ほぼほぼウェポン
「魔法タイプは斬れば一旦魔法が解けます」
「一旦?」
その言葉の意味はすぐにわかった。少年の胸の傷はみるみるうちに塞がり、元通りになったのである。確かにウェポンも「反陽子爆弾になって爆発しても元に戻る」というようなことは言っていたので、それと似たような話なのだろう。
「貴様らがどれだけ抵抗しようとも、こちらにはこいつがいる」
ドメイルは私たちに向けて、少年に攻撃させた。ソフトボール大の火球が、次々と私たちに降り注ぐ。私たちはそれを避け続けた。このままではいつか黒焦げだ。私はウェポンに指示を出した。
「ウェポン。とにかく耐えてくれ。私にあいつの攻撃を当てさせるな」
「どうやれば?」
「木の棍棒で打ち返せ。初期装備は絶対燃えない」
「わかりました!」
ウェポンは右手を木の棍棒に変え、火球を打ち返した。凄まじい数だったが、ウェポンはそれを全て打ち返している。私はこの間に、解決策を見出さなければならない。ここで死んだら台無しだ。
しかし、焦れば焦るほど何も浮かばない。ウェポンは疲れていないようだが、向こうの火球が少しずつ大きくなってきている。これでは打ち返せなくなるのも時間の問題だ。
ウェポンの武器を見て、ふと気づいた。そういえば、ウェポンへの指示はかなり曖昧でもいい。もっと言うなら、願望レベルでいい。しかも物理法則を無視したものでも構わない。大切なのは、私がイメージを持つことだ。それならば、ヤケクソだ。適当に命令してやれ。
私は集中して、ウェポンに叫んだ。
「ウェポン、最強の翼竜になれ!」
すると、みるみるうちにウェポンの身体が膨れ上がった。あまりに異様な姿に、向こうの手が止まった。可愛らしい少女だったウェポンは、みるみるうちに黒い翼竜へと変化を遂げた。図鑑でも見たことのないような黒さだった。目だけ青いのが、かろうじてウェポンらしい。完全に変化が終わると、ウェポンは咆哮した。地面が揺さぶられるほどの衝撃だ。我ながらスゴイ。
私は急いでその背中に飛び乗り、「飛べ!」とウェポンに指示を出した。ウェポンはそのまま地を蹴り、空へと飛び上がった。重さも相当らしく、飛び立つときに地響きも聞こえた。大きな翼を広げて風に乗る。
山を一つ越えるのもあっという間だった。風圧がかかりそうなものだが、竜の身体の周りには特殊な膜のようなものがあるようで、私は案外快適に乗っていられた。平地に出たところでウェポンを地上に降ろさせた。私はおっかなびっくり背から降りた。飛び乗ったときは無我夢中で気付かなかったが、意外と高かった。
私が降りると、ウェポンも元の姿に戻る。
「私を竜に変える人なんて初めてですよ。というか、竜って武器なのかしら」
「火を噴いたりするんだし、めちゃくちゃ大雑把に見て、大体武器ってことにしておいてもいいんじゃないか?」
「なんだか自分がどんどん適当になっていく気がします」
私はウェポンにこの辺りの地図を出させた。例の額に。細かいその地図をなんとか読み取って、近くに村があるのを発見する。
「とりあえず、村に行こう。仲間に連絡を取りたい」
「仲間って、クーデター仲間ですか?」
「そうだ」
「仲間がいたなら、なんで一人でクーデターを起こしたんです?」
私は言い淀んだ。ウェポンはじーっとこちらをずっと見ている。
「それはー、その。まあ、いいじゃないか」
酔った勢いで、クーデターの日にちを月ごと間違えたなんて言えない。絶対に言えない。クーデターを起こし始めてから、なんかおかしいなーって思ったんだが、なんか盛り上がっちゃって、国王のところまで行ってしまったとか、ちょっと恥ずかしすぎる。しかも私がリーダーなのに。
「一旦?」
その言葉の意味はすぐにわかった。少年の胸の傷はみるみるうちに塞がり、元通りになったのである。確かにウェポンも「反陽子爆弾になって爆発しても元に戻る」というようなことは言っていたので、それと似たような話なのだろう。
「貴様らがどれだけ抵抗しようとも、こちらにはこいつがいる」
ドメイルは私たちに向けて、少年に攻撃させた。ソフトボール大の火球が、次々と私たちに降り注ぐ。私たちはそれを避け続けた。このままではいつか黒焦げだ。私はウェポンに指示を出した。
「ウェポン。とにかく耐えてくれ。私にあいつの攻撃を当てさせるな」
「どうやれば?」
「木の棍棒で打ち返せ。初期装備は絶対燃えない」
「わかりました!」
ウェポンは右手を木の棍棒に変え、火球を打ち返した。凄まじい数だったが、ウェポンはそれを全て打ち返している。私はこの間に、解決策を見出さなければならない。ここで死んだら台無しだ。
しかし、焦れば焦るほど何も浮かばない。ウェポンは疲れていないようだが、向こうの火球が少しずつ大きくなってきている。これでは打ち返せなくなるのも時間の問題だ。
ウェポンの武器を見て、ふと気づいた。そういえば、ウェポンへの指示はかなり曖昧でもいい。もっと言うなら、願望レベルでいい。しかも物理法則を無視したものでも構わない。大切なのは、私がイメージを持つことだ。それならば、ヤケクソだ。適当に命令してやれ。
私は集中して、ウェポンに叫んだ。
「ウェポン、最強の翼竜になれ!」
すると、みるみるうちにウェポンの身体が膨れ上がった。あまりに異様な姿に、向こうの手が止まった。可愛らしい少女だったウェポンは、みるみるうちに黒い翼竜へと変化を遂げた。図鑑でも見たことのないような黒さだった。目だけ青いのが、かろうじてウェポンらしい。完全に変化が終わると、ウェポンは咆哮した。地面が揺さぶられるほどの衝撃だ。我ながらスゴイ。
私は急いでその背中に飛び乗り、「飛べ!」とウェポンに指示を出した。ウェポンはそのまま地を蹴り、空へと飛び上がった。重さも相当らしく、飛び立つときに地響きも聞こえた。大きな翼を広げて風に乗る。
山を一つ越えるのもあっという間だった。風圧がかかりそうなものだが、竜の身体の周りには特殊な膜のようなものがあるようで、私は案外快適に乗っていられた。平地に出たところでウェポンを地上に降ろさせた。私はおっかなびっくり背から降りた。飛び乗ったときは無我夢中で気付かなかったが、意外と高かった。
私が降りると、ウェポンも元の姿に戻る。
「私を竜に変える人なんて初めてですよ。というか、竜って武器なのかしら」
「火を噴いたりするんだし、めちゃくちゃ大雑把に見て、大体武器ってことにしておいてもいいんじゃないか?」
「なんだか自分がどんどん適当になっていく気がします」
私はウェポンにこの辺りの地図を出させた。例の額に。細かいその地図をなんとか読み取って、近くに村があるのを発見する。
「とりあえず、村に行こう。仲間に連絡を取りたい」
「仲間って、クーデター仲間ですか?」
「そうだ」
「仲間がいたなら、なんで一人でクーデターを起こしたんです?」
私は言い淀んだ。ウェポンはじーっとこちらをずっと見ている。
「それはー、その。まあ、いいじゃないか」
酔った勢いで、クーデターの日にちを月ごと間違えたなんて言えない。絶対に言えない。クーデターを起こし始めてから、なんかおかしいなーって思ったんだが、なんか盛り上がっちゃって、国王のところまで行ってしまったとか、ちょっと恥ずかしすぎる。しかも私がリーダーなのに。