてる人間とも仲良しなのだから。
「ちょっと!僕のお嫁さんなんだからあんまり独占しないでくれよ!」
真澄がぷんすか怒っている。コナンも呆れ顔でFBIに囲まれる蓮を眺めている。成実はため息を一つついて、蓮の細腕を引いた。勢い余って飛び出す蓮をしっかりと抱き止め、抱きすくめる。
「警部たちが警視庁でお待ちなんで、そろそろ行きますよ」
「ぁ…ぇ、と。せ、成実さん…?」
「蓮くん」
名前を呼ばれてびくりと肩を跳ね上げた。怯えたように小さくなって瞳を揺らす。加虐心が首をもたげるのを感じて、口の端が笑みに歪む。
「後でお仕置きな」
「ひっ…」
耳元で低く囁くと、さぁっと青ざめて嫌々と首を振る。可愛いけれど、こればっかりは、散々言っているのに無防備で人を引き付ける蓮くんが悪い。
「さぁ、行くよ」
焦りと困惑に揺れる大きな空色の瞳に、嫌味なくらいいい笑顔な自分がうつっている。珍しくやだやだと小さく駄々をこねる蓮君はとても可愛らしい。
ぽかんとするFBIもなんのその。ギャンギャン吠える真澄と引き剥がそうと頑張るコナンを連れ、逃げ出さないように蓮を横抱きにして、成実は車へと向かった。
少年探偵団と博士を除く面々と世良は、警視庁の会議室のような部屋で、FBIの3人から今回の事件の重要人物についての説明を受けていた。
「こちらをご覧ください。我々の入手した写真とあの狙撃技術から、犯人はこの男だと思われます。」
ティモシー・ハンター、37才。元海軍特殊部隊NAVY SEALSの狙撃兵で、2003年から3年間、中東の戦争に参加。数々の功績を残した戦場の英雄。
(人を殺して、英雄か…)
蓮は柳眉を下げた。戦争だから仕方の無いことだけれど、やはり嫌悪感は拭えなくてため息をつく。戦争は、数多の犠牲の上に、互いの正義を振りかざすもの。だから、戦争は嫌い。
「その英雄が、どうして…」
「原因と思われるのが、このシルバースターです」
ジョディは一枚の写真を指し示した。そこには1枚の星が彫られたメダルの写真が。これこそが、シルバースター。敵対する武装勢力との戦闘において、勇敢さを示した兵士に与えられる名誉ある勲章。
「ハンターは、この英雄の証を2005年に授与されたのですが、その翌年、交戦規定違反の容疑で剥奪されています」
「剥奪、ですか?」
「えぇ。陸軍のある士官から、武器を持たない民間人を射殺したという訴えがあったんです。勿論、ハンターは否定。調査の結果、証拠不十分で裁判には至りませんでしたが、ハンターはこの一件で戦場の英雄から一転。疑惑の英雄と呼ばれるようになってしまいます」
そして、このシルバースターの件が影響したのか、戦闘に復帰したハンターは、いつもの冷静さを失い戦場に孤立。敵の銃弾を頭に受けてしまう。
幸い手術は成功し、ハンターは一命をとりとめた。だが、これを期に除隊。すぐに帰国し、平穏な暮らしを求め、ワシントン州シアトルの田舎に移り住んだが、戦場での忌まわしい記憶は決して消えることなく、ハンターを苦しめ続けていた。
そして、不幸は彼のみに止まらず、一緒に暮らしていた妻や妹にも降りかかった。投資失敗による破産、婚約破棄による妹の自殺、薬物過剰摂取による妻の死…ハンターは名誉と財産、そして愛する家族までも、立て続けに失ってしまったのだ。
「それから6年間、ハンターの行方は全くわからなくなってしまいます」
「その人物が、なぜ今回の殺人事件の容疑者になるんですか?」
「3週間前の事です。シアトルで、ブライアン・ウッズという地元紙の記者がライフルで狙撃され、死亡するという事件が起こりました」
警察がその被害者を調べていくと、疑惑の英雄という連載記事で、ハンターとその妻を執拗に取材し、二人をノイローゼに追い込んだ人物であることが判明したのだ。
「これにより、容疑者となったハンターを、警察とFBIが操作した結果、2週間前に日本に入国していることがわかったんです」
(それで、来日中のジョディ先生たちに白羽の矢が立ったのか)
蓮は成る程と頷いた。現在も湾内を捜索しているが、これといった手がかりはまだ掴めていないらしい。SEALSは陸海空の頭文字をとったもの。中でも攻撃と同様に、泳ぎは得意なのだとか。
ライフルを撃ったと思われる場所に、サイコロと長さ51ミリの空薬莢が置いてあった。サイコロの目は4。薬莢は犯行で使われたものと同じもの。これはハンターの愛用していたMK-11の弾とも一致する。
ハンターとサイコロの繋がりに関しては、ハンターはダイスゲーム好きで、左の二の腕にサイコロの入れ墨がいれてあるのだとか。繋がりは薄いけれど、何かしらのメッセージを伝えるためにおいたと思えなくもない。