天狐の桜8
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結局朝帰りとなってしまったリオウを待っていたのは、相も変わらず若い頃に転位した鬼の形相のぬらりひょんと黒羽丸たちであった。
「リオウ様!一体今までどこで何を!?そのお召し物は一体…」
「……煩い」
まさに立板に水。怒濤の勢いで話続ける黒羽丸と鴉天狗に、リオウはうんざりしたようすで尻尾をゆらした。心なしか耳もぺたんと垂れているのが可愛らしい。
そもそもだ。リクオに付き合って遅くなったのに、なぜリクオは叱られずに自分だけこんなにも叱られなくてはならないのか。
連絡もいれたしなんなら狒々だっていただろう。自分が何をしていたかなんて端からまるわかりではないか。なんの問題があると言うのだ。
不満が顔に出ていたのか、ぬらりひょんは深いため息をつく。ついで無表情で真っ直ぐにリオウを見つめた。
「リオウ。テメェはワシの部屋に来い」
びくりと華奢な肩が揺れる。若い頃の姿ではやはり凄みが違う。面白くなさそうな顔で唇を尖らせ、ふいっとそっぽを向くリオウに、ぬらりひょんはぐい、とその顎を持ち上げた。
「ワシの部屋に来い。いいな?」
「っ…」
「目をそらすな。――リオウ」
顎に添えられた指が、形のいい唇をなぞる。仕方なくこくりと頷けば、満足げに笑って手は離れた。大人しく部屋へとついていこうとすると、なぜかリクオも共についてくる。
部屋に入り、言われるがままに大人しく座っていると、ぬらりひょんの両手が襟元にかかった。ついで、がばりと着物を文字通りひんむかれる。これにはさしものリオウもぴしりと固まった。
「ほぉぉぉ……💢これだけの切り傷に、――男の痕、か」
「な、なっ…いきなり何を…!?」
「何を、じゃと?」
「っジジイテメェ…!!!」
突然着物を脱がされ、流石に頬を赤らめるリオウと、途端に殺気立つリクオ。この傷はなんだ、と腹や腰についた傷をゆっくりとなぞりあげられ、リオウは思わず腰をひいた。
「っや、め…っひ!?」
「逃げるな。全部説明するまでは解放しねぇからそのつもりでいるんじゃな」
「こ、れは…っ狒々に、っぁ、う」
「ジジイ…いい加減にしやがれ」
声が変に裏返る。腰が引け、逃げを打つ体を許さないとばかりに引き寄せられる。リクオは怒りの形相で、背後からリオウを抱くようにしてその体を支えた。ぬらりひょんは余裕の笑みを崩さずに、今度は鎖骨から首筋にかけての赤い華をなぞっていく。
「これはテメェか、リクオ」
「だったらなんだ」
「っ、私を人形のように、扱うな…っ」
一丁前にこんなのつけやがって、とぬらりひょんは目を眇める。お分かりとは思うが、先日自分でもリオウの首筋に歯形で所有印をつけたことを完全に棚にあげている。
「は、なせ…っ!ぅ、あっ」
「こら、危ないじゃろ」
投げ飛ばしてやろうと手を伸ばした瞬間、尻尾の付け根を強く握られて体から力が抜ける。リクオは珍しく翻弄されるリオウの姿に目を丸くした。
「総大将。失礼しま――――」
「親父?リオウ様、一体何が――――」
騒がしい中の音に、鴉天狗は中を確認して固まった。黒羽丸も訝しげに思って中を覗き、思わずすぱんと襖を開け放つ。
解れて広がる艶やかな白銀の髪。腹まで見えるほど乱された着物。白い肌に残る無数の切り傷に、首筋から鎖骨にかけての赤い華。上気した頬に涙目で、荒い息をついているリオウ。
まさに今襲われていますと言わんばかりの状況。
「っま、待て、これは違…っ」
「な、何をしていらっしゃるのですか総大将ぉぉお!!??」
弁解むなしく、奴良組本邸に鴉天狗と黒羽丸の怒号が響き渡った。ついで総大将と三代目若頭が副総大将を朝から身ぐるみひっぺがして襲った、なんて話題が屋敷中を駆け巡ったのは、また別の話。