天狐の桜3
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「鴆!!」
リオウは朧車を飛び降りると、抜き身の刀でようやっと自身を支えている鴆へと駆け寄る。今にも崩折れそうな体を庇うように抱き寄せ、その額に額を合わせる。すると、たちまち鴆の体を淡い光が包み込み、火傷や打撲といった傷を癒していく。
「リオウ…お前、なんでここに…?」
「喋るな…!大人しくしていろ」
「鴆君!!しっかりして!!」
「ごふっ…り、リクオ…?どーしてお前まで…」
「んだぁ!?テメェ!!」
「!?こいつ…あの奴良組のバカ息子!?」
「副総大将までいるぜ!!」
リオウは鴆とリクオを守るように前に立った。だが、気丈に立ってはいても体はガタガタ。先程治癒の力を使った為に体力もそれなりに消費している。
「くく、丁度いい。リオウ様は死にぞこないのために力を消費なされて立っているのもやっとであろう。手込めにするのは造作もない…。さすればかのお方はオレの嫁よ。それに若とは名ばかりのうつけ者の反対派は幹部にも多いと聞く…ぬらりひょんの孫」
殺してオレのハクがつくってもんだ!!!!
「っ、この戯けが…っ」
「っ、リオウ!無理をするな…!今のお前は…っ」
鴆が必死に手を伸ばす。下手に動き回りすぎると体調が悪化するかもしれない。リオウならこの場を乗りきることも造作ないだろうが、そんなことよりまずは体の心配だ。
「許せねぇ」
リクオはぼそりと呟いた。その瞳にやどるのは紛れもなく妖気。リオウは怒りに目を細め、ついと手を伸ばした。その指先に浄化の炎が宿るより早く、リクオはリオウを庇うように前に出る。
「下がってろ」
「っ!!」
言うが早いかリクオは祢々切丸を抜いた。本性を露にして飛びかかる蛇太夫の前に躍り出る。噛みつかんとする大蛇の口を刀で受けとめ、そのまま首の根本までまで真っ二つに切り裂いていく。
ズシャァァアッッと肉が裂け、血が噴き出す音がする。ピシャリと頬に返り血が飛ぶが、全く意に介さぬ様子でリクオは冷たく崩れ落ちる蛇太夫の亡骸を睨み付けた。
「う、うぉ…」
「なんじゃあこいつぁ―――!?」
「ひ、退け―――!!」
「ひけ――――!!」
「―――戯者。貴様らが企てた謀反、自らの手で落とし前をつけてもらうぞ」
血相を変えて逃げ出した妖怪たちは皆美しい浄化の炎に包まれ、一瞬にして消え失せた。と同時にフラりと傾いだ華奢な体躯を、リクオは瞬時に抱き止める。
「…遅いぞ、戯け」
「悪かった」
リクオはリオウの瞼に軽く唇を寄せる。鴆は呆然と突然現れた青年を…リクオを見つめた。誰だ?どっからきたんだ?いや、それよりリクオは何処へ?
「リクオ様、また…覚醒されたのですか…」
「リクオ?リクオだって!?」
「よぅ鴆。この姿で会うのは初めてだな」
にこりともせず、リクオは鴆を一瞥する。これが、あの軟弱なリクオだというのか。リクオはリオウを朧車に下ろすと、鴆のもとへと歩いていく。