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また君が死んだ

「使えるかなあ」
「しっかり洗えば大丈夫じゃない」
水鳥は少し悩んで、タオルを洗うことにした。洗濯機なんて便利なものは、トキがくれなかったから持っていない。十五番目のトキがくれた洗濯板で洗うことにした。
「古風だね」
バスタブを洗いながらその様子を見ていたトキは、その手つきの良さに感心していた。
「十五番目のトキは、古いものが好きだった。和風の家が好きだったから、二人でいろいろそういう小物を買いに行ったんだ」
「そのわりに、この家は和風じゃないよね?」
「二十番目のトキが全部元に戻したんだ。でも洗濯機買うお金はなかったから、これはこのまま」
水鳥が一生懸命洗ったおかげか、タオルは綺麗になった。水鳥はベランダにある物干しにタオルを干した。ついでにその辺に脱ぎ捨てられたトキのスーツの上着をハンガーにかけておいた。
水鳥が洗濯をしている間に、トキがバスルームを磨き上げていた。見違えるほど綺麗になっていた。今度のトキは綺麗好きなのかもしれない。
バスタブに湯を張り、いい匂いのする入浴剤を入れた。
「じゃあ、入ろうか」
「そうだね」
二人は着ていた服を脱ぎ去り、その辺にあった籠に入れた。水鳥はそれが五十番目のトキが置いていったものだと、後から思い出した。
バスタブは二人で入ると少し狭い。それでも文句は言わなかった。
「水鳥の髪は色素が薄いね」
トキが湿った水鳥の髪を触る。水鳥もトキの髪に触れる。
「今度のトキは剛毛だね」
トキは触り心地のいい水鳥の髪を弄るのを止めなかったが、水鳥は気にしなかった。トキになら、内蔵を抉り取られても問題ない。そもそも抉り取られても死ぬことはないが。
水鳥は揺れる水面に映る自分とトキの顔を眺めていた。トキが水鳥の髪を弄るたび、二人の顔が揺らいだ。
「前の人はどうだった?」
「坊主だったよ。つるんつるん」
それから二人はお互いに身体を洗って、バスルームから出た。七十八番目のトキがくれたバスタオルでお互いの身体を拭いた。水鳥は病気になっても死なないから、と言って拭くのを嫌がったが、トキが捕まえて全身隈なく拭いた。
それからお腹が空いたので、二人は外に食べに行くことにした。食材を買っていなかったので家で作ることができないから。外食の帰りに食材を買うことにした。
「何食べる?」
「トキは?」
「何でも」
「食べなくても平気なんだけど」
「それはだめ」
二人はとりあえず、ファミレスに入ることにした。ここならいろいろなジャンルの料理がある。
「何にする?」
「うーん……。あんまり食欲ないんだよね」
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