純黒の悪夢
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「零さん…っ」
「ただいま、蓮くん」
ぽろ、と蓮の宝石のようなアクアマリンの瞳から大粒の涙が一粒こぼれ落ちた。そこから堰を切ったようにぽろぽろと涙が白い頬を伝う。しゃくりあげるわけでなく、ただただ静かにはらはらと涙を流している。
(泣き顔すら可愛らしいと思ってしまうのは、最低だろうか)
誰かを思って流す涙がここまで美しいのだと知らなかった。これは惚れた弱味なんだろうか。いや、きっと皆同じようなことを思うはずだ。だって、こんなにも綺麗なんだから。
「心配かけてすみません」
「ん…っでも、ちゃんと帰ってきてくれたから…もう、いいです…っ」
抱き締めれば、素直に胸に懐いてくれる。今日は珍しく甘えん坊だ。…それだけ心配させていたって事だろう。その点に関しては、本当に申し訳ないと思っている。…けれども。
(可愛いなぁ)
「ひゃ!?」
安室は蓮の膝裏に手を回し、ふわりと抱き上げる。蓮の白磁の肌がぶわっと薄紅色に染まった。降ろしてください!と真っ赤な顔で身動ぐのが実に可愛くて。
「だーめ。蓮くん、君足に怪我をしてるんだろう?無理をしないで甘えなさい」
ちょっと意地悪を言ってみる。羞恥と困惑に視線をさ迷わせていた蓮は、あーだのうーだの言いながら俯いて顔を隠してしまった。
「で、でも…っ」
こんなの、恥ずかしすぎて…死んじゃぅ…っ////
両手で顔を覆い、小さくなる。思いがけない仕草に、今度は安室が固まる番だった。…なんだ、この破壊力は。
動かなくなった安室に、蓮はそろそろと顔をあげると不安げに柳眉を下げた。やっぱり、傷が痛むんじゃ…僕のことなんか放っておいても大丈夫だから体無理しないで…と心配そうに小首を傾げる。
「…君は、自分がどれだけ魅力的なのかをもう少し自覚した方がいいな」
え?え?と全く分かっていない蓮を笑顔で丸め込むと、安室は蓮を抱いて皆のところへと歩き出した。
蓮の流す涙は、とても美しかったけれど、
(悲しい涙はもう二度と流させないよ)
小さな誓いは、そっと闇のなかに溶けていった。