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「やっぱり始めたか。……あぁ、その書簡は此方へ」
「はい。閣下」
御年19という若さにして各省庁・州牧各位を束ねる宰相格…彩相を務める綾
類稀なる美しさと知性を兼ね揃えた元第1公子に誰も文句を言うものはない
「今機能してないのは…ふむ。では、この部署とこの部署に許可を必要とするものは此処へ」
「はっ」
王位を争う馬鹿共のせいで朝廷はうまく機能していない
それでも倒れないのは偏に綾が総括者として各省庁の仕事までしているからである
山と積み上がる書類
もう何日家へ帰れていないのやら
「はぁ…秀麗と静蘭に会いたいなぁ…可愛い弟妹の姿を見ることさえ許されないとは、本当に脳の無いあの馬鹿共許さない…」
綾が自宅に帰ることを許されない背景には、恐らく高位高官であるがために、暫くは安全確保のため軟禁状態にでもしておきたいとでもいったところだろうか
確かに荒れに荒れた城下は凄まじいことになっていて大変危険ではあるのだが…
それにしても、終わらない
睡眠、食事をまるっと投げうって仕事をしているせいか、疲労も手伝い体はそろそろ限界を迎えようとしている
まぁ、限界が来たところで働かなくてはならないのは変わらないのでそんなことは些細なことではあるんだが
目の下にうっすらと隈が出来ている
それでも美貌は少しも陰らないのでさすがと言えよう
「あ。…そろそろ食料はつきる頃だろうか…狩りにでも行くかなぁ」
そうと決まれば早く片付けて可愛い弟妹と市民のために狩りに出掛けよう、と綾は筆を動かす手を早めた
「秀麗!!」
「ぅ…う…っ兄様ぁぁ!!」
「ごめん…本当にごめんね。なかなか帰ってこれなくて…辛かったね」
「…………ぁに…うえ…」
「おいで。静蘭」
二人を優しく抱き締めてあやす
城下は死人が転がりすさまじい有り様だった
「父様。食料は」
「もうほとんど底をついているよ…」
「畏まりました。荷車のこれ、食料と薬を城から持ってきました。配っていただけますか?…では秀麗。私は狩りにでも行ってくるよ。静蘭。弓矢を」
「は…はぃ…?」
「動ける男の方はいらっしゃいますか!いらっしゃれば数名私とともに来ていただきたい。あと荷車を一台貸してください」
「か…り…?」
「そうだよ。秀麗たちのご飯とってくるからね」
誰しもが思ったであろう
…………………狩り?
まさに深窓の君と言うのが相応しいこの方が、…狩り?
花が舞うようにほわんほわんと笑いながら出てきた単語が…狩り?
「静蘭も行くかい?」
「……………(コクリ)」
「よし。では行こうか。残った方々は病人、怪我人を一所に集めてください。後で診ます」
官服ではなく動きやすい服を着て、弓を携えていく
近くの山に行くと、綾はくるりと振り返った
「皆様には獲物を運んで頂きたいんです。…恥ずかしながら私は如何せん力がなくて…」
はにかみながらそう言うと、綾はおもむろに矢をつがえた
ヒュンッ
「ウサギですね。静蘭。悪いがあれを荷車に積んでおくれ」
「はい」
((((えええええぇぇぇ!?((((;゜Д゜)))))))
「おや鳥が」
ヒュヒュンッ
どさどさどさっ
「三羽…ふふ雁ですね。あれもお願い致します。…もっと大きなものでないと…皆に行き渡りませんね…」
うーんと小首を可愛らしく傾げながらも次々と射止めていく
ウサギを6羽、鳥を7羽捕らえたところで一行は不穏な音を耳にした
「こ…っこれは…!?」
「山の主がくる!綾ちゃん!!そろそろ降りねぇと!!」
「山の主?」
と、その時、綾の身の丈を大きく超える巨大な猪が綾めがけて突進してきた
「………ごめんよ」
ドンッ
鈍い音をたてて矢は猪の眉間に命中した
そのままどさりと倒れ、動かなくなった猪に男たちは唖然とする
「や…山の主を一撃で…」
「つ…つえぇ…」
「お前が山の主だったのか。申し訳無いことをしてしまった…。!子供がいたのか」
こそっと影から覗いている瓜坊たちに綾はほほを緩める
「子がいるなら大丈夫か。…強く生きるんだよ」
さて、後は山菜でもとって帰ろうかねと朗らかに笑う綾に男たちは改めてその凄さを知ったのだった
その後、綾は捕った獲物と山菜を女たちにわたし、自ら薬を煎じて怪我人や病人を治療するなど奔走した
そしてまた寝る間も無く朝廷に戻ると仕事をして…
貴陽が王位争いの余波をまともに食らったはずなのに壊滅しなかったのは本当に天女の如き元第1公子のお蔭であるといまでも人々は語り継いでいる