天空の難破船
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これからディナーだというとき、蓮はロビーを後にした。蘭が不思議そうな顔で声をかける。
「蓮?どこ行くの?」
「蘭…ううん。ちょっとね。先いってて」
「分かったわ」
蓮はエレベーターに飛び乗った。最上階のスカイデッキでは、キッドが宝石を月明かりに翳して、透けるわけねーかとぼやいていた。
「今回は当たりだったの?快斗」
「蓮。…いーや、こいつも外れだ。」
ま、今回はじーさんの挑戦状に乗っかっただけだし、別に期待はしてなかったけどよ。とキッドは笑った。
「なぁ、蓮。…オメーの可愛いおねだりを聞いてやった礼は、くれねーの?」
「え…?」
するりと腰に手を回され、ぐっと引き寄せられる。急に近づいた距離に、お礼に何を求められているかを察して、蓮はかぁっと赤くなった。恥じらいに顔を俯かせ、そっとキッドの胸を押す。
「ゃっ…///」
「嫌?さっきはあんなに熱烈に抱きついてくれたのに?」
「あ、あれは…!///っ!?」
「静かに。オメーの可愛い声は、後で聞くから。」
ふに、と指で唇を押される。吐息がかかるほどの距離でそう囁かれ、蓮はきゅっと目をつむった。
エレベーターがスカイデッキに到着し、成実とコナンは、月花の淡い光のなかでみつめあう二人に瞠目した。大切な大切な幼馴染にあの野郎!!と内心怒り狂うコナンに、成実は静かに微笑む。
「コナンくん。ペン持ってないか?」
「え?あ、あるけど…」
何で今ペン?何に使うんだこの人…なんて思いながら渡すと、短く笑顔で礼を言った成実は、かちりとペン先を出した。そしてすっと真顔になると思いきりペンを振りかぶる。
ブンッと弾丸さながらに飛んできたペンは吸い込まれるようにキッドの頭を狙う。うおっ!?と言いながら顔をのけぞらせて避けるキッドと、キョトンとした顔でことりと小首を傾げる蓮。
蓮はついと入り口に視線を遣り、過保護な幼馴染と友人の姿を見つけてふわりと微笑んだ。
「コナンくん!成実さん!」
駆けてくる二人に歩み寄ろうとする蓮の手をとり、キッドは軽く引き寄せた。ついで頬に柔らかな感触とちゅっという可愛らしいリップ音が。
「ここは、次盗みに来たときにとっといてやるよ」
そう言って蓮の唇を指でなぞり、キッドは天窓から外へ飛び出した。
「あ、返していったんだ…」
感動も何もなく、蓮は左手の薬指にいつのまにかはめられていたレディースカイを眺めた。嵐のような怒濤の展開に頭がついてこず、一周回って冷静になってしまったのだ。
コナンは外せ!!と怒鳴り、それを無言で外させてぽいっとコナンに投げ渡した成実は、真顔でごしごしと蓮の頬を拭った。
痛い…と涙目で訴える蓮の頬をむにっと指で摘みながら、成実はにこやかに笑う。
「オレの身も心も蓮くんのものであると同時に、蓮くんの身も心もオレのものだからね」
もうちょっと自覚しないとな?なんて笑う成実に、蓮は思いきり地雷を踏み抜いていたことを察して乾いた笑いを浮かべた。
そんな蓮に悪戯に微笑むように、レディー・スカイはきらりと月明かりに煌めいていた。