罰と決心


必死な思いでフォークの先が向かった口元は笑を含んだまま開かれることはなかった。

「雲雀さん?」
俺が食べたいくらいなのに…なんて事は言えないが少しムッとした表情をした綱吉に対して、雲雀は意地悪そうな笑顔を浮かべ言い放つ

「『あーん』って言ってくれなきゃヤダ。」

「そ、そんな子供みたいなこと言わないで下さい
!!;」そもそも、男に『あーん』ってされて嬉しいんですか⁉︎
「言わないと食べないよ綱吉。」

雲雀は完全に楽しんでいるようでニヤニヤと笑みを浮かべている。

雲雀さんの口にこのままケーキを突っ込んでやりたい!と思うのはきっと気のせいだと言い聞かせながらも、ここまできて出来ないのもなんだか悔しい。
「~っ…ぁ、あーん。」
絞り出した声はやや震え、消えそうな程小さかったが雲雀は満足そうな顔でケーキを食べた。

「うん、甘い。綱吉も食べる?」

「ぇえ!い、いいんですか⁉︎」
思いもよらない発言に目を輝かせる綱吉の手から皿とフォークを取ると
「綱吉、ぁーん」
「あーん」パクッ

……ハッ!!
ケーキと言う名の餌に釣られて、あんなに羞恥していた言葉を自ら言ってしまった!!;

雲雀にケーキを食べさせた達成感と彼からの思わぬ提案に緊張感が薄れた綱吉は、素直に口を開けた自分の行動に衝撃を受けたがケーキが美味しすぎるので自分を許すことにした。

「雲雀さん…もっと下さい」
美味しいケーキにうっとりしながら、空腹なのもあってちゃっかり強請ってしまった。
「…綱吉えろい。煽ってるの?」

「ちがっ!あ、煽ってません!!;ついケーキが欲しくてですね……て…ヒッ」
あわあわと手を振り強く否定した綱吉だったが、何やらただならぬ気配を感じると思わずピタリと手が止まる。雲雀の顔が非常に恐ろしい。
笑顔だ、笑顔だがもの凄く黒いオーラが彼を包んでいるように思えた。

「あの…ひ、雲雀さ」
「そう。そんなに欲しいなら…」
なんと雲雀は綱吉が欲しいとねだるケーキを
自分の口に入れてしまった。
ガッカリして俯いていたのも束の間痛みが走る
「いっ…ンン!?」

綱吉の後ろ髪は鷲掴みされ強制的に上を向かされたのと同時に口が重なっていたが、あまりの勢いに咬みつかれているような感覚になった。

突然のことで大きく見開いた綱吉の瞳には、雲雀のギラつく瞳が写り込みそして塞がれた口にはどちらとも分からない甘い吐息とクリームが流れ込む。飲み込めず混ざったそれは溢れ顎に伝った。

だ、だめだ。頭がくらくらする!

獲物を貪る獣のような勢いにこのままでは持っていかれそうな朦朧とする意識の中、なんとか力を込めて握った拳を弱々しく雲雀の鎖骨あたりに打ちつけた。

「っはぁ!!ぁ…はぁ」
唇が離れ、新鮮な酸素が脳に回る

「綱吉、ケーキ美味しかった?」

「そ…れ、どころじゃ…」
俺にはそんな味わってる余裕すら無かったですよ⁉︎超絶な危機に心臓がバクバクと早く音を鳴らしている。

「じゃあさ、僕が欲しくなったでしょ?」

ニヒルな笑みで問われ、先ほどのやりとりが酸素の回ったクリアな頭で回想された。

「……へ⁉︎////」
今度は違う意味で心臓が跳ね上がる。

雲雀さんの質問が幻聴だと思いたい!
俺にどう応えろと!?
だ、誰か助けてー!!;

バンッ!!!!
バリーン!!!!

本当に誰か来たー!?
入口の扉とあろうことか応接室の窓ガラスが割れ、聞き慣れた声が響く

「「綱吉くーん(♪)」」

「え゛っ!!」
助っ人として一番来てはいけない2人が来てしまった。両者の顔を交互に見やると確信を持って
問題を増やすだけだよ絶対!と突っ込まざるを得ない。
しかもこの面子はかなり良くない…。

「骸…白蘭まで」

「綱吉くんに会いたくて来ちゃいました⭐︎」
「僕が先に来たんだよ!だから綱吉クンは僕と遊ぶの♪」

どうやら2人はここに来る途中で鉢合わせしたらしく、競争して来たようだ。
そしてお構いなくヅカヅカと室内へ侵入してきた。

しかも俺まだ午後の授業あるからね!?
骸!!お前も真面目に学校行けよな…。

そんな2人に呆れていると、目の前の風紀委員長様は俺から離れ自慢のトンファーを手にし、こちらへ近づいてきた侵入者へ突きつけた。

「君達、誰の許可を得て入ってるの?部外者は立ち入り禁止だよ。それと…そこの白いの!窓ガラス弁償ね。南国果実は今日こそ咬み殺す。」

睨み合う3人と重い空気の中、戸惑う俺を差し置いてまたもやこの状況に合わない声が入り口から響いた。

「ツナいるかー?あれ、骸に白蘭じゃん」

「10代目ー!!遅いんで探しましたぁ!こんな所にいたんスか、無事で何よりっス!!」

うわー!!さらに問題が来た!
火に油とはこのこと。地獄絵図がすでに俺には見える。

「丁度良い、まとめて咬み殺してあげる」

「んだとー!?てめぇだけはブッ飛ばす」

「俺はそんなに簡単にいかないと思うぜ」

「クフフ、誰が綱吉くんの一番かを解らせてあげましょう」

「僕が最強だから一番に決まってるじゃない♪綱吉クンは僕の嫁」

「「「「「……殺す」」」」」

その乱闘で午後の授業は中止になった。
リボーンが正一くんと黒曜に連絡をしてくれたのか、白蘭は説教を受けながら正一くんに引っ張られて行き骸は千種達が連れて帰ってくれた。

雲雀さんは破壊された部分を修復するように草壁さんに命令し、どこかへ行ってしまった。
俺はリボーンに元凶はお前だ。と蹴り飛ばし仕置きされ獄寺くんと山本と帰りながら俺は決心した。
授業は絶対に寝ない!と。

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