このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

石さに

やってしまった。
今朝、石切丸を二十四時間遠征に出してしまった。つまり明日まで帰ってこない。現在の時刻は夜の十時。あとニ時間で七夕が終わってしまうのだ。
 笹の葉の下で一緒に天の川を見たかったのに…。
七夕という行事をすっかり忘れていたための事故である(ついでに言うと夏の連隊戦の頑張り過ぎである)。
「あーあ、さみしいなぁ…」
 彦星と離れた織姫もこんな気持ちだったのかな。
なんて自分らしくもない。こんな気持ちになるなんて初めてのことだった。これも石切丸に恋をしたせいである。
「早く帰ってこないかな…」

その時だった。
ふわっと優しい香りに包まれた。
「えっ?」
「今帰ったよ。留守の間もちゃんと過ごしていたかな」
「いしきりまる?」
「うん?」
遠征が終わるのは明日のはず。
なのになぜ、私は愛しい人に抱きしめられているのだろう。
「あぁ、主と一緒に天の川が見たくてね。早めに帰ってきてしまった」
ほら、鳩が余っていただろう?とニコニコしているが、主には聞こえていなかった。
「うぅ…極になってからかっこよくなりすぎ!」
「…そうかな?」
「そうだよ!大好き!」
「ああ、嬉しいな。とても嬉しい」
ぎゃんぎゃん泣いている主をもう一度強く抱きしめる。夏だけれども、愛しい人のぬくもりは石切丸には格別だった。
ほら、と石切丸が指をさす。
そこには揺れる短冊と、天の川。
「主に会いたかったのが一番なのだけれども、お願いごともしたくて帰ってきたんだ」
「ん?」




「主を幸せにできますように」

1/1ページ
    スキ