ルパン三世vs名探偵コナン
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ロビーで、コナンは蓮を見かけた。美しい面差しは悲痛な色を浮かべ、今にも泣きそうなはりつめた表情の蓮に、思わず駆け寄って人気のない階段脇に連れ込んだ。
「蓮、どうした?何かあったのか?」
「新一、僕、僕は…っ」
ポロポロと美しい双眸から涙が零れ落ちる。巻き込んでしまった。大切な妹を。反王女分子に、誤って殺されてしまうことも、あるかもしれない。
「大丈夫だ。俺が何とかしてやっから。…だから、泣くな」
小さな手が、蓮の頬に添えられる。こつんと額を合わせて、コナンは大丈夫だと繰り返した。小さい頃からの、おまじない。
『お前のことは、俺がなんとかしてやるから、だから泣くな!』
(全然、変わってないな…こういうとこ)
蓮は小さく笑って、涙をぬぐった。まだまだやるべきことは沢山ある。…まだ、終わってなどいないのだから。
「僕は、一足早くヴェスパニアに行くから。…蘭のこと頼むよ」
「あぁ。お前も無理はするな」
「ありがとう。…行ってきます」
ぶっきらぼうだけど優しい幼馴染に、蓮は晴れやかに笑った。
翌日、キースたちの到着を前に、蓮は一人あの桜のもとへ来ていた。花を供え、そっとその幹に寄り添う。
「ただいま、ジル…陛下…」
あの二人が大好きだった。優しくて、清らかな女王が。明るく家族思いな王子が。結婚なんてよくわからないけれど、でも求婚を受けたときは嫌な気持ちはしなかったから、僕も彼が好きだったのかもしれない。
「今となっては、もうわからないけどね」
ふわりと桜の花びらが蓮の栗色の髪にふりかかる。一台の車が車列を離れて此方へ走ってきた。
「蓮様。やはりこちらにいらっしゃいましたか」
「キース様…」
車から降りてきたのはキースだった。恐らく、空港から彼だけまっすぐここに来たのだろう。…僕がここにいることを見越して。
「参りましょう」
「はい。…あの、キース様」
はい?と振り返ったキースに、蓮はふわりと笑顔を浮かべておかえりなさいと言った。妹を、無事につれてきてくれてありがとう、と。そんな蓮に相好を崩すと、キースは蓮の手を掬い上げてキスを落とした。
王宮についてすぐ、キースと蓮はジラードに呼ばれた。椅子にふんぞり返るジラードの前に毅然と立つキースと、寄り添うように一歩後ろに控える蓮。
「王女の様子はどうだね?」
「はい、今はもうすっかり落ち着かれて、朝食も残らず。すいません、ご心配をおかけしました」
「君が謝らなくてよい。反王女分子が日本に送り込まれていたとは。思いもよらないことだ。そこでなんだが、王女の戴冠式を急がせたいんだが」
「王女の戴冠式を、早める?」
キースは言葉の意味を一瞬理解できなかったようで、鸚鵡返しに呟いた。そんなキースを余所に、ジラードは蓮に視線をやって、でれでれと相好を崩した。体にねっとりと絡み付く視線。……あぁ、穢らわしい。
「蓮」
「はい、ジラード様」
「無事に戻ったようで何よりだ。…ほら、遠慮をしないでこっちに来なさい」
キースは下がってよい、とひらひら手を振る。此処へ、と椅子のそばへ呼ばれ、そっと近づくと突然腕を捕まれて無理矢理膝をつかされた。
「憂い顔も美しいな。どうした、何かあったのか?」
「いいえ、なんでもありません。…ただ、この数日とても慌ただしかったので」
疲れただけだと憂いげに目を伏せる蓮に、ジラードはニタニタ笑いながらその頬に手を滑らせた。白い頬、細い顎、華奢な首筋…どんどん手は下へと滑り落ちていく。鎖骨を擽る不埒な手に、蓮はびくりと肩を揺らした。
「お前は本当に可愛らしいな。…ジル王子には勿体無かった」
「っ、ご冗談を…。お戯れが過ぎますよ、ジラード様」
「冗談なものか。戯れに禁断の果実に手を出すほど、私も愚かではないぞ」
お前を私のものにしてやろう。
ジラードはそう言うなり、蓮を無理矢理引摺り立たせて、ベッドへ押し倒した。蓮は怯えたように、切なげに柳眉を寄せる。そんな加虐心をそそる表情に、ジラードは鼻息荒く顔を寄せた。
蓮は恥じらうように顔を背け、声を押さえたいのか右手の袖で鼻と口辺りを覆う。そのいじらしさに、下卑た笑みを浮かべたジラードは蓮の柳腰を撫で回しながら意地悪く質問した。
「何故口許を隠す?」
「…だって…」
「これとっても強力なんですよ」
プシューーーッッ
蓮はその顔に向かい、思いきり催眠スプレーを噴射した。ちなみにこれ、最近過保護に磨きがかかってきたFBIの方々に貰ったものだ。何でも、少しでもまともに嗅いでしまえば3時間は眠りこけてしまう代物らしい。
あっという間に意識を飛ばして眠りこけるジラードを蹴り飛ばして退け、蓮はふんっと鼻を鳴らした。
「こんな古典的な手に引っ掛かるなんて、愚か極まりないと僕は思いますけどね」
穢らわしい手で触らないで貰いたい。そうつぶやいて蓮は部屋をあとにした。