天狐の桜1
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総会に向け、続々と集まってくる妖怪たち。挨拶にきたと言うものたちの相手をしながら、リオウは首無の報告に柳眉を寄せた。
「リクオの元気がない?」
「はい。なにやら塞ぎこんでいらっしゃるご様子で…」
リオウはふむ、と白魚のような指を細顎に添えて考え込んだ。あの元気なリクオが…まさか人の子との間に何かあったのか。自分達は純粋な人間ではない。だが、人間は己以外の種族を恐れ、嫌悪する。いつ、裏切られてもおかしくはない。
「そういえばリオウ様。此度の総会は出席なさるのですか?」
「ふむ。此度、お爺様はリクオの3代目襲名をとの話をする予定だったのだろう。私がいけば面倒なことを言い出す輩がおろう。私はいかぬ」
「畏まりました」
そもそもあの欲ボケジジイ共に顔を見せる義理はない。
スパァンとそれはそれはイイ音をたててリオウは扇で掌を打った。会いたければ部屋まで挨拶に来ればいい話だ。取り次ぎさえしてもらえれば応接間にでも何処でも顔をだそう。…だが、あくまで自分が上だと言わんばかりに出向いてこようとしない馬鹿共の前に、何故わざわざ出向いてやらねばならない?
「妖の畏れのなんたるかを忘れ、徒に騒ぎを起こす輩は無粋で好かぬ」
リオウは悲しげに外を見遣り、嘆息した。実に嘆かわしい。黒羽丸は、そんな主の肩に無言で羽織をかけると、静かに隣に膝をおった。首無はひとつ頭を下げるとその場を退出する。
「流石、リオウ様も副総大将なだけあるな…」
あの気迫、と首無は思わず口の端を緩めた。背筋がぞくりと粟立ち、頭の芯まで痺れるような感覚。「恐れ」とも「慴れ」とも違う、「畏れ」。
並の小妖怪なら泡を吹いて倒れてしまうものもあるかもしれないが、そこそこ力のある自分達には、甘美にさえ感じる程魅惑的な気。
嗚呼、早く御意向を総大将にお伝えして、総会の支度に取りかからなくては。さっさと終わらせて、愛する主のもとへ帰ろうと決意を固めると、首無は厨房へと駆けていった。