ルパン三世vs名探偵コナン
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ヴェスパニア王女、ミラ・ジュリエッタ・ヴェスパランドは外から聞こえる暴動の声に、苛立ったようにグラスを凪ぎ払った。がしゃんと音をたてて割れるグラスに、苛立ちが募る。あぁ、五月蠅い。
「何してるの!早くあいつらを黙らせなさい!!」
「ミラ様…!どうかお静まりに…」
「煩い!!私があんな風に言われて平気だって言うの!?キース!キースはどこ!?早くキースを呼んで!!」
メイドの言葉すら、今は耳に入らない。癇癪を起こすミラに、メイドたちはおろおろするばかり。と、その時。がちゃりと部屋の扉が開いた。
「私ならここに。如何されました?ミラ王女」
ミラはふんと鼻をならした。どかりと椅子に、怒りのままに乱雑に腰かける。外からは相変わらずの罵声、怒声…小娘を引きずり下ろせ、国王制反対、などなど。
「聞こえるでしょ、あの声。あれが国民の声よ。言われなくたってこっちから願い下げよ!誰が国王なんかになるもんですか!」
貴女は第一王位継承者となったのだと諭すキースに、ミラはそんなの知らないと吐き捨てた。この国の次期国王には、兄がなるものだと。ずっと、ずっとそう思っていたのに…
『蓮。僕が正式に国王となった暁には…戴冠式が終わったら、僕と結婚してくれないか』
『え…!?』
『あら、それがいいわ。蓮、私も大歓迎ですよ』
『蓮がお兄様と結婚したら、ずっと一緒にいられるわね!そうだわ、蓮!あの曲をまた歌って!』
『もう…ふふっはい、ミラ様』
あの楽しかった日々は、もう二度と戻ってこない。兄と母が死んで、蓮も自国日本へと帰ってしまった。今この国で自分の味方はいない。問答無用で受け入れて、甘やかしてくれる人は。弱音を吐いても許してくれる人は、いないのだ。
「早速ですが、王女には公務で日本に行っていただきます」
キースの言葉に、ミラは片眉を跳ね上げた。日本?
「嫌よ!聞いているぞ。私に危害を加えようとするものがいると!」
「私どもが命を懸けて守ります。それに、完璧なボディーガードをつけます。…入れ」
「よォ、姫君」
扉に寄り掛かり、帽子をくいっとあげる髭面の男。ミラはその男を一瞥すると、髭面の男は大っ嫌いだと一蹴した。ハッハーwなんて笑う男を尻目に、ミラはボディーガード、と小さく呟いた。
「ボディーガード…そうよ!蓮がいるじゃない!蓮じゃなきゃ嫌!蓮なら射撃も武術もできるでしょう。私蓮がいないなら行かないわ!」
「…蓮様には蓮様のご都合があるでしょう。」
…とは言え、一国の国賓の命令であればあの少年も逆らえない。今ここに彼がいれば、困ったように笑いながら淑やかにはい、なんて頷くんだろう。本当に、彼もこの姫君には甘い。
キースはその場で蓮にかけてみることにした。
<僕が、ボディーガードを?>
「えぇ。ミラ様がどうしてもと。…お忙しいところすいません」
<ミラ様が…ふふっ承りました。今イギリスに居りますので、…そうですね。ヴェスパニアへの到着は五時間後かと…>
「…ありがとうございます。王女をよろしく頼みます」
<はい。キース様>
ピッと通話を終了する。到着は五時間後…では王宮へ来ていただき、王女を宥めすかして出発するのはどれだけ早くても8時間後か。それまでに準備を進めなくては、頭のなかで算段をつけると、キースはミラに一礼して部屋を出ていった。
6時間後。王宮にたどり着いた蓮に、ミラは飛び付いた。
「蓮…!!」
「はい。ミラ様。お一人でよく頑張ってこられましたね」
落ち着かせるようにその背を撫で、頭をポンポンと撫でる。端から見守っていた次元はほー…と独りごちた。
(これはまた…)
話には聞いていたが、なるほど絶世の美人だ。栗色の艶やかな髪に、烟るような長い睫毛に彩られたアクアマリンの瞳。白磁の肌に形の良い桜色の唇が映える。繊細な美貌はむしろクールで冷たい印象を受けるが、その面差しは優しげな微笑みをたたえていて、どこか可愛らしい。
男にしとくのが勿体無い、と結論付けて次元は煙草をふかした。一頻りぎゅうぎゅう引っ付くミラを誘導して椅子に座らせる。それでも腰に懐いて離れないミラに苦笑して、蓮は次元にそっと視線を向けた。
「次元様…」
「お、何だ蓮様?」
「あの、蓮様は止めてください。僕は高貴な出ではありません。…このような姿勢で言うのも礼を欠いていて申し訳ないと思いますが、足を引っ張らないよう、努力しますのでよろしくお願い致します」
高慢な高飛車美人かと思いきや、随分としっかりした人物らしい。どっかの女泥棒と違って裏切ることも無さそうだ。到着前にキースから聞いていた話では、射撃の腕、柔道・空手・合気道といった武道の腕ともに一級品なのだという。こんな虫も殺せないような坊っちゃんが。…恐ろしい世の中だ。
なかなか好感を持てそうだと判断して、次元は軽く手をあげることで応えた。
それからさらに2時間後…
次元は宝物庫の前にいた。
「あ!」
「よっ!ごくろーさん」
今度また射撃の御指南をお願いします!と言う兵士に、次元はお安いご用だと軽く返す。部屋にはいると次元先生、と呼び掛けられた。先生はやめてくれと肩を竦める次元に、兵士は尊敬の眼差しを向ける。
「王女や蓮様と一緒に日本へ行かれたのかと…」
「その王女に嫌われた」
「は?」
キョトンとした様子の兵士にへらっと笑う。
「王女は愛しの蓮様がいればいいらしい。ちょっと聞くが、王女が戴冠式でかぶるクイーン・クラウンってのは、この中にあんのかい?」
「あ、えぇ。御覧になりますか?」
「え?御覧になっちゃっていいのかい?」
ガチャガチャと大きな音をたててでかい扉が開く。美しい王冠がガラスケースに入れられて、広い部屋の真ん中に置かれていた。兵士いわく、この部屋はセキュリティを切ることができないのだという。王族など一部の者しかパスワードは知らされておらず、侵入者を感知すると扉が閉まり、普通には開けられない仕掛けになっているのだと。
「…そいつぁ厄介だ」