天空の難破船
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「キャアッ」
「動くな!!」
園子は石本に頭に拳銃を突きつけられ、悲鳴をあげた。
「園子!!」
「動くなって言ったでしょ」
構える蘭の背中に、西本はぐっと銃口を押し付けた。やはりこの二人もかと、蓮はぎりっと歯噛みする。
灰原はコナンにカメラマンとリポーターの女が仲間であると告げた。藤岡はここに来たのは逃げるためでなく、コナンをここにおびき寄せるためだという。
「俺たちが何故、ハイジャックの目的を金じゃなく仏像にしたのかわかるか?今の情報社会では金の流れはすぐに足がついてしまう。その点、プライスレスの仏像の方が安全と考えたからだ」
日本の仏像は、海外でも人気があってな、既に買い手もついていた。
「その儲けをフイにした礼をさせて貰うぞ」
藤岡は銃を取り出し、容赦なく発砲する。思わず物陰に隠れるコナンに、藤岡はまだまだ時間はたっぷりある。ゆっくり楽しもうぜとニヒルに笑った。
蓮は大人しく手首を縛られていた。西谷と石本は早く外してくれ、と声をあげる武装した男たちに鼻をならして一蹴する。
「獲物かこれだけになっちまったからな」
お前らとはここでおさらばだと仲間割れするハイジャック犯たちに、蓮は目を細めた。
(今なら二人…拳銃は持ってるけど…―――いける)
蓮は隣の中森達を振り返った。そして、今から1分間、なにも見ていないしなにも聞いていないと約束してください、とふわりと微笑んだ。
「あ、あぁ」
「では、いきますよ」
しゅるっと手首につけられた縄を抜ける。そして蓮は、驚く皆を尻目に未だ気づいていない様子の西谷の銃をめがけ、先程拝借した銃を取り出して発砲した。
「キャアッ!?」
ものの見事に銃に命中する。周りの面々は蓮の暴挙に目を白黒させる。というか、まず何故そんなに撃ち方が手慣れているんだ?
「このっ!!」
「構えが甘いですよ」
ガウンッと再び放たれた弾は、石本の構えた銃に命中する。そして思わず銃を取り落とした二人へ、一気に間合いを詰めてその顔面めがけ回し蹴りを放つ。
翻筋斗打って倒れる二人を横目に、蓮は腕時計を確認した。
「……丁度1分、ですね。中森さんたち、ご協力ありがとうございました!」
「お、おぉぉお前…何処で銃の撃ち方なんか!?」
「んー?あぁ、こう見えて外国で色んな人に教えてもらってるんですよ。射撃場にもよくつれ回されます**」
この人たちよりはよっぽど確実にうまく撃てますよ。なんて花が咲くようにふわふわ笑った蓮は、はたっと気づく。そして、内緒、とばかりに人差し指を唇の前でたてた。
今僕は撃ってませんし、あなたたちもなにも見なかったですよね?と。その仕草に皆はどっと力が抜けた。子供たちは、蓮お兄さんかっこいい…!と目を輝かせていたけれど。
その時、不意に床が傾くのを感じた。蓮は咄嗟に、スロープの角に身を隠す。床はどんどん持ち上がっていく。
「この、クソガキ…!!な、なんだ?」
「どうしたの…?」
起き上がった二人も、漸く異変に気づいたらしい。だが、時既に遅し。地面に対しほぼ垂直に持ち上がった船体は、腕を縛られた乗客達を宙吊り状態にしてしまった。ロータリーの壁を背にする蓮は無事だったが、下手に立っていた西谷と石本はひどく壁に背を打ち付ける。
暫くして、船体が元の傾きに戻り、小五郎はそろそろと立ち上がった。
「おーい、皆…大丈夫か?」
「はい、何とか…」
「奴等はどうした!?」
「犯人の二人ならそこで伸びとるわい。さっきの急上昇の時、壁に激突してな…自業自得じゃ」
のびている二人に、皆はホッと息をつく。これで、漸く終わったのか…
その時、ロビーからキッドが悠々と現れた。
「いやぁ驚きました。ホールまで様子を見に来たら、いきなり床が傾くんですから…」
「おのれキッド!!」
「キッド様♡」
声を荒らげる中森に、うっとりしたようにキッドを見つめる園子。各々の反応を気にすることなく、キッドは流れるように尻餅をついていた蓮の所へ歩み寄ると、そっとその手をとって立ち上がらせる。
「…コナンくんは?」
「あの坊やなら無事ですよ。もうじきここに来るでしょう」
キッドは蓮の繊手を掬いあげ、そっとその指先にキスを落とした。
「じゃあ、みなさんのロープもほどいてあげてください」
勿論、警部のロープは最後でよろしく♡と笑みを浮かべる彼の手にはレディー・スカイが。コソ泥だなんだと怒鳴られるキッドは、怪盗ですよとひらひら後ろ手に手を振って姿を消した。