月光殺人事件
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翌日、午前11:24…
小五郎は、自らを呼ぶ声で目を覚ました。目の前にはあきれ顔の目暮警部が。毛利小五郎が事件に絡んでいると聞いて本庁から出向いてきたらしい。
事件のあらましや死体の状態などは蓮、コナン、蘭そして成実の四人がすべて説明してくれたという。現状がつかめずに目を白黒させる小五郎にため息をひとつつくと、 目暮は 懐からメモ帳を取り出した。
「これは今さっき蓮くんから受け取ったものだ。…毛利君が寝ている間に進展したことやら何やら、全部きちんとメモを取っていてな。これさえ読めば起きてすぐでも捜査に参加できるようにと、君のために作っておったよ。…全く、できた息子を持ったな」
小五郎は隣で壁に寄りかかり、すよすよ寝息をたてている蓮を振り返った。 相当疲れていたのか、これだけ周りで音がたてられていても全く起きる気配がない。
「村役場で事情聴取をやっとるから、お前も手伝いにこい!」
「で、ですがまた犯人がここに来たりしたら…」
小五郎の言葉に、目暮は頼もしく笑った。
「安心しろ!ここにはすでに警官を配備しておる!こんなふざけた事件は、二度と起こさせやせんよ!!」
その日の午後5:58…
月島村役場で事情聴取の順番を待っていたコナン、蘭、成実の3人は、未だ眠たそうに大きなあくびをしていた。 蓮はそんな三人に苦笑して、自販機で買った珈琲を手渡す。
「床、固かったですけど背中大丈夫ですか?コナンくんも」
「ん…大丈夫だけど、あんま眠れなかった…」
コナンの言葉にこくこく頷く二人に、蓮は困ったように笑う。…それは仕方ないよなぁ…。
がちゃりと取調室のドアが開き、中から小五郎が出てくる。小五郎にもさっと珈琲を差し出しながら、蓮は小首を傾げた。
「どう?父さん。犯人わかりそう?」
「バカいうな…何しろ参考人は法事に来た村民38人。名前と住所を確認するだけでも一苦労だ…」
そうだよなぁ…と、蓮は肩を落とす。というか、この取り調べで分かるくらいならとっくに犯人は見つけていそうだな、なんて考えてしまうのは過信だろうか。
「あのー、私はいつ取り調べを…」
「あぁ、成実先生は一番最後にしてもらいました。お疲れみたいですから…」
眠たそうにあくびを噛み殺す成実は、そのままトイレへと席をたった。残りの取り調べ待ちの者は、成実を含めると6人。村長の娘の黒岩令子とその婚約者村沢周一、村長選立候補者の清水正人。村長秘書の平田和明に、現在取り調べを受けている西本健だ。
小五郎としては、何を聞いても黙りこくっている西本が犯人ではないかと踏んでいるらしい。
「まーあの譜面のダイイングメッセージが解読できりゃーはっきりするがな」
(違う!)
コナンはあの譜面はダイイングメッセージではないと心のなかで叫んだ。死ぬ直前に犯人の目を盗んであんな譜面が書けるわけがない。あれは恐らく犯人があらかじめ用意しておいた誰かに対するメッセージ…
(それを見てあの西本って人、ひどく怯えていたから、次に狙われるのは恐らく…)
「バカモン!!何が呪いのピアノだ!!」
突然の怒号に、皆弾かれたように顔をあげた。黒岩が平田に今週中にあのピアノを処分しろと怒鳴り付けていたのだ。あんなものがいつまでもあるからこんなふざけた事件が起きるのだと。
わかりました、と平田はおどおど答える。怒りのままに怒鳴り散らし、去っていく黒岩を見つめる令子、村沢、清水の三人には異様な雰囲気が漂っていた。
午後6:29…
取調室には令子の怒声が響き渡っていた。外まで聞こえるその声に、##NAME1##たちは一周まわって感嘆の声をあげる。なにせもう10分も怒鳴りっぱなしなのだ。どこからそのエネルギーは来るのだろう?
そんな3人を尻目に、コナンは不思議そうに取り調べが終わっても帰ろうとしない西本を見つめた。しきりに時計を気にしているが、何かあるのだろうか?
西本が廊下の奥に消えるのを見て、コナンは追いかける。廊下の曲がり角へ来てみると、すでに西本の姿はない。廊下に面したトイレか?と入ってみるも、中にいた清水に西本は来ていないと言われた。
(しまった!階段か!)
急いで奥の階段をかけ上がる。すると再び、物悲しくも美しいピアノの旋律が、どこからともなく聞こえてきた。
――「月光」の第二楽章が
(放送室か…!)
蓮もばっと駆け出した。階段を駆け上がり、コナンに追い付くようにして放送室へたどり着く。放送室へ飛び込もうとしたコナンは、後ずさってくる背中にぶつかって後ろに倒れた。咄嗟に蓮が受け止める。
「西本さん!?」
「あ、あ、わわ…」
言葉にならない声をあげて腰を抜かす西本に、蓮とコナンはばっと中をのぞきこみ、瞠目した。程無くして駆けつけた小五郎と目暮も、あまりの惨状に言葉を失う。
放送器具へもたれ掛かるようにして、血塗れの黒岩が椅子に座っていたのだ。背中には複数刺されたと見られる傷があり、一本の包丁が深々と突き刺さっている。
「今すぐ鑑識と検死官をここへ呼べ!」
「か、鑑識はいますが、検死官は川島氏解剖のため夕方東京に…」
目暮はこんなときに…と悪態をついた。成実が私でよければと声をあげ、再び検死を行うこととなる。その様子を見ながら、コナンは苛立ちに奥歯を噛み締めた。
まただ。また犠牲者を出しちまった。殺人が起こるとわかっていながら…。許さねぇ。殺人を予告してそれを平然と実行する奴なんて。
(絶対に!!!!)
感情のままに、コナンは拳で壁を殴り付けた。その手をそっととると、蓮はコナンを抱き上げる。
「なっ!?降ろせ!蓮…!」
「…今の新一じゃ、だめ」
蓮は片手でコナンを抱き上げ、空いた手でその頬をむにっと軽く摘んだ。眉間のシワがより深くなるのに苦笑して、今度は眉間に指を這わせシワを伸ばす。
「頭に血、上りすぎ。今の新一じゃ解決できないと思うよ、僕。…だってほら」
そっと掬い上げた小さな手は、強く握りしめられたことで爪が食い込み、血がにじんでいた。
「自分のこと大切にできないようじゃ、まだまだだよ」
こんなことにも気づけていなかったのか。確かに、周りが見えなくなっていたらしい。…本当に、蓮は良い相棒だ。
「…悪ィ。そうだな」
サンキュ、蓮
コナンの言葉に、蓮は嬉しそうに微笑んだ。