銀翼の奇術師
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人でごった返す羽田空港。
蓮たちは宝石を守ってくれたお礼にと樹里たちに打ち上げに呼ばれていた。博士や子供たちと共に天気予報を見ながら、函館は雷雨か…と困った様子で息をつく。
「生憎の天気じゃのう…」
「飛行機に雷が落ちたらどうしよう…」
心配そうな歩美に、光彦は飛ぶのは雲の上だから大丈夫だと笑う。間髪いれずに着陸するのは雲の下なんじゃない?と突っ込む哀に、あ、と固まってしまったが…。
成実は隣の蓮の顔をのぞきこんだ。蓮は困惑気味に瞳を揺らして小首を傾げる。そんな蓮に、成実はにこりと笑った。
「蓮くん、寒くはない?」
「平気ですよ。…あの、平気なので」
手を、離してもらえませんか…?
蓮の白魚のような手はしっかりと成実の手に繋がれ、彼のポケットのなかだ。控えめな主張は、うん?と笑顔の圧力で一蹴されてしまったけれど。勝手にいなくなったというのをかなり根に持っているらしい。
蓮はちらりと小五郎たちの方に視線を投げた。どうやら遅れている樹里は、駐車場の車の中でなつきにメイクしてもらっているようだ。大女優ともなると大変だなとへらりと笑う小五郎に、伴たちは大変なのはなつきの方だと苦笑する。
すっかり重宝がられて、付き人のようなことまでさせられているのだという。なんとも言えない複雑な状況に、小五郎たちは言葉につまる。そんな重苦しい空気が流れる中、ハァイ!と明るい声が響いた。
「いやー今日はまた一段とお綺麗ですな!」
「どうも、毛利さん!――全員揃ってるみたいね」
「いや、まだ新庄くんが…」
「あぁ、新庄さんなら体調が悪いからキャンセルすると、今朝電話があったんです」
矢口の言葉に、天子は樹里に残念だったわねと嫌味な笑顔を向けた。気にした様子もなくどうして?と返す樹里に、別にとそっぽを向く。二人の空気に矢口たちは複雑そうな表情で口をつぐんだ。
蘭は暫し言葉を探した後に、他の役者さんは来ないのかと声をあげた。樹里は若干小バカにしたような表情を浮かべて蘭に視線を向ける。
「当たり前じゃない!端役の連中呼んだってなんのメリットも無いでしょ?」
まさに女王様。この発言にはさしもの蓮も柳眉を寄せた。先の新庄さんについての天子さんの含みのある言い方と、その時の周囲の表情。恐らく、この六人には樹里を中心として色々あるんだろう。
その時、蓮とコナンは確かに殺気を感じた。一瞬だが、確かにこの中に。どういうことだ。――これから、何かが起こるとでも言うのか。
一抹の不安を残しながら、皆は暫しそこに佇んでいた。
ふかふかな座席。さすがスーパーシートだなと楽しそうな子供たちを見て微笑ましげに小さく笑う蓮のとなりで、成実は感心したように息をついた。
「へぇ…中々だな」
「成実さんはこういうのは初めてです?」
「まぁな。蓮くんは乗りなれてるな」
「エコノミーはありますけど、こういったものはそうありませんよ」
言いながら、蓮はちらりと後ろを確認する。因みに座席順だが、前から樹里、なつき・矢口、歩美・阿笠、一列開けて小五郎。通路開けて隣の列は、前から成沢、伴・天子、哀・コナン、元太・光彦、成実・蓮、園子・蘭というならびで座っている。
因みに蓮の隣だが、子供たちも含めて争奪戦になっていたのだが、結局譲らなかった成実が隣を陣取ることに成功したのである。コナンはとても悔しそうな顔をしていたけれど。
蓮と同じく、後ろの座席の蘭もソワソワと後ろを確認しているようで、園子は蓮と蘭を交互に見て、呆れたようにため息をついた。そっくりか、お前ら。
「どうしたのよ、あんたたち。さっきから振り返ってばかりいて!」
「あ、ううん。何でもない…」
「え、っと…えへへ**気にしないで?」
双子は曖昧に微笑む。と、後ろで良く知った声がした。来た…!と呟くと双子はそそくさと前に視線を戻す。成実と園子は後ろから来た人物の顔を見て納得したように頷いた。なるほど、母の英理を呼んでいたのか。
だが、これを期に仲直りさせようと必死に頑張る二人をよそに、両親の仲はどうやら険悪そうだ。まぁまぁ、とりあえず二人とも座って?と困ったように笑って宥めようとする双子に、親馬鹿な両親もくわっと牙をむいた。
「「冗談じゃない/わ!!!!なんでこいつ/こんな人の隣なんか…!!!!フンッ!」」
小五郎はさっさと樹里の隣へと移ってしまい、樹里のもとへ招待の礼を言いに行った英理は英理で遠回しに喧嘩を売りに行く。席に戻ってどかっと乱雑に腰かける母を見て、蓮と蘭ははぁ…と肩を落として力なくシートに座り込んだ。
「「どうしてこうなっちゃうんだろ…」」
(なるって…)
(なるだろうな…)
(なるよ…)
声を合わせてしょんぼりと項垂れる双子に、園子と成実、コナンはそりゃあそうだと乾いた笑いを浮かべた。今回は恐らく蘭が企画したものに蓮が乗っかったんだろう。
どうも毎回、蓮が企画すると無難だが前には進まず、蘭が企画すると前には進みそうだが破綻する。それでも毎回趣向を凝らして両親を仲直りさせようと頑張るのだから、本当に良い子たちだ。
「お待たせしました、皆さん!」
不意に聞こえた声に皆は通路やシートの上からひょこっと顔を出して後ろを確認する。新庄だ。体調が悪いからキャンセルするんじゃ?と首を傾げる天子に、体調も戻ったし一人でもつまらないから参加したんだと新庄は答える。
悠然と通路を歩き、樹里のもとへ膝をついた新庄は、遅くなりました、ジョゼフィーヌ様なんて仰々しく言いながらその手をとって口づけた。樹里はなぜ言われた通りにしないのかと小声で憤慨するが、新庄は向こうについてからでも十分時間はあると静かに笑う。
コナンはその様子を見て、妙な違和感に目を細めていた。