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銀翼の奇術師

夢小説設定

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蘭の双子の兄の名前は?
お名前をカタカナで!


(…まだ、何かを忘れているような…)

はふっと視線を巡らせ、コックピットを見たとき、声なき悲鳴をあげた。そうだ、あの時…!

「先程機長さんたちに持っていったお菓子を食べないように言ってください!!!!」

コナンも気づいたようでCAに早く!と声を荒らげる。そんな二人に、小五郎は馬鹿か?と眉をあげる。菓子に毒は入っていないのに、今さら何を…。

その言葉に、はいいから!!!!と怒鳴った。歌を歌う為に、喉をいたわる事が常の彼はあまり声を荒らげる事はない。珍しく本気で怒鳴ったに、さしもの小五郎もたじろく。

は驚いたように呆然としている成実の手を引いてコックピットへと向かう。いち早く我に返ったコナンに、機長たちの指にも毒がついているかもしれないと聞かされ、小五郎達の顔色も変わった。

「失礼します!」

コックピットへと入った一同は、喉を押さえて苦しむ機長たちに息を飲んだ。すかさず成実は、脈の確認と症状の診断を行い、CAに椅子を後ろに下げてと指示を飛ばす。その時、機長が前に倒れこんだことでハンドルが前に倒され、機体が真下に急降下した。

「大丈夫、僕がやる」

はするりと機長とハンドルの間に割って入ると、力一杯ハンドルを戻した。コナンがオートパイロットのスイッチを押そうと手を伸ばすと、後ろから新庄の手が伸びてきてスイッチを入れた。

「新庄さん!?」

「話はあとだ。…もう大丈夫です。すぐに医者を!」

機内放送で医者を探してもらう。小五郎は、に何で操縦のしかたを知ってるんだと目を眇めた。はんー?と不思議そうな顔をする。

「だって僕、セスナの免許もってるし」

けろっと言ってのけてこてんと小首をかしげた。その金はどこから…と言うと、パトロンが学びたいものがあれば好きに学んでくれと言ってくれたので遠慮なく免許を取らせてもらったのだという。…こんなところまでハイスペックな息子に育つなんて、誰が思っただろうか。

そんなことより、とは眉根を寄せた。機長と副操縦士の体調急変は、樹里の手をとってキスしたときに、指についた毒が手についたため。コックピットに部外者を立ち入らせたりしなければ、握手だけで留めておけば。今となってはどうしようもないが、これは後々大変な責任問題となってしまうだろうな。

「成実さん、助かりますか?」

「最善は尽くすよ。オレは今回は補佐に回るけど、本職の先生もいるからな」

だから、そんなに不安そうな顔をしないでくれ。

頬を優しく撫でる手に、はゆらりとアクアマリンの瞳を揺らした。運ばれていく二人に視線を投げ、ぱたりと烟る様な睫毛を瞬かせる。ボランティアで現れた医師は、てきぱきと処置を施しながら、小五郎たちに向き直る。

「幸い、接種した毒物は微量でしたので命に別状はありません。しかし、意識が混濁してとても操縦できる状態ではありませんね」

その言葉に、大人達の視線が一斉にに向いた。すがるような視線に、はきゅっと形のよい唇を噛んだ。分かってはいた。操縦もわかるし経験もある。…だが、それはあくまでセスナ機の場合。こんな大型旅客機で、ましてや大勢の命を預かるなんて…。

成実はまさか、と声を荒らげる。伴たちは、ならセスナの免許持ってるんだし、なんとかなるんだろ!?とすがるようにその華奢な手を握る。

(この汚い大人共…!!自分が助かればくんのことなんかお構いなしか!!!!)

まさに生贄。突き飛ばしてでもその手を振り払ってやろうとを庇うように前に出ようとしたとき、の静かな声が響いた。

「僕、やります」

はぎこちなく微笑んだ。やるしかない。ここで腹を括るしかないのだ。ちらりとコックピットに視線を投げれば、管制に現在の高度と速度などを伝え、指示を仰いでいた新庄と目があった。

「というわけで、機長席には僕が座ります。副操縦席にはくんに。そして、僕の助手を…君にやってもらおう」

新庄はコナンを指差した。はコナンと快斗が一緒だという状況に、とりあえず小さく息をついて副操縦席につく。コナンくんズルい!!と騒ぐ子供たちに、これは遊びじゃないんだと新庄は語気を強める。

は子供達の頭をそっと撫でると、コナンくんには地図を出してもらったり、ボタン操作で手が回らないところのお手伝いだから、難しい作業はさせない。皆は席でお利口さんにしながら、応援してくれるとうれしいな?と微笑む。



うん!と笑顔でキャビンへかけていく子供たちと心配そうに振り返りながらも戻っていく大人たちに、は小さく息をついていくつか操作を行う。コナンはそれを手伝いながら、新庄を見上げて不敵な笑みを浮かべた。

「お前キッドだろ」

「何の事だ」

「とぼけんじゃねぇ。どこの世界に小学生をコックピットにいれるやつがいるんだ」

いつ運命の宝石を盗むつもりだと言うコナンに、キッドはやめたよ、と疲れたように笑った。怪訝な顔をするコナンを一瞥し、また視線を前に向ける。

「本物のスターサファイアは口に含むと冷たいんだ」

その言葉に、コナンは成る程…と顎に指を当てる。先に樹里の手をとってキスをしたのは、それを確かめるためだったのか。そんなことより驚いたぜ、と快斗はに視線を移した。

、セスナの免許持ってたんだな!」

「ってことはお前、運転時間は…」

「100時間以上は乗ってる。免許自体はアメリカで取ったんだ。でも、これはあくまでセスナ機の話。こんな大きなのは初めてだよ」

そもそも、こういうサービス業での免許というのは僕が持ってる免許の対象外だし、とは困ったように笑う。と、その時管制と無線が繋がった。快斗は新庄の声で現状を伝え、はそれを聞きながらスイッチを押していく。

「押しました」

の声に、子供がそばにいるのか!?とぎょっとする管制。僕はセスナの免許保持者だと言うと多少ホッとしたような声が返ってくる。大丈夫、言う通りにすれば絶対着陸できるからと言われ、#の肩の力がふっと抜けた。

高度を下げれば滑走路が見えた。今は夜で暗い。管制の、フラップを下げて車輪を下ろして…という操作に従って操作を進めていく。

その時、目の前が一面の白に染まった。

「っ!?」

操作パネルなど一切の電気設備が消えてしまっていた。落雷が直撃したのだ。画面が全部消えちまった!!!!と驚愕するコナンに、はそこのつまみ回して!と運転席の傍のつまみを指差す。言われた通りに回せば、照明と操作パネルなどの電気が復活した。

「よし、ついた!」

「まだだ!!!!オートパイロットがついてない!!!!」

「っ!!」

自動運転装置であるオートパイロットがつかなければ着陸は難しい。嵐によって吹き荒れる暴風に、865便は大きく機体を持っていかれた。

「もっと機首上げて!」

「っぐ、ぅぅ!!」

大きくふらついた機体は、函館空港の管制をかするようにして突っ込んだ。は咄嗟に隣にいたコナンを抱き込んで衝撃に備える。強い衝撃に、もキッドも思わず体勢を崩す。

「っ…第2エンジン脱落。こちら865便。エンジンがひとつ脱落してしまいました。そちらの被害状況は?」

《こちら管制。管制塔にいた職員は全員無事だ》

その言葉に、とコナンはホッと胸を撫で下ろす。だが滑走路は使えなくなってしまった。エンジンがひとつ落ちたところで、飛行機には4つのエンジンとそれぞれに燃料が入っている。他三つのエンジンで十分持つはずだ。

《現在のバランスは?》

「バランスはとれている」

《よし、ではフラップを3にして、水平飛行に移れ》

後はオートパイロットが復活するまで、飛び回れば…。は片腕で操縦桿を握る快斗に気づいた。まさか、先程の衝突で怪我をしたのか?

確かめようと声をあげかけた時、コックピットに子供たちが飛び込んできた。

「大変だよコナンくん!!お兄さん!!」

エンジンがひとつ取れちゃった!!!!

「大丈夫だよ」

はそっと微笑む。コナンはエンジンが3つでも、それと燃料さえあれば十分飛べると説明した。成実もキャビンから大丈夫か?と顔を出す。

「成実さん、機長さんたちは?」

「容態は落ち着いたよ。あとは着陸してからじゃないとなんとも言えないな。…君は、さっき怪我しなかったか?」

「僕は平気です」

それより、早くオートパイロットがつかないと手動で着陸することになってしまう。は燃料のメーターに目を遣り、ぎょっとした。少ない。しかも急激に減っている。何故だ。

「コナンくん、燃料が…!?」

クロスフィードバルブが開いている。これが開くと燃料タンクを繋ぐ管が一繋がりになってしまうのだ。およそ1分に300L使うとして、飛んでいられる時間は10分程度。それまでに着陸しないと
墜落してしまう。

「何処かまっすぐで周りになにもない場所を見つけないと…」

の言葉に皆はコナンを中心に地図をのぞきこんだ。自衛隊の基地、道路、海への着水などが挙げられるが、どれもリスキー。周囲には住宅街があり、自衛隊の基地では滑走路の長さが足りない。着水しても、この嵐では波も高いだろうし、転覆してしまう可能性もぬぐいきれない。

「私、知ってるよ!広くて長くて周りになにもない場所!」

「本当か歩美!?」

「うん!イルカ・クジラウォッチングってテレビを見てたときに写ってたよ!」

イルカ・クジラウォッチング…ということは室蘭か。…そうか、埠頭だ!!!!

、埠頭ならいけるか!?」

「いける。幸い人数も満員じゃないし、燃料も残り少ないから機体は軽いしね。…だけど一キロ以上だ。この機体の制動距離は2000m以上。いくら軽くて短くなるとはいえ、その半分以上はないと無理だよ」

わかった、と短く返事をして探していく。…有った。崎守埠頭!幅は11m、長さは1000m以上はある。彼処なら問題はないだろう。

だが、新庄はダメだ、と苦々しげに呟いた。先の衝突で片腕を痛め、現在は片手で操縦している。着陸には確実に両手を使う為、難しいと言いかけ、新庄は蘭を見てはたっと止まった。

「君、視力は?」

「え、両目とも1.5です」

「持病は?」

「ありませんけど…」

その回答に満足げに笑うと、新庄は合格だと頷いた。

「俺の代わりにここに座ってくれ」

それに驚いたのは蘭だ。は経験者だが、自分は操縦のしかたなんて知らない。それなのに、そんなこと…

「僕が機長席に座る。蘭は副操縦士席に」

無理だと首を振る蘭に、素早く操縦席に移ると、僕を信じろと強い口調で言いきった。その真剣な面差しに、蘭は覚悟を決めて頷いた。

子供たちをキャビンへと戻し、双子とコナン、新庄、園子はコックピットに残った。崎守埠頭への方位は023。山越になるから高度は5000フィード以上を維持しないといけない。

燃料はギリギリか。でも、失敗するわけには行かないんだ。

(大丈夫。僕ならできる。できる。…皆も一緒だから、きっとできる)

は緊張で震える手で操縦桿を握りしめた。
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