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また君が死んだ

今年に入ってもう何度目だろうか。君の亡骸を埋めるのは。
また、僕は死ねなかった。
もう未練なんてこの世界にはないのに。
君は、また生き返る。
全てを忘れて、全てを無かったことにして。
僕は、生きているのに。
僕のことすら忘れて、君は生き返る。
いつになったらこの輪から抜けられるのかな。
抜けるときは、君と一緒がいいな。

四百二十一番目のトキは、勘が良かった。
今までのトキは気付かなかったことに気づいて、でも自分にはどうしていいかわからなくて、遺書を書いて、首を吊った。
いつもおやすみのキスで死んでいたのに、自分から死んだトキは初めてだった。
そして、おやすみのキスをするのを忘れた、唯一のトキだった。
だから、生きていたんだよね?チェス盤の遺書に気づいてもらえるように、働きかけてたんだね、トキたちに。
それに気づいたのは、君だったんだね。
千番目のトキ。料理上手だし、掃除も上手だし、話も楽しかったし、甘やかしてくれたし、大好きだったよ。

スコップで穴を掘りながら、水鳥は泣いていた。何が悲しいのか、わからなかった。
トキが死ぬのはいつものことなのに、何が悲しいんだろう。
また新しいトキが来るのに。気にすることなんてないのに。
「さよなら。トキ」
水鳥は跪いて、千番目のトキの亡骸にキスをした。

もう、起こしにこなくても、いいよ。
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