天空の難破船
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「わぁ~!!トロピカルランドだ!」
「お城が小さく見えますね!!」
「おもちゃの遊園地みたい…!」
ここは飛行船のなか。子供たちが見える景色に感嘆の声をあげた。蓮も下をのぞきこみ、目を輝かせる。
「ほんとだ!すごいねぇ**父さん!すごい景色だよ!」
「ほんとね!ねぇ、こっちに来て見れば?」
双子の呼ぶ声に、小五郎は今考え事してんだと声を荒らげた。高いところが苦手だったな、と思い出したようすの阿笠博士に、そんなんじゃねぇ!と吠える。
蓮は苦笑して、再び眼下をのぞきこむ。まるでおもちゃみたいとはよく言ったものだ。不思議な感覚に、キッドはいつもこの風景を見ているのかと子供たちと一緒になって思いを馳せれば、後ろから手を重ねられた。
「っ!」
「楽しい?蓮くん」
ばっと振り向くと、予想より近くに成実の顔があって蓮はアクアマリンの瞳を見開いて硬直した。成実は実に楽しそうに目を細める。
「た、楽しいですよ…成実さんも、楽しめてますか?」
「うん。オレは蓮くんの楽しそうな顔が見れるからな」
(景色を楽しめ景色を!!!!)
コナンは面白くなさそうな顔で、二人をべりっと引き剥がした。引き剥がされた成実は気にした様子もなく、コナンくんの大好きな蓮くん独り占めしてごめんなーなんて笑っている。
蓮はそんな二人を尻目に、園子の読み上げるキッドからの手紙に耳を傾けた。
「飛行船へのご招待、喜んでお受けします―――」
但し、72歳のご高齢の貴方に6時間も緊張状態を強いるのは忍びなく、夕方、飛行船が大阪市上空に入ってからいただきに参ります。それまでは存分に遊覧飛行をお楽しみください。 怪盗キッド
私のこともいただきに来てくれないかしら~なんて言いながら携帯にキスをする園子に、灰原はユニークな性格ねと呟いた。コナンもまぁなと苦笑する。
園子曰く、今回の客は自分たちだけではないらしい。ルポライターの藤岡隆道さん、日売TVディレクターの水川正輝さん。レポーターの西谷かすみさん、カメラマンの石本順平さんの四人も同乗している。
局をあげて放送したいところだが、時期が悪くて…と言う水川に、小五郎はあぁ、と納得したように目を眇める。赤いシャム猫か。
「えぇ。七日以内に次の行動を起こすと予告があってから、局では緊急事態に備えています」
水川の言葉に、蓮はついと目を細めた。確かに、予告通りなら今日がその期限だが…
「成実さん。成実さんは、あのバイオテロのこと、どう思います?」
「…症状は痒みを伴う発疹、数日間の高熱とそれによる衰弱で死に至る。確か感染経路は飛沫感染だったかな」
「えぇ。子供はより感染しやすく、死に至る危険性も高い。…武装グループは7人。実験室から細菌を強奪し、プラスチック爆弾で爆破した」
そろそろ赤いシャム猫の構成メンバーもわかりそうなんですよね…
よく知ってるな、と目を丸くする成実に、蓮はふわりと微笑む。情報屋にお友達が多いお陰で、蓮の回りには情報が集まる。
「熱は発症からどのくらいで?」
「さぁ、詳しいことはオレも…。ただ、一般的には発疹が出て間もなく発熱するから、発疹が出たときに発熱していればそうだとふんでいいかもな」
なるほど…では、発疹が出ても発熱の有無で細菌感染かどうかを判断すれば良いのか。研究所を爆破したのは、細菌を盗み出したと見せかけるフェイクかもしれない。
「なーに。殺人バクテリアだか何だか知らねぇが、俺なんか病原菌がウヨウヨしている所を飛び回ってきたが…こうしてピンピンしてるぜ!」
怖がる子供たちに、藤岡はふんっと鼻をならした。
「人間様は細菌より強ぇーんだ!」
「ですよねぇ…」
ホッとした様子の子供たちに、藤岡は、オメーらみてーなガキはコロッといっちまうだろーがな!と笑う。一瞬にして怯えた表情になる。蓮は柳眉をつり上げた。
「言葉を弁えてください!」
「そうですよ、やめてください!子供たちを怖がらせるようなことを言うのは!」
「無神経すぎるわ!」
三人の言葉に、平気平気とヒラヒラ手を振って踵を返す藤岡。治郎吉は、日本のどこかで細菌がばら蒔かれようがこの飛行船に乗っていれば大丈夫じゃ!と高笑いする。
(((ずっと飛んだままでいるならな…)))
蓮と成実、コナンは乾いた笑いを浮かべた。
「おい!こっちにも窓があるぞ!」
「わ~~~!!」
笑顔で駆けていく子供たちを見送りながら、灰原と阿笠は楽しそうだなと目を細めた。あんなに小さなうちから飛行船に乗れるとは…
「園子くんに感謝せんといかんわい…彼等にとっては、まるで大空に浮かぶ雲に乗ってるようなもんじゃからのぉ」
フッと、コナンは口許に笑みをにじませた。ん?と首をかしげる阿笠に、ちょっとガキのことを思い出してさ、と笑う。
「蓮のやつ、初めて飛行船を見たとき…」
『新一~~!!みてみて!U.F.Oがいるよっ!』
『U.F.O?』
「まぁ、風船の化け物みたいなのが空を悠然と飛んでるんで、ビックリしてそう思ったんだろうけど…飛行船ってものを本で見て知ってても、あいつ妙に世間知らずなとこあったりすっから、知らなかったみてーだしな」
「あら、メルヘンチックな王子様の自慢話?」
「べ、べつに自慢じゃねーよ…」
頬を赤らめるコナンに、灰原は呆れたように目を眇めた。十分可愛いアピールはしてるだろう。…まぁ、彼がクールビューティな見た目に似合わず、中身が可愛い人なのはもうとっくに知っているけれど。
「みんなー!次郎吉おじさまがスカイデッキに案内してくれるって!」
「ビックジュエルが見られるよ!」
おいでーと笑顔で子供たちを呼ぶ蓮に、子供達ははしゃぎながら駆け寄った。お宝が見たいかー!?と号令をかける園子に、オ~~~!!と元気よく返事をする子供達。何だかんだいいつつ、面倒見が良いのが、彼女の良いところだ。
「まぁ、引く手数多な王子様だし、どっかのピーターパンに横取りされて…夢の国に連れていかれないように、しっかり手綱握っとくのね」
「なんだそりゃ…」
灰原の言葉に、コナンは訝しげに目を細めた。3人も連れだってロビーを後にする。…影で謎の人物がその一部始終を覗いていたことを、知るものはなかった。