月光殺人事件
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あの後、公民館は朝まで燃え続け、全焼した。朝になると村沢さんの意識も戻り、殴られたときのことを話してくれた。
あの夜、公民館に行ったのは、近々あのピアノが処分されると聞き、せめてその前に調律しておこうと思ったからだと。どうやら彼は、ピアニスト麻生圭二を慕い、たまにあのピアノを手入れしていたらしい。
また、平田さんの家から大量の麻薬が発見され、彼は逮捕された。勿論、3人を殺害した、成実も。
そんな事件から早数ヵ月。
放課後の帝丹高校の校門に、一台の車が停まっていた。美しい栗色の髪を風に遊ばせ、歩く姿すら麗しい生徒会長は、にこにこと楽しそうに笑いながら手を振る男に、小さく息をついた。
「蓮くん!」
「…成実さん。僕、恥ずかしいからやめてくださいって言いませんでしたっけ?」
成実と呼ばれた男は、恨めしそうに上目使いで睨む蓮に、可愛くて仕方ないとばかりに頬を撫でて破顔する。
「さぁ、どうだろーな。オレの命も、身も心も全部蓮くんのものだから」
ついつい甘やかしたくなるんだよなっと茶目っ気たっぷりに片目を閉じる仕草に、蓮は照れたように赤くなってその胸をぺしっと叩いた。
成実への判決は、執行猶予5年、無期懲役。つまり、5年の間を普通に生活していれば、刑を免れる。判決後、成実はよく蓮のもとへ顔をだしに来ていた。
「良いお店見つけたんだ。一緒にどうだ?」
「もう、仕方のない人ですね…」
付き合ってあげますよ!とぶっきらぼうに言い、ついで顔を見合わせて笑いあう。
―――これは、数多あるこの事件の結末のなかで、もっとも幸せな物語の一つ――――