天狐の桜1
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翌日、組中はてんやわんやしていた。何でも、昨日の総会でリクオが三代目を継がないと豪語したため、これを期に本家に取り入れとばかりに、我先にとリオウへの縁談が舞い込んでいるのだ。
溢れ帰る恋文や贈り物。首無は大きな洗い桶一杯に詰め込まれた恋文をリオウの前に差し出した。リオウはそれらを一瞥して、贈り物は好きなものを皆で分け、要らないものは捨てよと命じてため息をつく。
「まったく、リクオ様が組を継ぎたがらない以上、リオウ様の御婚姻が先かと、組中大騒ぎですよ」
「御婚姻だと…!?」
首無の言葉に、黒羽丸は目を剥いた。リオウはすいと目を細め、扇を開いて口許を隠した。くだらない戯れ言を。一体誰が…?あぁ、そうか。
「…ガゴゼ辺りがまた余計な口をきいたか」
あの耄碌爺のたわけ者が…と苛立ちに任せて純白の尾が畳を叩く。自分が嫁にいけば、本家との繋がりはより濃くなる。何なら旦那となる者が次の総大将になったとて不思議はない。だからこそ、当主の座を狙う妖怪たちは次々と名乗りをあげたのだろう。
…が。
「私はまだ、誰の手にも堕ちぬ」
それこそ、ガゴゼなどには。
「よくも私を娶るなどと大きな口が叩けたものだ。あの腑抜け共…皆まとめて根性叩き直してくれようか」
ひゅっと扇を一振りすると、桶一杯に詰め込まれた恋文が一瞬にして青白い炎に包まれた。その灰を庭に蒔いてみよ、と言われるがままに庭に蒔けば、灰がこぼれ落ちたところ一面に美しい花が咲き乱れた。
「くだらん文よりも花の方がより皆を楽しませることができるだろう。黒羽丸、後で皆と花見でもしようか。首無、手配を頼む」
「承知」
「畏まりました」
二匹の妖は、敬愛する主の前についと頭を垂れた。