このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

鶴さに

「さぶい…」
背中に小さな熱を感じた。どうやら主が抱きついてきたらしい。
「だからってこう、年頃の娘が男に抱きつくもんじゃないぜ?」
主はたしか南の方の出身だったか。陸奥国にあるこの本丸の寒さは耐えかねたんだろう。
「驚きだじぇ…とか言わないの?突然抱きついたんだよ?」
「主が後ろからトコトコついてきたのは気配で気づいたしなぁ」
「なぁんだ。つまらない」
顔は見えないがおそらく頬を膨らまして、すね始めたところか。その可愛い顔はぜひ拝みたい。
「主につまらないと思わせるとは俺もヤキが回ったもんだ。お詫びに鶴さんが前から抱きしめてあげよう」
「やだ」
「おぉと、こいつは驚いた」
まさか断られると思っていなかったので、少しショックだ。年甲斐もなく泣くぞきみ。
「鶴さんのフードの下、温かいから離れたくない」
あぁ、なるほど。自分ではよくわからんが、たしかにフードの下は温かいらしい。
鶯丸もそう言って手を突っ込んでくるもんな。
「なら一つ提案がある」
「提案?ってうわ!?」
主の手を振りほどいて、長谷部も驚きの機動で回転し、主と向き合ってみる。
そうして主を腕の中に閉じ込める。
「鶴さん?」
「ははっ、きみ鼻まで真っ赤じゃないか」
頬に手を添え、主の可愛い顔を見る。寒さなのか、照れなのか、真っ赤な顔が愛おしい。
「そら、手をフードに突っ込むといい」
おずおずと手をフードの下に潜り込ませる主を大切に抱きしめる。
「こうすればきみはフードの下を堪能できる。俺はきみを抱きしめられる。一石二鳥じゃないか」
「むむ、驚きだじぇ」
「うんうん、そいつは何よりだな」

風邪なんてひかないよう大事に温めよう。この愛しいぬくもりを。

1/4ページ
スキ