月光殺人事件

夢小説設定

この小説の夢小説設定
蘭の双子の兄の名前は?
お名前をカタカナで!


「――以上の事から見て、被害者の黒岩さんは死に至ってから、数分しか経っていないと思われます」

「数分ですか…?」

目暮は放送器具へセットされていたカセットを取り出し、神妙な顔で頷く。確かに、このテープには頭に5分30秒ほどの空白がある。恐らく、殺害した直後に再生ボタンを押したんだろう。

「だが、犯人は逃げられんよ…この役場の出入り口はすべて警官で固めてあるからな!」

「じゃあ犯人はまだこの中に…」

「あぁ。容疑者は数人に絞られた!」

目暮はそう言って拳を握りしめた。今度こそ、犠牲者を出す前に解決しなくては。その時、鑑識の一人が驚愕に声をあげた。

「け、警部!被害者の座っていた椅子のしたに、血でかかれた妙なものが…!」

「何!?」

床をのぞきこむと、そこには血で書かれた譜面が譜面があった。はすかさず、そこに書かれた音を読んで暗譜した。さらさらと自らのメモ帳に書き写していく。…またよくわからない譜面だ。

「これだけのものを自分の血で書く時間と体力があるんなら、この人とっくにここから抜け出して助けを呼んでるよ」

コナンの冷静な突っ込みに、も後ろでうんうん頷く。第一、ダイイングメッセージなら、何で譜面にする必要があるんだ。もっと分かりやすい方法とるんじゃないだろうか。暗号にしても。

これはたぶん昨日の事件と同じ犯人がわざと残した――なんて語っていたところ、コナンは小五郎に後ろから殴られた。勢いでべちゃっと譜面の上に倒れこむコナンを、が慌てて抱き上げる。

「わっバカ!大事な証拠を!!」

「バカはどっちなんだよ!こんなちっちゃい子思いっきりぶん殴って!しかも後ろから殴ったら前に倒れるの分かるでしょ!父さんも少しは考えて行動して!」

ふんっとコナンを抱き上げたまま、は部屋を出ていく。ちなみにその背を見送りながら、の事を可愛がっている警察関係者の面々は、皆(今のは毛利さんが悪いよなぁ…)なんて呆れたように小五郎を盗み見ていた。



暫くして、一階に全員が集められた。殺害した後、曲の入ったテープを再生し、死体を発見させるという手口と、その曲がどちらもベートーベンのピアノソナタ「月光」という点から見て、昨夜「月光」の第一楽章とともに発見された川島さんと、今夜「月光」の第二楽章とともに発見された黒岩さんを殺害したのは、同一犯だと思われる。

さらに、黒岩さんの死亡推定時刻と、かかっていたテープの頭に5分30秒の空白部分があることから、黒岩さんが殺されたのは発見される数分前…18:30前後と考えられる。

「つまり、その時間この役場内にいた、あなたたちの中に犯人がいるということだ!」

容疑者は、警察と毛利一家を除けば、第一発見者の西本健。先程検死をした浅井成実。殺された黒岩村長の秘書、平田和明。黒岩村長の娘、黒岩令子。その婚約者、村沢周一。そして黒岩村長と共に、村長選に立候補していた清水正人の6人だ。

その言葉に、令子は何故自分が容疑者に入っているのかと涙ながらに声をあげた。

「私、6時20分頃から死体が発見されるまで、貴方達に取り調べを受けてたのよ!!パパが殺されたのが6時半頃なら、私に犯行は不可能よ!!」

「た、確かに…」

だったら、と蘭も声をあげる。成実は6時過ぎからずっと蘭たちと一緒にいた。彼女も犯行は不可能だ。コナンとも頷く。

「じゃあ、容疑者は残る男四人というわけか…」

「あのー、私も六時過ぎからずっとこのフロアに居たんですが…」

控えめに主張する平田に、目暮が証人はと声をかける。平田は清水と村沢に自分がここにいたのを見ただろうと主張するも、清水にはトイレにいっていてわからないと返されてしまう。

清水と村沢も、互いが証人と言えるかもしれないが、トイレで一緒なのはほんの1、2分。アリバイが無いのと同じことだ。

「ところで西本さん。あなたが2階の放送室で黒岩さんの遺体を発見したわけですが…あなた、あんなところで何をやっていたんですか?」

「く、黒岩に呼び出されたんだ…。は、話があるから6時半に放送室に来いって…」

震える声でそう話す西本。どんな話で呼び出されたんだと聞いても、内容については口をつぐむ。小五郎は確信したようにふんっと鼻を鳴らした。間違いない、この男が犯人だ。

「間違いありませんぜ、警部殿。犯人はこの―――」

「清水よ!!!!」

令子の金切り声に似た、悲鳴じみた甲高い声が皆の鼓膜を貫いた。村長選に立候補したのは黒岩と川島とこの清水正人の三人。二人がいなくなれば、村長の椅子は自動的に自分のものになるという寸法だと、彼女は主張した。

お前が、いやお前がと醜い争いをしている容疑者たちを、何処かぼーっと眺めていたは、くんくんと服の裾を引かれて我に返った。見れば、コナンがねぇねぇと小首を傾げている。

「ねー兄ちゃん、楽譜の解読なんだけど…この音符の横についてるマークって何だっけ?」

「ん?あぁ、これは♯と♭だね。♯が半音上がる、♭が半音下がるのを示す記号だよ。簡単に言うなら、ピアノでいう黒い鍵盤のところだね」

そう言ってはそっとコナンの頭を撫でる。本物の兄弟みたいね、なんて蘭に言われ、は楽しそうにふふふっと笑った。

(鍵盤…そうか!)

見つけ出した法則を元に、再び譜面を読んでみる。

「わかってるな…次は、お前の番だ…」

コナンの声に、皆がピタリと動きを止めた。##NAME1##と蘭がきょとんとしながら小首を傾げる。

「こ、コナンくん?」

「おや、もう法則がわかったのかい?」

「うん!タネがわかれば簡単だよ、この暗号」

ピアノの鍵盤の左端から順番に、アルファベットを当てはめて、メッセージの文字に相当する音を、譜面に書き記しただけだ。そして、それを踏まえて、川島さんが殺された現場にあった暗号を読むと…

WAKATTERUNA TSUGIHAOMAENO BANDA(わかってるな 次はお前の番だ)…

「ね!」

「へぇ!すごいね、コナンくん!」

「すっごーい!」

双子は感嘆の声をあげた。さっきの譜面は!?と声を荒らげる小五郎に、コナンは淡々と暗号を解読していく。

「えーっと、GOUKANO ONNEN(業火の怨念)…KOKONI(ここに)…HARASERI(はらせり)…」

業火の怨念ここにはらせり

その言葉に、容疑者四人はさぁっと青ざめた。業火の怨念とは、まさか12年前に焼身自殺したピアニストの……

「ハハ…奴だ…。ハハハ…やっぱり生きてたんだ…」

西本は狂ったように笑い始めた。

「麻生圭二は生きてたんだぁぁあ!!!!」


「麻生さんは生きとりゃせんよ!12年前に死んだんじゃ!」

あくびを噛み殺しながら、老警官のしっかりした声が響いた。焼け跡から骨が見つかったのだ。彼の妻と娘の骨と一緒に。後で調べたが、歯形も一致したし間違いないという。

「なんもかんも焼けてしまって…残ったのは耐火金庫に入ってた、手書きの楽譜だけじゃったのう…」

楽譜…!!!!

もしかしたらその楽譜に、今回の事件を解く鍵があるのかもしれない。どこにあるんだと詰め寄る小五郎に、警官は公民館の倉庫だとタジタジになりながら答えた。

だが、公民館の倉庫は派出所に置いた鍵が無ければ開かない。さっさと取りに行けと目暮に追い立てられ、老警官は役場を飛び出した。コナンも付き合うなんて言いながら一緒に飛び出していく。

その姿を、西本は蒼白になりながら見つめていた。
6/9ページ
スキ