天狐の桜5
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「まったく、ワシとリオウを見習わんかい。たかが陰陽師の小娘一人に大慌てしおって」
「何分急なことだったからな。見つからずに上手く隠れられたことは誉めてやってもよいのでは?」
皆上手く隠れられていたぞ、とぬらりひょんの隣に控え、本来の姿に戻ったリオウはくすくすと笑う。目の前に倒れ伏す妖怪たちは、皆心労でぐでーとしている。 一番被害が無かったのは、リオウの部屋で茶を啜っていた面々だろう。 今は台所で食事の支度に奔走しているが。
「ワシなんか大昔は陰陽師の本家行って飯食って帰ってきたこともあったぞ」
「流石にそれは総大将しかできません」
木魚達磨が間髪いれずに突っ込みをいれる。とはいえ、皆妖気くらい消したりできなくては。「付喪神」なら物に戻るとかいくらでも方法があるだろうに。
「じゃーワシらはどうしたら…」
「人型になれ!」
「首が切れてる人は…」
「くっつけろ!」
ぬらりひょんはそんな様子を見ながら、そういえばと隣のリオウに視線を向けた。リオウはきちんと客人の見送りに出たらしい。遠目でしか確認しなかったが、最後に何やら陰陽師の小娘に耳打ちしていたようだが、あれはなんだったのか。
「あぁ、あれは…」
『その、本当に申し訳すいません!!失礼なことを…。私、まだ修行が足りひんみたいです。本当にいると思ったのに、奴良君にもお兄さんにも失礼なことして…』
『…未熟ゆえの失敗か。きちんと失敗した事実を受け止められているのなら、まだこれから伸びしろがあると言うことだろう。だが、見ていると過信が過ぎるな。仮に妖怪がいたとして、それを悪戯に刺激し、周りの一般人を守り抜きながら封じられる技量があると本当に思っていたのか?』
『っ…!!』
『キツいことを言うようですまないな。だが、見ていてどうも危なっかしくてな。…それに、人に善悪があるように、妖にも必ずしも封じられるべきでないものもいるのではないか?』
『それは、どういう…』
『さて、私は思ったことを言ったまで。修行、頑張っておくれ』
「見たものをそれとしか決めつけられないような生き方は、つまらないからやめろと」
「ふんっそーかい」
お前は本当に面倒見がいいな、とわしわし頭を撫でるぬらりひょんに、少々驚いた顔で固まりながらも、リオウは嬉しそうに純白の尾をひらめかせた。リクオも兄さ~~んとリオウに抱きつく。それをはいはいと抱き締めてあやしながら、リオウは暫しの憩いの時にふわりと清らかな笑みを浮かべていた。
この時、不穏な気配が奴良家を虎視眈々と狙っていることを、リクオたちは知るよしもなかったのだ―――――