銀翼の奇術師
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西日が傾き、辺りが美しい夕焼けに染まる頃、汐留ビュータワーの一階にある劇場、宇宙へ来た一行は、矢口を待っていた。今回来たのは毛利親子とコナン、少年探偵団と、阿笠、園子、そして成実の10人だ。
ポアロに集まっていた少年探偵団と阿笠に行かないかと誘ったところ、その場で仕事をしていた成実も一緒にということになったのである。
「あー!ワクワクする~!」
「ほんと!」
実はこのお芝居観たかったのよね!と笑う園子に、楽しみだねぇと蓮はふわりと微笑んだ。成実はそんな蓮の髪を優しく撫でて、歴史物に興味あったのか?と首をかしげた。
「はい。歴史物好きですよ。それに、プロの方のお芝居って勉強になりますから」
流石ハイスペック高校生。もはや観点が違う…。呆れたように蓮を見つめていた園子は、ならもっと早く誘えば良かったなと笑う成実に目を眇めた。
「麻生さん、ダメよ蓮は。もう旦那いるんだから」
「え?」
「そうですよ!蓮には新一が居るんですから!」
「な…っ!?////」
ぼんっと蓮は一気に赤くなった。そんなんじゃない、と否定しても二人は新一とじゃないと認めないと言い張る。成実は面白くなさそうにふぅん…と呟くと、ぐいっと肩を抱いてその目元にキスを落とした。
「なら奪い取らないとな」
「っ成実さん…!/////」
蓮は恥じ入るように俯いてその胸を押す。蘭はダメー!と蓮の腕にしがみつき、園子は面白くなってきたわねとニヤニヤしながら見守る。コナンはあ゙ーー!!!!と叫んで蓮を成実から引き剥がそうとし、うっかりその様子を見てしまった小五郎は、うちの蓮はまだどこにもやらん!と成実に詰め寄った。…実に騒がしい。
「毛利先生!」
矢口は、すいません、お待たせしてしまって…と小走りで駆け寄ってくる。それをどうも、と会釈して迎えながら、蓮は疲れたように息をついた。
「矢口です。毛利先生がお見えになりました」
「どうぞー」
中にはいると、広い楽屋には至るところに花束やお祝い用の花が置いてあった。大きな鏡の前に座り、メイクをしてもらっていた樹里はヘアメイクの酒井なつきを振り返る。
「なつきちゃん。この方があの有名な毛利小五郎さん。あなたも知ってるでしょ?」
「酒井なつきです」
軽く頭を下げるなつきに、小五郎はどうもと頭を下げた。と、その後ろからバタバタと部屋に駆け込む子供たち。広ーい!花がいっぱいだ!すげぇ!と声をあげる子供たちに、樹里は無言で明らかに不快そうな顔をする。
「すいません、お言葉に甘えて子供たちまで連れてきてしまいました」
「いえ、構いませんわ」
小五郎の言葉にすぐに笑顔を形作ると、樹里はチョコレートに手を伸ばした。机の上にはスキューバダイビングをしている写真がある。始めたばかりだが、今度一緒にどうかと言う樹里に、小五郎はへらっと笑いながら是非、と答えた。
「ダイビングなんかやったことないくせに…」
蘭は目を眇め、園子は呆れたように乾いた笑いを浮かべる。蓮は困ったように微笑み、柳眉を下げた。あれ、なかなかコツがいるから、初心者同士は危ないんじゃないかなぁ…
「こら」
成実はひょいっと歩美を抱き上げた。なつきがすかさず返してね、とファンデーションを受けとる。
「お嬢ちゃんたち、お化粧に興味をもつのはまだ早いぞ」
子供は子供らしく、ね?となつきは茶目っ気たっぷりに片目を閉じる。はーいとしょんぼりしながら返事をする歩美に良くできましたと頭を撫でて解放する。
「子供の扱い、慣れてますね」
「まぁ、元から子供は好きだからな。蓮くんも子供好きだろう?」
蓮は、それにしても手慣れすぎてないか…?という突っ込みを飲み下した。女医として潜入していた時にいろいろあったのだろう。その時、こんこんとドアをノックする音が響く。矢口が出ていくと、貴族の格好をした体格の良い男とドレス姿の女性がたっていた。
「あぁ、真佐ちゃん」
「成沢さん!」
俳優の成沢文二郎は、名探偵の毛利小五郎さんですねと言いながら小五郎に歩み寄った。大ファンだと言いながら握手を交わす成沢に、蓮は子供たちのそばにしゃがみこみ、おっとりと微笑んだ。
「お客さんたくさん来たから、静かにね」
「「「はーいっ」」」
小声で返事をする三人に破顔する。やはり素直な子供たちは可愛い。……中身が子供じゃないゆえに全然可愛くない子供たちもいるけれど。まぁ、そこも含めてその人個人であり、そんなところも大好きだけどとさらりと考える辺り、蓮の懐の深さが伺える。
成沢は続いて入ってきた俳優たちを紹介し始めた。ジョゼフィーヌの親友、テレジア・タリアン役の女優、田島天子。ジョゼフィーヌの恋人、イッポリト・シャルル役の俳優、新庄 功。この舞台の演出兼ジョゼフィーヌのパトロン、ポール・バラス役の俳優、伴 享。
一通り挨拶がすんで、握手を交わした時、みなさんお揃いですかなと言う聞き覚えのある声が飛んで来た。…中森警部だ。
「どうも毛利さん。お久しぶり、ですっ」
「い゙っ!?」
中森は握手のために差し出された小五郎の手を思いきり握りしめた。小五郎も負けじと力を込めて握り返す。その節はどうも、いいえこちらこそと互いに譲らない。蓮は刑事たちに笑顔で駆け寄った。
「あの、ご無沙汰してます」
「蓮ちゃん~!元気にしてたかい?」
「はい!こんなときにまでお仕事大変ですよね…。無理しない程度に頑張ってくださいね**」
蓮ちゃぁぁんと半泣きで抱きつかれる。わわ、と驚いたように数度長いまつげをぱたりと瞬かせるも、すぐにふわりと笑みを浮かべてお疲れ様です**とその背をぽんぽん軽く叩く。周りの警官たちもさめざめと涙を流して尊い…これで頑張れる…と呟いている。……大変にシュールだ。
コナンと成実はそれを見てあ゙っ!と声をあげる。と、同時に廊下からも聞き知った声が聞こえ、蓮はえっ?と廊下を振り返った。
中森は痛む手を擦りながら、蓮君からいい加減離れろと刑事の頭をひっぱたいて引き剥がした。ついで、今回特別に捜査に加わる、目暮警部が強く推したと言う人物を呼ぶ。
ドアの向こうから来た人物に、皆が息を飲んだ。
「どうも、工藤新一です」
新一がコナンであると知っている阿笠とコナン本人は、驚愕に目を見開き、あんぐりと口を開けて固まっている。蓮もどうしたものかとおっとりと小首を傾げ、成実はこの子が…とその姿に目を細めた。蘭と園子は漸く蓮の旦那が帰ってきたなと言わんばかりの顔で笑い、俳優陣はあの有名な高校生探偵の…!?と声を弾ませる。
「誰だっけ?」
「何言ってるんですか!」
「蓮お兄さんの恋人さんよ!」
「ち、違うよ!///」
子供たちから飛んで来た思わぬ爆弾に蓮は焦ったように訂正する。旦那よ♡と顔を見合わせて笑う蘭と園子に、もー!と赤面したまま小さく声をあげる。
「怪盗キッドだ!!!!」
コナンの声に、皆が一斉に彼の方を向く。この人新一兄ちゃんじゃない!!!!キッドが化けてるんだ!!!!と叫ぶコナンに、さしもの快斗は一瞬焦ったような表情を見せる。小五郎は訝しげにコナンを見つめた。
「何でそんなことがわかるんだ?」
「だって俺がほんとの…」
「ほんとの、何なんだ?」
言い淀んで後ずさる。本当の事なんて言えるわけがない。快斗はニヤニヤしながらコナンを見つめる。蓮はそんな快斗にため息をつくと、コナンのそばに膝をおった。
「コナンくん、新一と一緒にいたりすることが多かったから、誰よりも彼のことを知ってるんだ。だから、いつもと何だか違うって分かったんじゃない?」
子供にあまり怖い顔で詰め寄るものじゃないよ?と蓮は庇うようにコナンを抱き締める。ばつの悪そうな顔で顔をそらす小五郎の後ろで、中森は笑った。なるほど、それはあるかもしれない。
みょっと強く頬を引っ張る。ギリギリと引っ張るも、変装は崩れない。そりゃぁそうだろう、素顔なのだから。蓮は痛ぇと頬を擦る快斗にため息をついた。よりにもよって、なんで新一に化けたんだか…。
中森は、みなさんの顔も引っ張らせていただきたいところだが、と皆を振り返る。えぇっ!?と目を剥く一同を尻目に、小五郎はその必要はないとひらりと手を振った。
この中にはキッドはいない、考える秘策は勿論考えてある、と自信たっぷりな小五郎に、それは聞かせてもらいたいと中森は目を細めた。準備はすんだからと部屋を空けることに応じる樹里に、新一があ、と声をあげる。
「僕は僕のやり方でやりますから」
「何だと?」
「上等だ!探偵坊主に用はねぇ!」
シッシッとばかりに追い払うジェスチャーをされる。新一、もとい快斗はその返答にニシシッと満足げに笑った。