天狐の桜11
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「…結局、昨晩何も出会えなかったなぁ…」
せっかく張り込んでたのに…ととぼとぼ歩く清継に、此度は縁がなかっただけだろうとリオウは優しく頭を撫でる。
「お兄様ぁ~~♡♡////」
「おやおや、ほら。ちゃんと前を向かねば危ないぞ」
清継は照れながらリオウの腕に抱きつく。リオウ自身も、前を見ろと促しながらも、振りほどこうとはしない。………間違いない。兄さんから僕への当て付けだ。
じいっとジト目で睨み付けていると、不意に振り返った清継がそういえば…とリクオの顔をまじまじと見た。
「そういえば奴良君、君その顔どうしたんだい?」
「あ、はは…ちょっとぶつけちゃって…」
リクオの頬には、真っ赤な手形がついている。ちら、と兄に視線を向ければ、ふいっとそっぽを向いてしまった。…いや、流石に調子に乗りすぎた自分が悪いんだけど。
昨夜、本能のままにキスをしたとき…
『痛ェッッ!?』
『い、きなり何をするんだこの色魔…っ///』
甘いムードが一気に霧散して、スパーンッと小気味いい音が静かな夜空に響く。いや、前口移ししたときにはまったく照れなかったのに此方から不意打ちはダメなのか、とか、初めてみたその表情も可愛いなとかいろいろ言いたいことはあったが、とりあえずまるっと置いておく。
今回はキスしたいと思うと同時に体が動いていたから、リオウも咄嗟に逃げたり口付けられると予測することができなかったんだろう。
(いやぁあれは無意識に可愛いこと言う兄さんも悪いと思うんだけどな)
無自覚で、しかも"そういう"事に関して知識が無いにも関わらず、男を誘うような言動が多いのってそっちの方が問題だと思う。むしろ今まで我慢してた僕を誉めて欲しい。
あの後、リオウは怒ってふわりと姿を消してしまった。お陰で此方は謝りそびれた。…いやいやいや、そもそもなんで僕が謝らないといけないんだ?
(愛しいと思うお嫁さんにキスするのって別に悪くないよね?)
なんとも納得がいかない。珍しく真っ赤になって涙目で怒る兄も可愛かったからいいけれど。
悶々と考え込むリクオなど露知らず、清継たちは楽しそうに談笑している。
「いやぁ~~でも見たかったなぁ、邪魅…」
「でも品子さん、笑ってお礼言ってたし」
「なんか元気になってたよね!」
肝心の邪魅については今回なにもできなかったけれど、別れ際、本当に晴れやかな顔でもういいの、と言っていたのを思いだし、巻と鳥居は小さく笑った。
「お土産のカニもこんなに貰いましたしね!」
「ウワッきも!!!」
「島くん脚!!!脚が出てるよーー!!!」
島はふらつきながらカニの入った箱を運んでいる。隙間から飛び出した脚がカサカサと蠢いているのが、なんというかとても気持ち悪い。
「まぁ僕ら妖怪ハンターが来れば邪魅も退散してしまうって事だね!」
「清継くん結局玄関で寝てただけじゃん」
「いや~~急になんだか眠くなってね…」
カナはわいわいと盛り上がる清継たちに、いいえ、と一人頭を振った。皆気づいてないだけだ。だって寒かったし。そう、彼処にはいたのよ、絶対。
「あの屋敷には妖怪 雪わらしが!!!」
「氷麗…何したの?まさか…」
「ホホホ…いえ、なーんにも?」
(絶対凍らせたな…)
大方、兄か自分が姿を見られそうになったのを察知して眠らせてくれたんだろう。先程兄が苦笑しながら氷麗の頭を撫でていたし、十中八九見つかったのは兄だろうが。
「よぉ~~し!じゃあ早速帰って僕の屋敷でカニ鍋パーティーだ!夏だからこそ!そして次の妖怪ハンター計画を話し合うぞ!」
「え!?もう次の!?」
「当たり前だ!ノンストップで妖怪ハントだーーー!」
清継はリオウの手を引き、ほらほらと他の皆を急き立てる。足取りも軽く、一行は丘を上っていった。