銀翼の奇術師
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すげーすげーと夕焼けに染まる景色を眺める子供たちに、快斗は向き直った。そういえば…
「お前ら、ナポレオンの事は知ってんのか?」
「えぇ、まぁ。一時期ヨーロッパを支配した、フランスの英雄ということくらいは…」
光彦の言葉に、快斗はよしと頷く。舞台の予習もかねてナポレオンに関するクイズを出してやろうと言う快斗に、蓮も子供たちも不思議そうな顔をする。駄洒落じゃねぇだろうなと目を眇める子供たちに、蓮は乾いた笑いを浮かべる。それは言わないお約束だ。
「オレのは史実に基づいたためになるクイズだ。坊主も考えろよ!」
(うっせーな…)
コナンはイラついた様子で眉根を寄せた。
ナポレオンの土地に、二人の日本人が家を建てたそうだ。さて、それは次のうち誰と誰か。①冬野さん②古野さん③深野さん。
子供たちはうーんと考え込む。皆ふとのがつくようだが…。蓮は問題を聞いてすぐに答えが分かってしまったようで、既に苦笑をにじませている。…これは史実とは全く関係ないじゃないか。
「わかった!答えは冬野さんと古野さんよ!」
園子からの思わぬ正解に、快斗と蓮は驚いたように目を瞠る。
「深野さんだけ真ん中がかでしょ?だから中がかで中華。深野さんは中国人なのよ!」
中々の珍回答に快斗は目が点になった。なるほど。そうきたか。クスクスと小さく笑う双子に、園子は何よと目を眇る。間違ってはいないのだが、解き方がなぁ…
「お前ら、ナポレオンの「我が辞書に不可能の文字はない」って言葉知ってるか?」
「あ、聞いたことある!」
うんうんとうなずく子供たちに、コナンはこのクイズはその言葉に引っかけてあるんだと説明する。土地は地所とも言う。文字は表札に書かれた文字のこと。つまり、我が地所に深野の文字はない、ということだ。
「成る程のぅ…」
感心した様子の阿笠に、哀は正しくは「不可能という言葉は愚か者の辞書にのみ存在する」だと告げる。光彦たちは流石だと目を輝かせるが、ついであまりためにはならなかったと新一にジトッとした視線を送った。
「そ、そうかぁ?ハハハ…」
「工藤君って駄洒落が相当好きなのか?」
「いや、そんなこと無いと思いますけど…」
どうしよう、と蓮は内心頭を抱えた。快斗のせいで成実のなかの新一像が初対面の人にも食って掛かるし、手が早くて気障な、だじゃれ好きな残念な人認識されている。
(もー…いくらなんでも新一が可哀想だよ…)
蓮は困ったように柳眉を下げた。
開場の時間となり、一行は席につく。真ん中の席で、中々な景色だ。前列に子供たちが、後列に大人たちが座るように2列になる。
蓮は二列目で成実とコナンの間に挟まれて座っている。蓮はちらりと戸口のところにいる快斗に視線を投げた。向こうも気づいたようで投げキッスが飛んで来る。…恥ずかしい人だ。
蓮は小さく肩を竦めてステージへと向き直る。…今回の舞台、ジョゼフィーヌとは、ナポレオンの第一王妃ジョゼフィーヌの一生を描いたものである。
ジョゼフィーヌは、貴族の娘でエキゾチックな美貌の持ち主だったが、大変な浪費家でもあり、生家は貴族といっても名ばかりで困窮していた。1779年にアレクサンドル・ド・ボアルネ子爵と結婚。二人の間には一男ウジェーヌ、一女オルタンスが産まれたが、当初から夫婦仲が悪く、1783年に離婚した。
離婚後は実家に戻るも、当時はフランス革命真っ只中。暴動などの不安からフランスに戻り、友人らの助命嘆願を行っていたところ、それを罪に問われ投獄。獄中でも、ルイ=ラザール・オッシュ将軍らと恋人関係にあったと伝えられている。
その後、生活のために総裁政府のポール・バラスの愛人となり、親友のテレジア・カバリュス、ジュリエット・レカミエと並ぶ社交界の花形となって、「陽気な未亡人」と呼ばれた。このころ、年下のナポレオンの求婚を受け1796年に結婚。
しかし、彼女はナポレオンを無骨でつまらない男と見ており、次々と愛人を作り浮気を繰り返した。ナポレオンはエジプト遠征中にジョゼフィーヌと美男の騎兵大尉イッポリト・シャルルの浮気を知り、それを嘆いた手紙も敵国に見つかり新聞にのせられてしまう。
大恥をかいたナポレオンは離婚を決意し、妻が戻る前に家から荷物を叩き出してしまった。だが、ジョゼフィーヌの連れ子であるウジェーヌとオルタンスから涙ながらに説得されたこと、ジョゼフィーヌへの愛から離婚は思い止まることになる。
ジョゼフィーヌは、この離婚騒動あたりから徐々にナポレオンを真摯に愛するようになっていくが、反対にナポレオンのジョゼフィーヌに対する熱烈な愛情は冷めていき、他の女性達に関心を持つようになっていった……
「ボナパルト…エルバ島…ローマ王…」
最期の言葉と共にジョゼフィーヌの手がパタリと落ち、首が力なく垂れる。ついで場面が切り替わり、戴冠式の場面となった。
(あれ、あの教皇の隣にいるのって…父さん!?)
さすがの蓮も目を剥いた。完璧な作戦ってそういうことか…。その時、コナンが席をたった。蓮は隣の成実にコナンくんをお手洗いに連れていくからと断ってその場を抜け出す。
(取り敢えず、目指すは屋上かな)