純黒の悪夢
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一人水族館をまわりながら、蓮はげっと顔を歪めた。向こうから見覚えのある金髪美女が歩いてくる。
「こんにちは、蓮」
「…………こんにちは、お嬢さん」
ベルモットに声をかけられた蓮はうんざりしたようにため息をついた。
「銀髪でオッドアイの女性に見覚え、あるわよね。説明して」
「…説明してほしいのはこっちだよ。僕たちは怪我してるみたいだったから、ちょっと話しかけただけ。」
「本当?」
「僕が貴女に嘘をつくメリットは?」
「…………」
「無いでしょ。何、また組織がらみなの」
「やぁね、そんなつれない返事。」
するりと腕になつくベルモットに、蓮は困ったように息をつく。バーでうっかり組織と知り合いになってから、どうもちょいちょい巻き込まれる。
「やめてよ。そんなお仕事モードの時に来るんじゃなくて、バーに遊びに来てくれるんなら大歓迎なのに。あんまり仲良くしてると、怒られちゃうから離して。」
「あら、誰か好い人でもいるの?」
「キャンディとかジンとかにだよ。特にジン。彼しつこいから、そろそろいい加減にしてって言っておいて」
蓮はそれだけを言い残すと、くるりと踵を返した。今は情報戦。早く情報を集めなくては。ベルモットはその背に向かい、また会いましょ、と一声かけるとその場を去った。
数日後、FBIの3人と合流するためぶらぶらと町を歩く蓮は、携帯に着信が来たことに気づいて何気無く通知を見た。
「………げっ」
ジン、という名前に眉根を寄せる。嫉妬深くて愛が重くて不器用で口説くのが下手くそな、一言でいうなら面倒臭い男である。こんなこと新一たちに聞かれたら信じられない顔をされるだろうし、ウォッカたちからは直接兄貴に言うのだけはやめてくだせぇ、と泣きつかれそうだ。
「……久しぶり、ジン」
《ベルモットに会ったのか》
「会ったよ。水族館でね。…ダメだった?」
《………どこまで聞いた》
単刀直入な言い方に蓮はため息をつく。
「何を?…ジン。話すときは目的語をはっきりさせてくれないと分からないって言ってるよね」
《お前の情報網にはどこまで引っ掛かってる》
「引っ掛かってるもなにも、組織がらみの貴殿方が喜びそうな情報は何にもないけど?ベルモットにも、絡まれたから巻き込まないでって言っただけ。」
ぶっきらぼうな言い方。高飛車で傲慢。僕はあくまで友達。部下じゃないからと言うことを聞かない僕にも、命令口調で話しかけるの直しなって言ってるのになかなか直らないらしい。
《…ふん。そうか。――あぁ、蓮。お前はスタウト、リースリング、アクアビットの三人に会ったことはあるか?》
「スタウトとリースリングとアクアビット?…あぁ、あるよ。前にバーに来てくれたから。僕が作ったカクテル誉めてくれたの、凄く嬉しかったなー。その三人がどうかしたの?」
《ノックだったから地獄送りにした。お前は知ってたのか?》
「えっ……そう…。ノックだったのは知らなかったよ。僕バーで出会う貴方たちしか知らないし。…相変わらずな話し方。もうちょっと上手な会話の仕方覚えたら?ちゃんと友達と話したりすることあるの?」
《…次会ったら覚悟しとけ。あと、痛い思いをしたくねぇなら、今夜は東都水族館に行くな。いいな》
「は?ちょっとなんの話――って、切られた…」
覚悟しとけって…次どっかで会ったらホテルに連れ込まれるんだろうか。…あながち間違ってないのが怖いところだよなぁ…どうしよ。ウォッカ辺りに助けてもらおうかな…
黒の組織のメンバーと普通に友達感覚。組織の情報を掴んだら、こっそりコナンや赤井、降谷にリークしたりしてるのでノックといえばそうなのだが、組織のメンバーから愛されているのもあり、純粋に友達関係というのが成立している。…専ら口説いてくる連中ばかりだけど。
余談だが、バーのバイト中にジンが来たとき、あまりにぶっきらぼうな口説き方に「口説き方下手だね」とうっかり言ったらその場で犯されかけた。ウォッカとキャンディ、バーのマスターに助けてもらったけど、あの時は焦ったなー…なんて遠い目をして携帯をしまう。
(今はとりあえず、ジョディさんたちに教えてあげないと)
蓮は路駐している車で手を振る老紳士に、頬を緩めた。やんわりと手を振り返し、車に乗り込む。
「お久しぶりです、皆さん」
「久し振りだね、蓮くん。君、益々綺麗になったんじゃないかい?」
「ふふっ僕より、ジョディ先生に言った方がずっとお似合いだと思いますよ。」
「もう、蓮くんったら…」
キャメルは車を発進させる。うゔんっと咳払いをすると、3人はあ、と言わんばかりの顔をしてははは…と苦笑する。
「こほん。それで、話というのは?」
「先日の事故について。それとそれに付随する情報を集めて貰ったので、ちょっと“お喋り”しようかと。」
「「「!」」」
「たぶん秀一さんからお聞きになっているとは思いますが…先日送った女性について」
蓮は持ちうる情報の全てを三人に伝えた。スタウト、アクアビット、リースリングの3人がノックとして粛清されたこと。キールとバーボンの二人に関してはその真偽が不明なこと。今日の夜、東都水族館の観覧車でキュラソー奪還作戦が行われること。
三人の表情もどんどん険しくなっていく。
「あとはコナンくんに聞いてください。…その後の彼女については、彼から聞いた方が良いですから。」
そういってにこりと笑うと、蓮は車を出た。心配そうな視線を送る三人に、ひらひらと手を振ると蓮はそのまま人混みに消えた。
「…………ベルモットも来てたし、もしかしなくても零さん危ない…?」
連絡は待てど暮らせど来ないし…秀一さんからは何回か情報のやり取りをしたけど、最後に情報を送ってからは返事がないし…
(……忙しいのは分かってるから、返信しなくても生存が分かるようなシステムを博士に考案してほしいな…)
…そんなことしたら組織から身を隠すとか諸々の行為が無駄になるけど。
「たぶん、場所は東都水族館…」
行ったら怒られるんだろうな。…いいや。たぶん、ベルモットがいたからこの場所自体になんか仕掛けられている可能性が高いし。
(観覧車で発作を起こしたらしいし、鍵となるのは観覧車か…)