甘くとろける夢
君の名前は?
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「あー!やっば、やっちゃった〜悠くんにまた怒られちゃうよ〜」
大きな独り言が駅のロータリーに響き渡る
……あ、
ピンクの髪がふわふわと揺れている
今日は雨だからいつもよりボリュームが出てより一層子犬感が増していた
彼は雨だと言うのに傘もささず、何やらバッグの中をガサゴソとさばくっている
濡れたままだと風邪をひくと何度言ったら分かるのか。それとも濡れているのが好きなのか…
まぁどっちでもいいか、彼の頭上に傘を差し出す
「あ!え、マネージャーちゃん?」
「何やってるんですか?」
「マネージャーちゃんこそなんで!葵くんの現場付き添いじゃなかったっけ?いやぁ〜でもこれで助かったよ〜またカギ悠くんの鞄に入れちゃってたみたいでさ〜なんでだろうね〜?
傘ありがと!持つよ〜」
ナチュラルに私も傘の下に入れようとする彼と少し距離を保ちながら、葵さんの現場はもう終わったことと今朝は傘を持っていたのでは?と尋ねた
「え?あーいやスタジオ出た時は晴れてたからさ〜」
そうして色々な言い訳を滝のように並べる彼を横目に私はカバンから折りたたみ傘を取り出した
「え?ねね、マネージャーちゃんこのまま一緒に相合傘して帰ろうよ!それでよくない?ね、折りたたみ乾かすのめんどくさいよ?小さいしさ、濡れちゃうよ?ほらほら、さささ」
彼は流れるように私の手から折りたたみ傘を取り上げついでに鞄までひょいと抜き取る
「え、いやちょ」
「はーい!それじゃあしゅっぱ〜つ!」
ぐっと肩を抱き寄せ
有無を言わさず彼は歩き出した
「いやちょっと!自分の立場分かってるんですか!?離れてください!?」
「え〜じゃあ大人しく傘の下に全身入れてくださーい」
クスクスと子供のように笑う彼はメンバーにいたずらを仕掛ける時のいつものいたずらっ子の顔をしている
「いま周り誰もいないしさ〜誰も見てないって!ね〜!」
こうして周りを自分のペースに丸め込むことに長けている彼にもう勝つ方法はない
はぁ…深いため息をつきながら彼に歩幅を合わせて歩く、いや合わせられているのかもしれない
「あ〜ため息なんてついたらお肌に悪いよぉ〜?せっかくかわいいお顔が台無し!あ、それとも、僕と相合傘出来てため息出るほど嬉しいとか!?」
彼はこちらを覗き込みながら楽しそうに話している
「でもさ〜マネージャーちゃんも変わったよねぇ〜前は「アイドルとマネージャーが接近するなんて絶対駄目です!」って半径1メートル以内にも入ってくれなかったのに」
それはもうことごとく破られたので諦めているだけですが?
心の中でそう応えつつ彼の話に耳を傾ける
「悠くんとマネージャーちゃんなんて資料貰うだけでお互い耳まで真っ赤っかにしてさー…………」
「あ!ねね、覚えてる?デビュー決まってマネージャーちゃんと僕らがはじめて会った日!悠くんが円陣組もうって言い出して、葵くんすごい嫌そうだったけどさ、「俺は武道館に行く。絶対だ。お前ら全員その覚悟はあるか!」って、ふははっ、熱い男だよねぇほんと」
「でも―――」
「嬉しかったんだよね。本気で夢を語り合える仲間が出来たみたいで……僕らなら本気で武道館目指せるのかもって…思えたんだよね。僕、友達は多いほうだと思うんだけど本音で言い合える友達っていうかさ、仲間……って感じははじめてで…」
彼は急に考え込むように口をつぐむ
雨音が一層大きく聞こえた
「あーあー……仕事の付き合いだけで割り切ろうと思ってたのになぁ….」
くるりと彼は私の進行方向をふさいで
目線を合わせてくる
「僕はさ、本当に大好きなの。みんなのことが。もう壊したくないんだよね、大事に思っちゃったんだもん」
いきなりどうしたのかときょとんとしていると
「ふふ、ほらマネージャーちゃん気付いてないかもだけど…最近姿勢悪いし声のトーン下がってる。あと………クマ出来てるよ」
最後に小声でそう耳元で言われ
ぶわっと顔が熱くなるのを感じた
慌てて顔を隠そうとする私に
冗談だって!最後のはうそ!可愛いなぁもうと彼は笑いながら再び歩き出した
ますます顔が熱くなる私を横目に彼は独り言のように話続ける
「だから嫌なことあったら何でも言うんだよ
?汚い大人とか沢山いるんだからさ、僕たちもわかってやってるし。マネージャーちゃんにどこまでもついてくからさ、みんな一緒に武道館に行こ。ね、
絶対ね、約束だからね!」
彼は何度も私の顔を覗き込みうんうんと頷かせた
顔に出てしまっていたのだろうか
ここ最近ずっと彼らのデビューをきっかけにひっきりなしに入る仕事の依頼に少し疲れを感じていたことが
愛柚希は悠があついと言うが
彼も相当グループ愛が重いと思う
少し強引だったけれども
この相合傘も彼なりの優しさだったのかもしれない
「帰ったらさ、なんか甘い物でも食べる?確かこの前のロケでもらったお菓子がまだ大量に悠くんの部屋にあった気が…」
情報通の彼のことだ
もしかしたら最近同じようにデビューした同期のマネージャーが辞めたことを気にしているのかもしれない
「勝手に食べたらまた怒られますよ」
それにカギを開けたら私はすぐに帰ります、クスクスと彼を真似て笑うと彼も嬉しそうに笑った
貴方たちが武道館に行くところを見届けるまで辞めませんから。心配しないでください
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