天狐の桜4
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清々しい初夏の空気に包まれた朝。雲一つない青空に、陽の光を受けて朝露を煌めかせる草花。吹き抜ける爽やかな風。
リオウは広間から聞こえてくる騒がしい声に目を覚ました。昨夜は治癒の力やら神力やらを使いすぎてしまい、帰ってからは泥のように眠っていたが、どうやら今日は体調が良いらしい。
「リオウ様、おはようございます」
「おはよう、黒羽丸。今日は大分調子がいい」
黒羽丸はさっと着流しを差し出した。短く礼を言って受け取り、着替えれば、今度はお髪をと毛娼妓が入ってくる。大人しく髪をすかれながら、リオウはついと庭の方に目をやった。
「黒羽丸。障子をあけてくれ」
「はっ」
障子を開けると、小妖怪たちがわらわらと部屋に駆け込んでくる。おはようございます、遊ぼー、今日は元気?などなど矢継ぎ早に、それこそ我先にと声が飛んでくる。
「おはよう。広間が騒がしいが、これはなんの騒ぎだ?」
「リクオ様が3代目を継いでくださると宣言なされたので、そのお祝いです!!」
「リオウ様もいこー!!」
「一緒にご飯食べよー!!」
「リクオの?」
リオウはふむ、と独りごちた。リオウは確かに覚醒した。だがそれはまだ完全なものとは言い難く、以前は変身していたときの記憶すらなかった。
今回はどうなのかわからないが、本人に自覚がないままに外側から抑圧しては、余計に反発されてしまうのではないだろうか。ただでさえ、今は難しい年頃なのだから。
どうしたものかと考え込んでいると、ドタドタと縁側を走る音がして、リクオが飛び込んできた。リオウは驚いたようすもなく己より小柄な弟を抱き止める。
「兄さん、おはよう」
「あぁ、おはよう。」
もう行くのか、と小首を傾げれば、あいつら変なんだよ!?と堰を切ったように話し始めた。
「身に覚えなんかないのに朝から宴なんて!!」
「……そうか。わかった。皆には私からとりなしておく。お前は遅れる前に早く学校に行け」
「んん~~…そうなんだけどさ…離れたくないなぁ」
「遅刻するぞ」
学校にいきたくないのなら何故人としてとかなんとか、そんなものに拘るのか。リオウ様が困ってらっしゃいますよ!と毛娼妓に引き剥がされ、残念そうな顔をしながらも渋々出ていくリクオを見ながら、リオウは騒がしい朝にふっと淡い笑みを浮かべた。