掬い上げられた出会い
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4年前に爆弾事件に巻き込まれてから、その時にお世話になった萩原研二さんと仲良くなった。研二さんは、一応検査を…と入院することになった警察病院に毎日お見舞いに来てくれて、1週間くらいの入院だったけど、それ以降も仲良くしてもらってる。
知らないことは何でも教えてくれて、今では爆弾解体についての知識だって持っている。…研二さんは、過保護だけどノリが軽くて、何て言うか…周りにはいないタイプの大人で、話していて楽しい。
(警察学校時代からのお友達からよく電話かかってきてるし、話も聞くのに会わせてくれないけど、何でなんだろ…)
松田さんとか、降谷さんって言う方みたいなんだけど、不思議と会わせてくれない。デートしよう!とか言いながら、色々なところに連れ回されたけど、不思議とお仕事仲間の人とかに会ったことないんだよなぁ。
(そういえば、あいつら絶対蓮くんのこと気に入るもんなぁ…ってぼやいてたなぁ…僕気に入られたらダメなのかな…?いや、そもそも買い被りすぎじゃ…?)
考えれば考えるほど謎は深まるばかりだが、とりあえず今はまるっと投げ捨てておく。ここは杯戸ショッピングモール。研二さんに観覧車の前で待ち合わせな!と言われ、来たものの、数分前に要請が入ったらしく今日はごめんとメールが入っていたのだ。
(研二さんなら大丈夫だと思うけど、無茶しないと良いなぁ…)
最近アイツが防護服を大人しく着るようになったんだよ~、なんて目暮警部たちにお会いしたときに所謂上の方々に言われたのだが、そもそも爆発物を処理するのに防護服着ないなんてなめすぎている。
因みに、萩原が防護服を着用するようになったのには、蓮にくどくど叱られた時に「死んじゃったら…もう会えないんですよ…?」と泣きそうな顔で言われたことが大きな要因だったりするのだが、蓮は気づいていないので割愛する。
4年前の今日、爆弾事件に巻き込まれた。今回はそんな思い出を払拭すべく、楽しい思い出を作ろう!と研二さんに連れ出されたのだけれど、どうしてだろう。とても嫌な予感しかしない。
「妃 蓮だな」
「………だったら、何です」
知らない男の声と共に、ナイフが背中に押し当てられる。背中をヒヤリとしたものが伝う。
「観覧車に爆弾を仕掛けた。お前は警察の威信を地に落とすための生け贄だ。…来てもらおうか」
めんどくさいことになっちゃったなぁ…
蓮は人知れずため息をついた。
時は少し遡って一週間前…
「えー、紹介しよう。彼が本日付でこの捜査一課強行犯係に配属された、松田陣平君だ。彼は去年まで警備部機動隊に所属していた変わり種でな~」
人の良さそうな警部の紹介に、乾いた笑いしか出てこない。ビジネスパートナーならともかく、幼稚園よろしく仲良しこよしする気はない。時間の無駄だ。
「よしましょうや警部さん。田舎から出てきた転校生じゃねぇんだから。うざってぇ自己紹介なんざ、意味ないでしょう」
こっちは来たくもねー係にまわされて、キレかかってるっていうのによ
一斉に刑事たちの顔つきが険しくなった。単純な野郎共だ。…ま、本心を我慢せずにそのまま口にする俺も大概だが。今回の移動も、それで上と少しやりあった結果、頭を冷やせとここにぶちこまれたのだ。…本当に、不本意にもほどがある異動。
俺はどうやら佐藤と言う女の刑事の元で指示を受けなくてはいけないらしい。名指しされた当の本人は、何で自分がと言わんばかりの反応だったが。
(めんどくせぇ…)
こっから先の面倒を考えて、思わず気のない欠伸が漏れた。
それから一週間。我ながらよく頑張ったと思う。…まぁ、佐藤の言うことは聞かないし、俺は俺のやり方を貫くがために衝突は多いが。
「パス!?何いってるの貴方!!」
「所轄からジジィの被疑者をここに引っ張ってくることくらい、あんたらだけで出来んだろ。…俺は今日ここで待ってなきゃいけねぇんだ。聞いてるぜ、毎年この一月六日に送られてきてるそうじゃねぇか」
「え?あぁ、3年前から本庁に送られてくる大きな数字が一つかいてあるだけの悪戯ファックスでしょ?」
3年前が3、2年前が2、1年前が1…
「間違いねぇ。これは爆弾のカウントダウンだ。奴が動くなら、今日しかねぇぜ」
恐らく犯人は、4年前の爆弾事件の犯人と同一犯。奴は少年を爆弾に縛り付け見せしめにしようとする卑劣な反抗の手口を使った。警察の威信にかけて、こんなふざけた輩はさっさと捕まえなくてはいけない。
「警部、また今年も送られてきました」
白鳥の言葉に、一斉に視線が白鳥と目暮警部に集まる。またかと言わんばかりの表情の目暮と対照的に、ファックスを持ってきた白鳥の顔は困惑の色を示している。
「あぁ、例の数字のファックスだろう?で、今年の数字は何番だね」
「そ、それが…今回は数字ではなく…」
『我は円卓の騎士なり 愚かで狡猾な警察諸君に告ぐ 本日正午14時に 我が戦友の首を弔う 面白い花火を 打ち上げる 止めたくば 我が元へ来い 72番目の席を空けて 待っている 憐れみの天使と共に』
成る程、意味は単純だ。円卓の騎士が72番目の席を空けて待っている、ということは、円盤上で72も席があるのは、杯戸ショッピングモールにある大観覧車しかない。憐れみの天使、とはキリスト教で言う、神が人の罪を背負い代わりに罰を受けたこと。
4年前の爆弾事件も、犯人は爆弾に小さな子供を縛り付けるという卑劣さを見せた。今回もあのときと同様に、見せしめのための人間がいると考えるのが妥当だ。
(さて、さっさと取っ捕まえて、円卓の騎士とやらの面を拝んでやろうか)