天狐の桜7
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一方、その頃黒羽丸はトサカ丸をつれて雨風が吹き荒れる中を飛び急いでいた。
「急げ!!牛頭丸に狙われたリオウ様と若を探すんだ!!何をおいてもそれが先!!!!」
この山のどこかにいるはずだ。必ず、必ず見つけ出してお守りしなくては。
背中を預けると言ってもらえた主。下僕として、一人の男として、愛する者の傍でその身を守ることができないなど、どうしてそれが許せようか。
(リオウ様…っどうか、ご無事で…!!)
黒羽丸は一人錫杖を握りしめた。
稲光が木々や屋敷の影を不気味に照らし出し、吹き荒ぶ雨風に木の葉が弄ばれる。
「うおおぉ~~い…やめろ…やめてくれ~~。おろして~~」
「ダメだよ…こっちを見な」
清継の別荘の女湯では、情けない声が響いていた。先程何の気なしに妖たちを従えて女湯にいたゆらたちを襲った馬頭丸であったのだが、駆けつけた三羽鴉によって捕縛され、今は軒先に逆さに吊し上げられ、ささ美の尋問を受けている。
「やはり旧鼠はお前らがやったことか!!言え!!」
「ひぃーー!!許してーー!!言えねぇよぉ本当にそんなの~~~~」
「言いな!!!!」
ささ美はスパンスパンと鞭を振るう。馬頭丸は、ゆらにこいつ退治してくれーと助けを求めた。ダメだこの女は。話がわかるやつじゃない。
「若とリオウ様をどこへやった!!!!」
「知らねぇよ~~~~!!うわーーんリオウ様助けて~~!!」
(妖怪同士で何やこいつら…仲間割れ?)
ゆらはささ美と馬頭丸を見ながらどうしたものかと思案を巡らせた。今は下手に手を出せない。こちらには巻と鳥居がいる。二人を守りきるのが先だ。
(「若」って言っとったな。来てんのか…?「あいつ」…それにこいつらもリオウ様って…奴良君のお兄さんを探しとった…どういうことなんや…?)
以前旧鼠に襲われたとき、リオウは「あてがある」と言っていた。複数の妖に嫁にと望まれ、あの妖怪の主すら彼を嫁だと言って抱き上げ連れ帰ったくらいだ。なにか繋がりがあるのか?
(ま、まさか本当に妖怪の主の嫁……なんてことは……)
そこまで考えて頭を振る。余計な勘繰りは視野を狭める。それに、嫁だと言うのなら今更他の妖たちが彼を狙う意味もよくわからない。
妖怪の世界とは、なんなのだろうか?
離れでは未だ真剣で打ち合う音が響いている。的確に急所を狙った流れるような動き。一瞬でも気を抜けば、待っているのは死のみ。
鍔迫り合いによって火花が散る。牛鬼は錯乱したように頭を振った。
「まだだ…!!お前は…こんなものなのか!!」
「俺を殺して…そのあとどうするつもりだい」
「お前を殺して、俺も死ぬのだ」
言うが早いか、薄暗い夜闇に二人の刃が一閃した。