天狐の桜5
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二人は大浴場の前で何やらで立ち止まったリクオたち一行を見かけた。ゆらは「大浴場」と書いてある看板に眉根を寄せる。水場には昔から妖怪が住み着きやすい。何やら不思議な気配も感じるし、いるならここか。
「大浴場…水場か。奴良君、失礼を承知でのぞかせてもらうわ」
「え!?」
黒羽丸と首無はさぁっと血の気が引くのを感じた。かの君のあられもない姿など、見せるわけにはいかない。だが、二人よりもゆらが扉に手をかけるのが早かった。
「いけませんリクオ様!!」
「今はリオウ様が―――!!!!」
ガラッッ
「ほぅ?いきなり他人の家の風呂を覗くとは、感心しないな」
「「「へ???」」」
静止もろくに聞かずに引き戸を開けると、仕方のないやつだと言わんばかりに少々あきれたように頬笑むリオウがいた。
風呂上がりで着物のはだけた、しどけない姿のリオウが。
しっとりとした烏の濡れ羽色の髪は高く結い上げられ、白く細い首筋が露になっている。それどころか、着替え途中なのもあって、上半身は着物がはだけており、滑らかな背中や華奢な肩から胸元にかけては丸見え。雪のような肌が湯上がりでほんのり桜色に染まっているのも非常に色っぽい。
まさに暴力的なまでの色気。
「「「「「っっ~~~~!!!???/////」」」」」
リオウ自身は、下をはいているし全くもって恥じらいもなにもないのだが。リオウはちらと黒羽丸と首無を流し見る。呆然とした顔がみるみるうちに朱に染まっていくのが面白い。
「おいで」
黒羽丸、首無
名など呼ばなくとも、ふらふらと操り人形のように歩み寄る二人。珠のような白い肌に、色を感じさせる細い首筋。壮絶な色気を惜しげもなくさらすリオウに、直視できずその足元に膝をつく。
二人の頬をついと撫で、はだけた着物前をかきあわせたリオウはリクオに目をやり、誘うようにゆっくりと瞬いた。
「リクオ。…一緒に入りたかったのか?」
「っっ!!////」
からかうような声音。あぁ勿論一緒に入りたいとも。だが今は清継たちをつれている。彼らに想い人である兄の裸体なんて見せたいと思うはずがないだろう。リオウはそんなリクオの想いなど知るよしもなく、で、とリクオの隣で赤面して固まっている面々に視線を投げた。
「いつまでそこに突っ立っているつもりだ?流石に、見られていると着替え辛いのだが」
ほんのりと恥じらいに目元を染め、形のよい唇に指をあてて小首をかしげる。清十字怪奇探偵団の面々からボンッと頭が茹だる音がする。
「「「しっ失礼しましたぁぁぁあ!!!!///」」」
まさに脱兎の勢いで脱衣所を飛び出すリクオたちに、リオウはくすくすと笑う。一方リクオは複雑すぎる内心にぐるぐるとやるせない思いを抱いていた。
(うわぁどうしようすごい幸せ///でもラッキー!って言いたいとこだけど清継君たちにも見られてるんだよな…あ゙ぁぁっ僕だって滅多に拝めないのにぃぃい)
ぶん殴ったら記憶飛んでくれるかな、なんて言葉が頭をよぎったのは内緒だ。妖怪がどうのとかもうどうでもいい。いや、よくないけど。それより兄さんの着替えシーンを僕以外に見られたことの方が大問題なんだよ!!!!
でもそんなことを言ってしまえば、自分は確実に「普通の人間」として生活していけないだろう。
「…特に、何もなかったね…」
「う、うん…」
客間に戻り、皆気まずそうに目をそらす。恐らく一番最後にリオウに会ったのが衝撃的だったんだろう。やっぱり記憶を消してやりたい。
(い、いや…それより助かった…良かった~皆空気読んでくれるやつらで…)
ほっと胸を撫で下ろす。それだけは、それだけは今回唯一上手くいったと誉めるべきだろう。そんなことを考えながら茶を啜った、その時。
ガラッ
「おぅリクオ。友達かい」
「ッッ!!!!」
思わずリクオはひっくり返った。目的の妖怪そのものが来ちゃった―――!!!!と焦るリクオもなんのその。ぬらりひょんは、どうぞみなさん、これからも孫のことよろしゅうたのんます、なんてペカーと笑いながら飴を配っている。
「あ、ハイ…」
「任してくださいおじいさん!!しかしこの飴マズイっすねぇ!」
(ホントに気づかれてない……目の前にいるのは君らの目的ですよ――…)
ぬらりひょん。それは勝手に人の家に入ってもぬらりくらりと気付かれない、そういう妖怪―――
わかってはいたけれども、あまりの堂々たる様に、これが妖怪の総大将なのかとリクオは一人舌を巻いていた。