異次元の狙撃手(連載中)
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「どーぉ?我が鈴木財閥が総力をあげて作ったベルツリータワーからの眺めは」
「凄いよ園子っ!」
「うんっ!誘ってくれてありがとう**」
蓮は眼下に広がる景色に目を輝かせた。今日はベルツリータワーのオープニングセレモニー。本来なら関係者以外は入れないのだが、今回は特別に入れてもらったのだ。
「本当に楽しそうだね。こういうの好きか?」
「はいっ!」
成実は隣でそわそわと辺りを見回す##NAME1##の髪をそっと撫でた。本当に可愛い。観覧車といい水族館といい、この子は見て楽しむ系統の物が好きなのかもしれない。今度はどこか景色のいいところへドライブにでも誘おうか。
「な、なぁもう帰らねぇか?」
「えっ…うん、わかった…」
「えぇ~?何言ってんのお父さん。まだ登ってきたばっかりだよー?」
小五郎の言葉に対照的な反応を示す双子。いや、帰りたくないのは二人とも同じなんだが。なんでまたこんなところに来てしまったんだ~!!と叫ぶ小五郎に、成実は内心(本当にな)とつっこんだ。
「お父さんもこっち来なよ~!」
「ダメだよ蘭。…父さん、僕も一緒に降りるよ。下のお土産屋さん見たかったんだ~」
成実さんは皆ともう少し楽しんでくださいと笑うと、蓮は父に駆け寄る。父親思いで優しい子だ。蘭はえぇ~!?と不満げな声をあげる。大好きな片割れと一緒に楽しみたいのに…
昔から馬鹿と何とかは高いところにのぼりたがるって言葉があってだな…とぶつくさ呟いている小五郎に、まぁまぁと##NAME1##は苦笑する。会長大変~とぼやく園子は呆れたように目を眇めている。
子供たちも蓮お兄さん帰っちゃうの…?と不満げだ。なにかを思い付いた様子の蘭と園子は、悪戯っ子のように笑ってほんとは怖いんでしょ?と挑発する。
「っ馬鹿野郎!こんぐらいの高さ、どうってことねぇ…」
「じゃあ床見ても平気よね~?」
「な、床?」
恐る恐る足元を見て、小五郎は目を見開いた。なんと足元はガラス張り。眼下を車が走り、人はまるで蟻のように小さく見える。さぁっと血の気が引き、冷や汗が止まらない。
「床がぁあ!!!!ねぇぇぇえええ!!!!」
「と、父さん…?」
高いの怖いよぉお!!!!と暴走し始めた父に、困惑したように行き場の無い手を彷徨わせる。それをそっと捕まえると、成実はエスコートするように後ろから腰を抱いた。
「毛利さんなら大丈夫だよ。ほら、俺たちは俺たちで楽しもうか」
「え?え…?でも…」
「な?」
有無を言わせない笑顔に、蓮ははい…と困惑した様子で頷いた。園子たちは、建設中の浅草スカイポートや隅田川にかかる5つの橋を見ながら談笑している。子供たちは、どうやら夏休みの宿題は東都ベルツリータワーとその周辺のミニチュア模型にしようと決めたらしい。
<ホラッ!!あそこの黄色いビルです>
蓮たちは聞こえてきた英語に、ふっと視線を向けた。見れば、スーツ姿の男が外国人夫婦に不動産を勧めている。
<築30年ですが、ベルツリータワーができて眺めは4つ星。資産価値は5つ星です!>
(築30年って…)
(古すぎじゃねーか?)
コナンと蓮は思わず顔を見合わせた。詐欺もいいとこだ。外国人を狙った悪徳不動産業者ってとこか。その時、蓮は何者かの視線を感じてばっと振り返った。
「蓮くん?」
「あ、いえ…なんか誰かに見られてる気がして…でも、気のせいみたいです。ごめんなさい、楽しい雰囲気に水をさしてしまって」
「いや、俺は大丈夫だけど…本当に大丈夫なのか?ストーカーとかだったら…」
「もう!心配しすぎですよっ。成実さんが一緒にいてくれるんでしょう?なら、平気です**」
蓮の可愛らしい笑顔に、成実はぐっと言葉に詰まった。この子は、本当に無自覚で可愛いことを言うんだから質が悪い。…そんなところも魅力のひとつなのだが。
「ほら、それより凄い景色ですよ。色んな建物が……―――!!!!」
ベルツリータワーから少し離れた建物の屋上。そこに寝そべる謎の人影。その手元で鈍く光るのは、ライフル。
ドシュッッ
鈍い音をたてて先の不動産業の男に弾丸が突き刺さる。声もなく崩れ落ちる男に、##NAME1##は声無き悲鳴をあげた。
「っっ――――!!!!」
「狙撃だ!!皆伏せろ!!!!」
コナンの声が鋭く響く。成実は蓮を庇うようにして床に伏せた。追加の銃撃はない。あの男を殺すのが目的か。コナンはばっと蓮の姿を探す。蓮は…無事か。
「博士、車のキー!」
「く、車?」
「スケボー取りに行くんだよ!」
「っあ、コナンくん!」
鍵を受け取り、人混みに紛れて下に降りていくコナンに、蓮は慌てて手を伸ばした。あっという間に見えなくなってしまった小さな体に柳眉をひそめると、蓮はばっと窓に駆け寄る。
(ライフルバッグに、体格からして男か。逃走手段は何だ?バイクか?)
その時、追跡中のコナンからバイクのナンバーの連絡が入る。新宿 せ 33-17。即座に警察と友達の情報屋に連絡を回す。と、見慣れない番号から着信があった。
<よぉ、奥さん?>
「っ、次元さん…!?」
蓮はからかうようなその声音に瞠目した。先程の正確な射撃、あれは常人には無理だ。黒の組織のメンバーの仕業かとも思ったが、それにしては他から丸見えの屋上から白昼堂々と狙うなんて考えにくい。…まさか、この人が?
「今、ベルツリータワーで男が狙撃されて…っ貴方じゃ、無いですよね…?」
泥棒、警察、FBI…銃を扱う友人は多い。…その多くが、その手を血で汚していることも、勿論知っている。でも、どうしても認めたくなくて声が震えてしまう。
<んなわけあるか。…オメーは無事だろうな?>
「僕は、全然…」
<……待ってろ、迎えにいってやる>
「へ?っちょ、今どこにいるんですか?あの、次元さん!?」
一方的に切られる。え?なんで?ていうか、電話の向こうで俺も##NAME1##ちゃんとお話した~い!ってルパンさんが叫んでる声したけど触れちゃいけないのか…?
って、そんなことより今は新一だ。一人で飛び出して追跡しているけれど、相手はバイクでしかも拳銃使い。…圧倒的に不利。
「無茶してないといいけど…」
「コナンくんのことか?」
「はい…。あの子すぐ突っ走っちゃうから…」
今は情報集めだ。車種を特定したから身元が割れるのは早いだろう。その筋の友人にも連絡をいれた。取り逃がした時のために、潜伏先も調べておいてもらわないと…。なんていろいろ考えていたら、成実さんにむにって頬を突っつかれた。
「君も、大概人の事言えないけどな?」
目を離すとすぐどこかに行ってしまうから、と目を眇める成実に苦笑する他ない。もっと俺のことも見て?と寂しそうに笑う姿に、蓮は困惑した様子で柳眉を下げた。時々、この人は子供みたいなことを言う…。
その時、携帯に着信があった。相手はFBI捜査官のジュディ。いたたまれなくなって、##NAME1##は飛び付くように電話に出る。
<もしもし、蓮くん?>
「はい!ご無沙汰してます、ジュディ先生。あの、何か…」
<クールキッドを保護したの。あの子なら平気だと思うんだけど、一応引き取りに来てもらえるかしら?私たちも貴方に会いたいわ>
「コナンくんを迎えに?わかりました」
蓮はコナンを迎えに行く旨を小五郎たちに話す。何で行こうかと話していると、後ろから成実の手がのびてきて、不意に##NAME1##の肩を抱いた。成実はそれはそれはいい笑顔で小五郎たちに向き直る。
「蓮くんは俺が送ります。事情聴取もありますし、コナンくん乗せて、警視庁に行けばいいんですよね?」
「あ、あぁ。すまん。頼めるか?」
「いえいえ。お安いご用ですよ」
まだ話は終わってないぞ、と言わんばかりの笑顔の圧力に、蓮はあげかけた悲鳴を飲み込んだ。ひぇぇ…あれは絶対怒ってる。話を聞かないで、成実さんをほったらかしにしてあっちこっちに動く僕も僕だけど。
手を繋がれ、なかば引きずられるようにして下へと降りていった蓮は、見てるこっちも可哀想になってくるくらいだったと、後に蘭たちは語る。