月光殺人事件
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蓮は蘭を連れて派出所へと走っていた。一時間は経つというのに、いつまで経っても警官とコナンが戻らなかったため、容疑者全員を帰して今日はお開きとなってしまったのだ。
(そんなの、ダメなんだ…!)
「月光」は、全3楽章からなる序破急的な展開の曲。殺人で使われたのは第一楽章と第二楽章。つまりあとひとつ、第三楽章が残っているのだ。まだ、殺人は続く。
蓮は派出所に転がり込むようにして飛び込んだ。
「コナンくん!」
「れ、蓮兄ちゃん?蘭姉ちゃんも…」
「みんな待ちくたびれて帰っちゃったわよ!楽譜は明日にするって…」
蘭の言葉にコナンはぎょっとしたように蓮を見た。お前がいながら止められなかったのかと。蓮は泣きそうな顔で首を横に振った。
「ここは孤島だから、簡単には逃げられないし…犯人の最後の伝言は「怨念ここに晴らせり」って完結してるから、これ以上殺人は起きないだろうって…第三楽章のこと、言ったんだけど…っ」
蓮は悔しげに唇を噛み、ついでばっとコナンの腕をつかんだ。コナンは驚いたようだったが、すぐに意図を察してニヤリと笑う。
「公民館行こう!」
「うん!」
「えぇ~~!?」
困惑した様子の蘭を尻目に、二人は駆け出した。後ろから警官と蘭も追ってくる。
公民館へ着くと、コナンは早く倉庫の鍵を開けろとせがむ。その時、蓮は微かな物音に視線を巡らせた。…どこだ?何かを探るような、がさがさという音。コナンも気づいたらしく、顔をあげる。
「ねぇ…今あのピアノの部屋から妙な音しなかった?」
「うん。…間違いない。誰かいる」
コナンはだっと走り出した。バンッと勢いよく扉を開けて中に飛び込むと、そこにはピアノの下を探る謎の人影が。
「!?」
窓を割って逃走を図る犯人を追いかけようと走り出すと、コナンはがっと何かにつまづいた。横たわっていたのは村沢だ。頭を殴られてはいるが、うめき声が聞こえるためまだ息はあると少々ホッとする。
きゃあぁぁあぁあ!!!!
(ら、蘭!?蓮…!!)
倉庫か、とあたりをつけて走り出す。倉庫の前では声なき悲鳴を上げた蓮と、言葉にならない様子の蘭が怯えた様子で立っていた。警官はどうやら倉庫で腰を抜かしているらしい。
三人の視線の先には、天井から首をつられた西本の姿が。
「お巡りさん!早く警部さん達に連絡を!」
「わ、わかった!」
コナンの声に、蓮もハッとしたように我にかえる。カチッと音がする方を見ると、カセットテープレコーダーが置いてあった。入っているのは60分テープ。西本さんが亡くなったのは、今から30分以内…恐らく10時半から11時の間というところか…。
蓮は現場に視線を巡らせる。首をつっているにも関わらず、足元には自殺時に使ったであろう踏み台が無い。
(……自殺にしては、不自然だな)
コナンと蘭は足元に残されていた暗号に「ISHO(遺書)」と書いてあるのを読み取り、西本を見上げた。
「自殺ですか…」
「あぁ、遺書によると、川島氏と黒岩氏を殺したことを悔いて自決したようだ」
目暮は遺書を見て、険しい顔なる。二人を殺した動機は、昔、自分達が犯した過ちを、ばらされたくなかったかららしい。「自分達」というのは、2年前に死んだ亀山氏と今回殺された川島氏、黒岩氏、そしてこの西本…そして12年前に焼身自殺した麻生圭二もその中に含まれるだろう。
遺書にはこの暗号を考えたのが麻生で、今挙げた四人に教えたと書いてあった。恐らく彼らはこの暗号で何かをやってたんだろう。
小五郎は納得した様子で頷いた。
「なるほど…そうか。西本は麻生が自殺した焼け跡に、謎の楽譜が残っていたことを知り、昔の秘密がバレるのを恐れて、楽譜を隠滅するために楽譜が保管してあるこの倉庫の窓を破って侵入した…」
だが、問題の楽譜は見つからず、精神的に窮地に追い込まれた西本は、自殺に踏み切ったってわけか。
蓮は小五郎と警部の推理を聞きながら、妙な違和感を感じていた。遺書と書かれた暗号だけ見れば、自殺に違いないが、この現場を自殺と決めつけるには、不自然な点が多すぎる。
「僕、自殺じゃないと思うな…?」
「僕もそう思う」
蓮の控えめな主張を支えるように、コナンも同調する。蓮はホッとしたようにコナンを見て微笑んだ。
「彼の足元、踏み台が無いでしょう?通常、首吊り自殺の場合には、足場から足を離した際にそれを蹴飛ばす場合が多く、その辺に台が転がっていても良いようなものを、この倉庫にはそういったものが無い…」
「た、確かに…」
小五郎はコナンにお前が片づけたんじゃないかと疑いの目を向けるも、そんなことしないとジト目で返される。
「それに、自分の遺書を、わざわざ暗号で書く人なんていないと思うけど…」
(ごもっとも)
蓮はコナンの言葉に困ったように笑った。こんな単純なことにすら気づかないとは、目暮警部たちも相当お疲れなんだろう。蓮はこの場をコナンに任せることにして、成実たちのもとへと向かった。
「蘭、村沢さんは?」
「脳震盪だろうって…でも、まだ意識が戻らないの」
「そうか…」
ピアノの部屋で倒れていたというこの男、何故こんな時間にここにいたのか。コナンが見たというピアノを探る人影の目的とは。わからないことばかりか。
ふむ、と考え込んだ様子で目を細める。その時、目暮たちが部屋に入ってきた。容態はという言葉に、成実が脳震盪だと伝える。
「でも、まだ意識が戻らないので、早く診療所で診察しないと…」
「しかし、誰が一体…」
小五郎の言葉に、清水よ!!!!と令子は金切り声で叫んだ。アイツが西本を殺すところを周一に見られて殴ったのだと。清水は西本を使って黒岩と川島を殺させた。西本を殺したのは口封じのためだ。
「無いとは言えんが……」
(それは大分彼女の先入観と妄想が入っているのでは…)
蓮は疲れたように肩を落とした。そう言えば、以前このピアノを弾いたとき妙な違和感を感じたんだよなぁとピアノに向かって歩き出す。こんこんっとピアノを叩くと、やはり中での反響に違和感がある。
「確か…コナンくんが言ってたのはこの辺りかな…?」
蓮はするりとピアノの下に潜り込んだ。コナンと蘭も一緒になって潜り込む。すると、がらっと横にスライドする隠し扉を発見した。
「ちょっとなにこれ、隠し扉じゃない?」
「これか…道理で変な響きだなと思ったんだよねぇ」
コナンは床に落ちた白い粉をペロリと少量なめてみる。…麻薬だ。何故こんなものがここに…?遺書に書かれていた悪魔の粉とはこれのことなのか?