天空の難破船
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チーフスチュワーデスの浅野の案内で、一行はスカイデッキへとやって来た。
「あっ!蓮ちゃん!」
「中森さん!皆さんも、お久しぶりです!」
へらっと笑って手を振る捜査二課の面々に、蓮もふわりと笑ってお辞儀をした。ちなみに、成実は言わずもがな蓮にぴったりと寄り添うように立っている。蓮ちゃんなんて呼び掛けながら、でれでれと相好を崩した刑事達は、ヘラヘラすんな!と中森に殴られていたけれど。
「紹介しよう、あれが今日彼奴をおびき寄せるラピスラズリ…ビックジュエル、"天空の貴婦人(レディー・スカイ)"じゃ!!」
群青に、金色の粒が星のようにキラキラと映える。その金色の粒のうちでもっとも大きなもの、それが女性の横顔に見えることから、天空の貴婦人という呼び名がついたのだという。
「古代ローマの博物学者プラニウスは、この石を「星の煌めく天空の破片」と表現した。まさに、このスカイデッキを飾るに相応しいお宝じゃ!!」
ちなみにこのお宝、機関銃の弾丸をも跳ね返す防弾ガラスと、次郎吉の指紋と暗証番号が一致しない限り開かない鉄壁の装置に入れられている。ここまでだとまぁ、当たり前な気もするが…
「はうっ!!わぁぁぁああ!!!!んがっ!!」
小五郎の顔面に、機械から繰り出されたパンチがめり込んだ。軽々数メートルは吹っ飛び、頭から崩れ落ちる。蓮は驚きに目を瞬かせ、蘭は小五郎に駆け寄る。
「な、なんてことしやがる!このクソガキ~~~!!」
拳を振り上げて駆け寄る小五郎に、センサーが反応した。途端にバリバリバリッと電流が小五郎を襲う。蓮は額に手をあてて、はー…っと息をついた。引っ掛かりすぎだよ…父さん…
だが、それらの仕掛けを見ても、まだ中森警部は納得しないらしい。拳銃を突きつけられれば、その指で開けざるを得ないだろうという中森に、次郎吉はその時は…と冷静に言いながら数字を入力する。…と、ガコッと音がして、中森の足元の床が無くなった。
「うわぁぁあ!!」
「な、中森警部!?」
床に吸い込まれた中森に、次郎吉はカッカと笑う。海まで落ちちゃったの?と心配する歩美の頭を、大丈夫だよと笑いながら成実はやんわりと撫でた。蓮も、次郎吉さんはそんな方じゃないよと微笑む。
次郎吉が♯のボタンを押すと、パカッと床が開いて落ちた中森が顔を出す。
「クソーッ!なんて仕掛けだ!」
「これでもただのガラスケースかの?」
下で作戦の練り直しだ!!と鼻をならす中森と、それを追う部下たちの背中を見送る。それを解散のきっかけとして、喫煙室へ行くもの、部屋で休むもの、ロビーへと降りていくものと、皆様々に別れていった。
成実と共に部屋に戻った蓮は、トイレに行くと言って席を立った。本当は、そんなもの口実でしかなく、一人になって考えをまとめたかったのだ。
ふらふら歩き回って、どうせならもう一度スカイデッキに行こうかと思い立つ。
一人でスカイデッキへ上がっていくと、一人のウェイターがレディー・スカイを見ているところだった。…こんなところに、ウェイター?
「どうも」
「どうも…?」
困惑したように曖昧な笑顔で小首を傾げる蓮に、ウェイターはにこりと笑う。ソバカス顔の、純朴そうな青年。…知り合いではない筈なのに、何だろうこの違和感は。
「あぁ、この船でウェイターをやってます。ちょっと仕事を抜け出して、噂のビックジュエルを見に来たんです」
「そうなんですか…」
「おっと、ヤバイヤバイ。もう戻らないと…じゃあ、ごゆっくり」
すっと隣を通りすぎようとするウェイターに、蓮は小さな声でボソッと呟いた。
「快斗、今日はウェイターなの?」
「ブッッ」
な、ななな何を行ってらっしゃるんですかとどもるウェイターに、蓮はキョトンとする。やっぱり快斗だ。…どうして隠す必要が?
「話し方と所作が、快斗みたいだなって。ふふっどう?」
「っあ゙~~~/////(かっわいいなお前!!!!///)やっぱ##NAME1##には敵わねーな///」
えへへと得意気に笑う蓮に、快斗は赤くなって悶えた。人の気配を感じて、蓮は一瞬視線をはずした。見られている。…誰だ?
「あの、"ウェイターさん"」
「!」
呼び方を変えたことで、快斗も誰か居ることを悟る。…バレたか?いや、さっきは比較的小声で話していたから、聞こえていないはず。目的は俺か、蓮か。
下へ戻ろう、と快斗が蓮の手をとったとき、エレベーターのドアが開いて中森たちが降りてきた。
「クソッ!!ワシとしたことが迂闊だった…奴は必ず下見に来る。宝石の前を離れちゃ…」
「あれ?蓮ちゃん」
(ゲッ…)
快斗は内心冷や汗ものだ。バレたらめんどくさいことになるのは目に見えている。刑事達は懲りずに蓮ちゃ~んと手を振っていて、蓮も困ったように微笑みながら小さく手を振る。
「どうしてこんなところに…」
「さっきはあまり見れなかったので、きちんと見てみたくて。このウェイターさんに案内してもらったんです」
では、お仕事頑張ってくださいねとペコリとお辞儀をすると、パタパタと駆けていく。エレベーターで、快斗は漸く息をついた。…危なかった。蓮は警察の面々からも人気だから、すぐ囲まれる。あのまま彼処にとどまっていたら、流石にばれてしまうかもしれない。