ルパン三世vs名探偵コナン
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「ほーんと厄介だこと。大事に大事に守られちゃって…過保護もいいとこ」
ヴェスパランド公園で、ルパンはパソコンを見つめてそうぼやいた。床に足をつけたら重量センサーでアウト。それを避けても、赤外線センサーでアウト。さらにそれを避けてもサーモセンサーでアウト。
「スリーアウトチェンジってかw」
「昔誰かさんが盗みに失敗したから、必要以上に警備が厳重になっちまったんだろう」
次元はテーブルに足を乗せ、珈琲を片手に息をついた。ルパンは不満げに反論する。
「失敗したんじゃねぇよォ!っていうかお前、さっきからちょいちょい出てくる蓮様ってなにもんよ?」
「何もんもなにも、お前音楽に興味くらいねぇのか?日本が誇る音楽の天才。出場したコンクールで最優秀やら優勝やらを取りまくって、おまけに超絶世の美人で博識。ヴェスパニア王族に寵愛されて、ジル王子からは求婚もうけていた才色兼備な人タラシだ」
「……裏の顔は、数多くの情報屋やら闇組織やらとお友達してる子猫ちゃん」
「あ?なんだ知ってんのかよ」
「知~ってる知ってる!そりゃ~もう、俺様がそんな美人見逃すわけねぇだろう?まぁ、ちっと表と裏が一致しなくってな?そうか…妃 蓮が来てるのか…」
犯罪者から情報屋、警察関係者、公安にFBIやらCIAまで、色んな奴を無意識に惹き付けてやまない謎の麗人。情報戦のwinnerとも言える立場にあり、数多ある己の握る情報を活かせるだけの頭脳も持った、味方につければ一騎当千の力を持つ少年だと聞いてはいたが、そうか。来ているのか。
「一回くれーその綺麗な顔、生で拝んでみてーんだよな~」
「そんなことより、どうすんだ。諦めて観光でもすっか!俺のバイト料で」
俺様が諦めたことあったっけか、なんて悪びれない様子でパソコンを弄るルパンに、次元はコーヒーを飲みながらだから迷惑してんだとぼやく。ついで見せられた画面には、なんの変哲もない石ころの写真が写し出されていた。
「ハッカー自慢か?」
「ちげーよ。これが今回のラッキーアイテム。ヴェスパニア鉱石だ」
ルパンはそう言ってニヤリと笑った。
東京 サクラ・サク・ホテル。そのレセプションパーティの会場で、赤いドレスに身を包んだ園子は、んもー!と声をあげた。
「せっかくイケメン芸能人やスポーツ選手にたっくさん会えるチャンスだってのに…空手のお稽古にバイトだとぉー…」
「相変わらず好きだね、園子姉ちゃん…」
「ほんっと蓮と蘭って物好きよね!気が知れんわ!」
(オメーの事だよ。オメーの)
腰に手を当ててふんすっと息を巻く園子に、コナンはあきれたように乾いた笑いを浮かべた。小五郎はそんな二人を尻目に人混みに向かって歩き出す。
「遅れても来るって言ってんだから。…どぅぇわ」
「なぁにが、『では』よ」
「決まってるじゃん。沖野ヨーコさん探し」
「懲りないねー」
「うん」
呆れたように二人はでれでれと相好を崩して歩き回る小五郎を見送った。
一方、その頃ホテルのスウィートルームでは…
「馬鹿じゃないの!!こんな気持ちの時にパーティ!?嫌って言ったら―――」
「分かりました、王女。では、母上が進めてきたこのパーティを中止して、悲しんでくださっている日本の皆様になにも言わずに帰りたいとおっしゃ―――」
「煩い!!」
「「王女様…」」
「ミラ様」
蓮はそっとその頭を胸に抱いた。ミラはその背を掻き抱いて、きつくきつく腕を回す。白魚のようなほっそりした指が優しく頭を撫でる。二つ年下と聞いていたけれど、本当に蓮の方が兄のようだとミラはぼんやり思う。
「僕もお側に参ります。お席で座っているだけで構いません。…ね?」
蓮の言葉は、自然とすんなり聞ける。もう一人の家族のような存在であり、葬式の時にも公の場では涙を見せずに、部屋で一人泣いていたのを知っているから。
私の前で泣くと、私の心が崩れてしまうのを分かっているから。何があっても受け止めてくれる、私の絶対の味方。
「予定の時間を過ぎている。早く王女の支度を」
キースの冷たい声。メイド達が、おろおろしながらミラ様と声をかけてくる。
「……大っ嫌い…っ」
吐き捨てられた声に答えるものは、いなかった。
「で、いた?ヨーコちゃん?」
「居ませんでした…」
がっくしと肩を落とす小五郎に、園子とコナンはゲラゲラ笑う。と、証明が落とされ、ステージにスポットライトが向けられる。
「皆様、大変お待たせ致しました!どうぞ、盛大な拍手でお迎えください!本日のサプライズゲスト!ヴェスパニア王国、ミラ王女のご登場です!」
コナンと園子は、蘭にそっくりなミラ王女の容貌にあんぐりと口を開けた。ついでその後ろに控える人物にぎょっとする。蓮…!?なんでアイツが国賓と一緒に…!?
「あの…ミラ王女。なにか一言、お言葉を頂戴できれば…」
無言の王女。蓮はふっと目を細め、思案する。今のこの間をどうする?このままではただの感じの悪い小娘と思われても仕方がない。…日本語が分からない、というのもありか?
<何かお言葉を頂戴できますか?、とのことでございます>
「!」
流暢な英語に、ミラはぎょっとしたように目を剥く。これがただの場繋ぎだと察したキースはマイクをミラの前から奪い取って代わりに応えた。
「ミラ王女は初めての来日を、心より喜んでおります」
王女ではなく、隣に控えるキースが話始めたことに小五郎はおいおいと残念そうな視線を送り、園子は日本語分かんないの?と呟いた。二人の言葉を聞きながら、コナンはミラの様子を見て、憐れむような視線を送る。
このホテルの名前、サクラ・サク・ホテル…。亡くなったサクラ女王は、自分の名前と同じ日本の桜が大好きだった。その桜をコンセプトにしたこのホテルのレセプション。
急な事故が無ければ、本人が出席できたろうに。普通なら、王女も来日中止になるところだけれど、今は利権も絡んで日本に貸しを作りたいところ…
(可哀想にな…)
日本で行かれたい場所は?お好きな日本の食べ物は?と半ば必死に会話を盛り上げようとする司会者の努力もむなしく、キースがすべて答えていく。蓮は心の中で嘆息した。気持ちは痛いほどよく分かるのだ。でも、今は公務。
(自分の立場を忘れては、それはそこいらの小娘と変わらないと言われても仕方ない。…どうしたらいいか)
乾杯の御発声をミラ王女にしていただきましょう…と促され、ワインが運ばれる。蓮はそっと席をたつと、キースと反対側に立つようにミラの後ろに控えた。…その時、ワインを注ぐ男から、ふわりとタバコの臭いがした。
「それではミラ王女、乾杯の御発声を…」
「待ちなさい!!」
「飲んじゃダメだ!!」
蓮とコナンが同時に叫んだ。蓮は先程ワインを運んできたソムリエの腕をつかんで捻りあげる。瞬時に技をかけ、腕を背中に回して拘束する蓮は、コナンに目配せする。
「(ったく…皆に説明しろってか)ごめんなさい王女様。でも、そのワイン。注いでくれたその人に味見してもらってよ」
「キース様!ミラ様を!」
「っ!」
キースはミラを守るように抱き寄せた。ミラは混乱した様子で蓮とキースを交互に見遣り、目を白黒させる。わっと慌てて集まってきたSPに男を引き渡した。しかし、蓮が数歩離れたその一瞬の隙を突き、男はSPの腕を振り払って走り出した。
パニックになって出口に押し寄せる客たち。人込みに流され、なかなか男を追うことができないSPたちに蓮は剣呑に目を細め、小さな体で飛び出していった幼馴染を見やった。
「ちゃんと捕まえてよ、新一」
「蓮…?」
「ミラ様、此方へ。…大丈夫ですよ。必ず御守り致します」
蓮はミラの手を引き、最上階の部屋へと戻っていった。